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彼呼迷軌の参事 2
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鷲掴みに近い状態で子供たちを抱え、駄菓子屋に移動したボクは、彼らを雑に店先で放り出すと、すぐに海神を抱きなおした。
海神の身体がかすかに震えているのが、衣越しに伝わってくる。
「海神、大丈夫。・・・・ボクがいる。」
「うん。」
ボクは海神の身体を強く抱き寄せると、光弘の薄い茶色の瞳をまっすぐに見つめた。
「ボクは黒の元へ戻る。・・・君はどうする。黒を止めるつもりなら、ボクは君をここに置いていく。見届けたいのならこい。・・・・ひとつ言っておくとしたら、黒は君がここに残ることを望むだろうがな。」
恐らく黒は、余計なことをしたボクを恨むだろう・・・・。
だがボクは、この子供に選ばせてやりたかったし、少し、信じてもみたかった。
「俺は・・・彼のそばを離れない。どんなことがあっても。」
光弘は強い光を宿した瞳で、はっきりとこたえた。
ボクは嬉しくなって、思わず光弘の頭に手をのせ、クシャクシャにかき回した。
腕の中で、海神がわずかに身体を震わせた。
「強い子だ。黒には内緒にしておけよ。・・・って、言っても手遅れかな。」
ボクは光弘の肩に力なくとまっている癒をみつめた。
今は妖気を落とし、眠ったようにしているが、この癒という神妖はいまいち得体が知れない。
神妖であるのは確かなのだが、どういうわけか、黒の妖鬼と気配がかなり近い気がするのだ。
ショクと黄色の奴の時のように、食われて一体化しているのかと疑いたいところだが、黒相手にそれは現実的ではないし、黒が神妖を食って成り済ますには、この神妖は幼すぎる。
生まれたての神妖に黒の強烈な妖気を常に注ぎ込んでいては、器がこんなに長くもつわけがなかった。
配下や分身体でもないとすれば、考えられることは一つ・・・・・。
黒と癒とは魂を同じくする者であるということ、癒と黒とは同じ者なのだろうか・・・・・。
ともあれ、癒がこの場にいる以上、黒にこの話は筒抜けだと思っておいた方がいいだろう。
ボクは少し頭が痛くなった。
光弘は首をかしげ、いぶかし気にボクを見上げてくる。
「なんでもない。気にするな。」
ボクが光弘の頭に手を置くと、再び海神が身体をピクリと震わせた。
光弘がこの後のことについて、勝や都古に声をかけている間。
ボクは小さく笑って、海神をギュッと抱き寄せ、どさくさ紛れに首筋に口づけながらささやいた。
「海神、知ってる?・・・・君がボクのためにそうやって怒っている顔が、ボクは大好きなんだ。ボクの全ては君のものなのに、未だにそういう仕草でボクを煽ってくれるなんて・・・。」
ボクは海神の透き通るような耳たぶに甘く嚙みついた。
不謹慎に心を乱されたせいで、海神の緊張は大分解けたようだ。
身体の震えは収まっていた。
ボクはほっとして、小さく息を吐いた。
海神の身体がかすかに震えているのが、衣越しに伝わってくる。
「海神、大丈夫。・・・・ボクがいる。」
「うん。」
ボクは海神の身体を強く抱き寄せると、光弘の薄い茶色の瞳をまっすぐに見つめた。
「ボクは黒の元へ戻る。・・・君はどうする。黒を止めるつもりなら、ボクは君をここに置いていく。見届けたいのならこい。・・・・ひとつ言っておくとしたら、黒は君がここに残ることを望むだろうがな。」
恐らく黒は、余計なことをしたボクを恨むだろう・・・・。
だがボクは、この子供に選ばせてやりたかったし、少し、信じてもみたかった。
「俺は・・・彼のそばを離れない。どんなことがあっても。」
光弘は強い光を宿した瞳で、はっきりとこたえた。
ボクは嬉しくなって、思わず光弘の頭に手をのせ、クシャクシャにかき回した。
腕の中で、海神がわずかに身体を震わせた。
「強い子だ。黒には内緒にしておけよ。・・・って、言っても手遅れかな。」
ボクは光弘の肩に力なくとまっている癒をみつめた。
今は妖気を落とし、眠ったようにしているが、この癒という神妖はいまいち得体が知れない。
神妖であるのは確かなのだが、どういうわけか、黒の妖鬼と気配がかなり近い気がするのだ。
ショクと黄色の奴の時のように、食われて一体化しているのかと疑いたいところだが、黒相手にそれは現実的ではないし、黒が神妖を食って成り済ますには、この神妖は幼すぎる。
生まれたての神妖に黒の強烈な妖気を常に注ぎ込んでいては、器がこんなに長くもつわけがなかった。
配下や分身体でもないとすれば、考えられることは一つ・・・・・。
黒と癒とは魂を同じくする者であるということ、癒と黒とは同じ者なのだろうか・・・・・。
ともあれ、癒がこの場にいる以上、黒にこの話は筒抜けだと思っておいた方がいいだろう。
ボクは少し頭が痛くなった。
光弘は首をかしげ、いぶかし気にボクを見上げてくる。
「なんでもない。気にするな。」
ボクが光弘の頭に手を置くと、再び海神が身体をピクリと震わせた。
光弘がこの後のことについて、勝や都古に声をかけている間。
ボクは小さく笑って、海神をギュッと抱き寄せ、どさくさ紛れに首筋に口づけながらささやいた。
「海神、知ってる?・・・・君がボクのためにそうやって怒っている顔が、ボクは大好きなんだ。ボクの全ては君のものなのに、未だにそういう仕草でボクを煽ってくれるなんて・・・。」
ボクは海神の透き通るような耳たぶに甘く嚙みついた。
不謹慎に心を乱されたせいで、海神の緊張は大分解けたようだ。
身体の震えは収まっていた。
ボクはほっとして、小さく息を吐いた。
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