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【番外編】疑われた慕情 1
しおりを挟む「ねえ、海神。君は本当に真面目だよね。」
就寝前、いつものように、文机に向かい手記を綴っていた海神は、ボクの言葉に手を止めそっと筆を置いた。
「私は、蒼が思うほど真面目ではない。・・・なぜ、そう思う。」
「だって、君ときたら毎日欠かさずに記録を綴っているじゃないか。しかも、二冊もだ。ボクにはとてもじゃないけど、真似できない。」
「・・・やはりお前は少し、思い違いをしている。」
海神はほんのわずかに表情を揺らし、ボクに身体を向けながらなぜかその内の一冊をそっと下に隠してしまった。
ボクは「おや」と思い、海神の白くしなやかな指を握りしめた。
「ねぇ、見てもいい?」
「・・・・・・。」
「海神?」
「・・・・・・うん。」
なかなかの長い沈黙の後、海神はようやく首を縦にした。
上に置かれた方の手記を手に取ろうとした海神の手をそっとおさえ、ボクは隠された手記をすかさず引っ張り出す。
「蒼っ」
ボクを止める焦った海神の声を背中に、それを開いたボクは固まった。
頁を繰るごとに、顔に熱が上がってくる。
「海神・・・君ってやつは、どうしてこんなに・・・」
肩を落とし、目を伏せ青菜が霜でしおれたようにしょんぼりとしている海神に、ボクはたまらなく嬉しくなって、勢いよく抱きついた。
「・・・死ぬほど可愛いんだっ!」
手記に書かれていたのは、ただの記録ではなかった。
そこに綴られていたのは、全てボクへの彼の想いや誉め言葉のようなものばかりで・・・・・・。
「・・・嫌わないのか。」
「嫌う?なぜ?君はボクをこんなに嬉しがらせておいて、なぜそんなことを思うんだ。」
海神の唇に何度も何度も強く口づけ、ボクは満面の笑みで、驚きに見開かれた彼の瞳を見つめた。
「君は愛し方まで真面目だな。でも・・・ここに、大切なものが足りてないよ。」
筆をとったボクは、ボクの好物が書き連ねられている端正な文字の一番初めに、彼の名を丁寧に綴った。
「ボクのなによりの好物が書かれていなかった。これじゃ記録にならない。」
その言葉に、困った様子で小さく肩をすくめた海神の、すらりと通った鼻先を柔らかくつまんで軽く揺らすと、彼は幸せそうに眼を細めた。
その表情にたまらない愛おしさがこみあげてきて・・・・早速我慢のきかなくなった、堪え性のないボクは、海神を抱くため、手にしていた手記を閉じようとした。
その時、ハラリと繰られた頁に綴られている小さな文字が目に入り、ボクは胸を締め付けられ息をつめた。
「君は、本当に・・・不器用なやつだ・・・・・・。」
低い声でつぶやき、手記を文机の上に静かに戻すと、そのまま海神をきつく抱きしめた・・・・・・。
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