双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

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 彼の名を呼ぶボクの声と、海神の淫らな喘ぎ声が、これ以上ないほどせわしなく乱れ切った呼吸と共に、絶頂へ向かい吐き出される。

 激しく脈打つ胸の鼓動と共に絡み合いながら上り詰めた熱情は、ようやく穏やかに宙にたゆたい、静かに溶けていった。

 脱力し海神のうなじへ顔をうずめると、彼は弱々しくボクの首筋に噛みつき、ついに意識を手放した・・・・・。

 瓦礫がれきの中。
 純白のしとねに力なく四肢を投げ出した海神は、透き通るような白いうなじを無防備にさらし、唇も瞼も淫らに薄く開いたまま・・・・虚ろな目から音もなく、澄み切った涙を溢れさせている。

 あまりに淫靡な、海神の美し過ぎる姿に、ボクは目を細め長く息を吐き出した。

 もはやボクは、海神とこういうことをするためだけに、生きていると言っても過言ではないかもしれないな・・・・。

 そう思ってしまえるほどの、凄まじい幸福感に満たされていた。

 ボクは白濁がお互いの身体に塗り広がることすら気に留めることもできず、首をむけることさえおっくうに感じるほど重くなった身体を、往生際悪く動かし、力の抜けきった腕で、海神を震える彼の吐息ごと抱きしめた。

 腕の中の愛おしい熱にまどろみながら、ボクは海神の唇にそっと二度口づけた。

 『もし、神妖の長が海神だったなら・・・・君はどうしていたと?』

 ふいに、先ほどの黒の言葉が、ボクの脳裏に、雪山を吹き抜ける風のように舞い戻って来た。

 ・・・・・海神・・・・君の温もりから離れては、ボクはもう・・・・生きていけないよ。

 胸がつぶれてしまいそうなほど強く思いながら、たった一つの温もりを抱きしめ、ボクは深い眠りに、引きずられるように落ちていく。

 目じりから一粒、熱い雫がこぼれ落ちた・・・・・。

 澄み切った氷のような哀しみを含んだ黒の言葉と、涙を秘めた彼の笑顔が、得体の知れない不安を伴って、ひっそりとボクの意識の奥底へ・・・・冷たい影を落とした。

**********************

 「海神・・・・?」

 ボクは、優しく身体を拭かれる感覚に、ぼんやりとしたまま目を開けた。

 「すまない。起こしてしまったな。」

 海神が、手にした白い布で、ボクの身体を丁寧にふき取っている。

 「・・・・ごめん。寝ちゃったみたいだ。」

 「蒼、なぜ謝る。」

 そう言って海神が、たまらなく幸せそうな顔をして見つめてくるから・・・ボクは嬉しくなって、彼の腕を掴み強く抱き寄せた。

 暖かい海神の甘い清香が、ボクの鼻の奥を優しくくすぐり、心の奥を満たしていく。

 「ありがとう。・・・・後はボクがやるよ。それとも、湯あみに行くかい?」

 「うん。」

 嬉しそうに目を細める海神の頬に口づけ、ボクは寝床から立ち上がった。
 海神の腕をとり、引き寄せると、彼はよろけてボクの胸にもたれてきた。

 「海神、大丈夫?」

 「すまない。足に力が、入らなくなってしまった。・・・・情けない。」

 そう言って小さくため息をつき、瞳をふせて膝を震わせる海神は、たまらなく愛らしくて、一瞬のうちに胸の奥が熱で満たされていく。

 あまりにも気持ちが高ぶったために、瞳が熱く潤んだ。

 「すごく、嬉しいよ・・・・清らかで謹厳実直きんげんじっちょくな、美し過ぎる君が・・・・こんな風になるまで、ボクに溺れてくれるなんて。・・・・嬉し過ぎて、気がふれてしまいそうだ。」

 ボクは海神を腕で支えたまま、空いている方の手で彼の顎を上向け、深く長く口づけた・・・・・。

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