双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

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龍粋は不本意だろうけど

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 海神の言葉をかみしめていた慎みのないボクは、考えているうちに面白くなって少し笑ってしまった。

 「どうした?」

 「いや・・・・。君は、ボクと君の兄・・・・龍粋りゅうすいの思い出と、ボクの中に溶けた彼の欠片に嫉妬していたんだろう。ボクはさ・・・・君を抱くたびにボクの中の龍粋が、ボクと一緒に君を抱いているような気がして・・・・実は龍粋に、少し嫉妬していたんだ。・・・・もし龍粋がこれを聞いたら、どう思うだろうと思ってさ。」

 ボクが笑いながら話すと、海神はわずかに目を見開き、今度は難しい顔をして、本気で考え込んでしまったようだ。

 「兄様は、私を恨むかもしれないな。」

 「・・・・なぜ?」

 大真面目に答え始めた海神が可愛くて、ボクは彼の柔らかな耳たぶを優しく揉みながら、興味深くその様子を眺めた。

 「お前は、だれよりも美しくて魅力的で、誠意もある。・・・一緒にいるだけで、たまらなく心地よい気分にさせてくれる。蒼を愛さずにいられるはずがない。共に生きたいと心から望む相手は、蒼・・・お前一人だけだと、間違いなく兄様もそう思う・・・・。」

 柔らかい羽毛のような海神の言葉に心の内をくすぐられ、ボクは目を細めて彼の耳たぶを二度、優しくつまんだ。

 「海神・・・・それ、本気で言っているのか?」
 
 「・・・・もちろんだ。何か、おかしいだろうか。」

 不満げに瞳を揺らす海神の額に、笑いながら口づけると、ボクはわずかに乱れていた彼の髪を指ですいた。

 「ボクの海神・・・・。君は本当に、ボクを愛おしさで狂い死にさせる気なの?・・・今のは、龍粋のことじゃないでしょう。・・・・君からボクへの、かわいい誉め言葉じゃないか。」

 腑に落ちないといった表情で微かに首を傾げた海神からは、日ごろの落ち着いて大人びた雰囲気などは一切感じられず、まるで無垢な幼子のようだ。

 「さぁ、龍粋の話はここまでだ。いくら君の兄とはいえ、君が他の男のことをそんなに一途に想い続けている姿を見るのは、ボクには耐えられない。」

 高鳴る鼓動を意地悪な笑顔で隠し、海神の形の良い鼻先を指でくすぐると、彼は幸せそうに柔らかい笑みを浮かべた。

 甘い芳香すら漂ってきそうなその美しすぎる微笑みに、心を蜜のように溶かされながら、ボクは海神と額を重ね、静かに目を閉じた・・・・・。

 「本当に・・・・・嫌じゃないのなら。・・・・君に、名をあげる。」

 「・・・・・蒼。」

 「その代わりボクにも、名をつけてくれる?・・・・ボクはずっと、それを望んでいたんだ。」

 「・・・・・うん。」

 海神の熱い吐息をうなじに抱き込むと、彼はそこに小さく口づけ、甘く歯を立ててきた・・・・・・・。
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