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妖鬼 黒 7
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黒は先ほど同様、さも面白い話を聞いているというように、手を組み目を輝かせながら、ボクの瞳を射抜くように見つめてくる。
ボクがようやく全てを話し終えると、黒は少し偉そうに顎を軽く突きだし、片方の眉をわずかに上げ小さく息を吐いた。
「驚いた。・・・・・正直、このまま生かしておいていいものか、迷うほどだ・・・・・。」
冷たい視線を向けながら、黒はその言葉一つでボクの話を肯定した。
「そうかよ。君ってやつは本当に容赦がないな。・・・おいっ、殺気をボクに向けるな・・・。ねぇ・・・君さ・・・・昔語りは、もちろん知っているんだろ?」
黒がいたずらにぶつけてくる軽い殺気に口を尖らせ、ボクは気になっていたことを問いかけた。
「当然。ボクが知らないことは少ない。」
黒は顎を上げ、得意顔でボクを見下ろしてくる。
「ならなぜ、真実を知らしめなかった。昔語りの中で、君はまるっきり・・・・悪者だ。」
ボクの知る2千年前の出来事が事実なのだとすれば、昔語りの内容はあまりにも、黒に対する悪意に、満ち満ちている。
「悪者で悪い?僕は妖鬼・・・。その方が、理に適っている。」
ボクの言葉に、黒は一度はそう答えたが、困ったように、微かな笑みを浮かべながら首を傾げると、気だるげにひじ掛けに頬杖をついた。
「もし、神妖の長が海神だったなら・・・・君はどうしていたと?」
憂いを帯びて紡がれたその言葉は、声のもつ柔らかさとは真逆に、ボクの背に戦慄を走らせた。
考えてみたこともなかった。
ボクがもし、黒と同じ状況にあったなら・・・・・。
ボクは眉間に皺をよせ瞳を上げると、つぶやくように声をもらした。
「すまない・・・・。」
2千年という時の流れを帯びて問いかけられた、あまりにも重いその言葉に、ボクは答えることができなかった。
「いらないよ。そんな言葉が聞きたくて、言ったわけじゃない。・・・・今日は久しぶりに外へ出たんだ。気分がいい・・・。あんたと話せたことも・・・・まぁ、悪くなかったしね。」
黒は苦笑すると、片方の手のひらを上に向け、肩をすくめた。
一見横柄にも見えるその仕草が、素直になれない彼の言葉が本心からのものであると訴えてきているように思えて、ボクは笑顔になる。
「ははっ・・・そいつは光栄だ。」
「蒼・・・・・。」
黒は突然真剣な表情を作り、妖気を全力で解放した。
一瞬のうちに家具が粉々に吹き飛ばされ、客間の中を凄まじい妖気が、荒れ狂う嵐のように吹き乱れていく。
恐らく、結界を張っていなければボクの屋敷の乗るこの大地ごと、壊滅的な被害を受けていただろう。
なんて妖気だ・・・・・シャレにもならない。
一体何をすれば、これほどまでになれるっていうんだ。
黒の妖気量は、軽くボクの5倍は超えているようだった。
格の違いをまざまざと見せつけられ、ボクは身震いした。
黒が自分より高い能力を有していることは分かってはいたが、今目にしている黒の力は、自分の想像を遥かに上回っていたのだ。
何があったのだろうか。
以前探った時とは比べようもないほど、彼の力は安定し、強力になっている。
実際の話、少し前の黒であれば、その力は今の蒼とほぼ同等だったのだ・・・・・。
ボクがようやく全てを話し終えると、黒は少し偉そうに顎を軽く突きだし、片方の眉をわずかに上げ小さく息を吐いた。
「驚いた。・・・・・正直、このまま生かしておいていいものか、迷うほどだ・・・・・。」
冷たい視線を向けながら、黒はその言葉一つでボクの話を肯定した。
「そうかよ。君ってやつは本当に容赦がないな。・・・おいっ、殺気をボクに向けるな・・・。ねぇ・・・君さ・・・・昔語りは、もちろん知っているんだろ?」
黒がいたずらにぶつけてくる軽い殺気に口を尖らせ、ボクは気になっていたことを問いかけた。
「当然。ボクが知らないことは少ない。」
黒は顎を上げ、得意顔でボクを見下ろしてくる。
「ならなぜ、真実を知らしめなかった。昔語りの中で、君はまるっきり・・・・悪者だ。」
ボクの知る2千年前の出来事が事実なのだとすれば、昔語りの内容はあまりにも、黒に対する悪意に、満ち満ちている。
「悪者で悪い?僕は妖鬼・・・。その方が、理に適っている。」
ボクの言葉に、黒は一度はそう答えたが、困ったように、微かな笑みを浮かべながら首を傾げると、気だるげにひじ掛けに頬杖をついた。
「もし、神妖の長が海神だったなら・・・・君はどうしていたと?」
憂いを帯びて紡がれたその言葉は、声のもつ柔らかさとは真逆に、ボクの背に戦慄を走らせた。
考えてみたこともなかった。
ボクがもし、黒と同じ状況にあったなら・・・・・。
ボクは眉間に皺をよせ瞳を上げると、つぶやくように声をもらした。
「すまない・・・・。」
2千年という時の流れを帯びて問いかけられた、あまりにも重いその言葉に、ボクは答えることができなかった。
「いらないよ。そんな言葉が聞きたくて、言ったわけじゃない。・・・・今日は久しぶりに外へ出たんだ。気分がいい・・・。あんたと話せたことも・・・・まぁ、悪くなかったしね。」
黒は苦笑すると、片方の手のひらを上に向け、肩をすくめた。
一見横柄にも見えるその仕草が、素直になれない彼の言葉が本心からのものであると訴えてきているように思えて、ボクは笑顔になる。
「ははっ・・・そいつは光栄だ。」
「蒼・・・・・。」
黒は突然真剣な表情を作り、妖気を全力で解放した。
一瞬のうちに家具が粉々に吹き飛ばされ、客間の中を凄まじい妖気が、荒れ狂う嵐のように吹き乱れていく。
恐らく、結界を張っていなければボクの屋敷の乗るこの大地ごと、壊滅的な被害を受けていただろう。
なんて妖気だ・・・・・シャレにもならない。
一体何をすれば、これほどまでになれるっていうんだ。
黒の妖気量は、軽くボクの5倍は超えているようだった。
格の違いをまざまざと見せつけられ、ボクは身震いした。
黒が自分より高い能力を有していることは分かってはいたが、今目にしている黒の力は、自分の想像を遥かに上回っていたのだ。
何があったのだろうか。
以前探った時とは比べようもないほど、彼の力は安定し、強力になっている。
実際の話、少し前の黒であれば、その力は今の蒼とほぼ同等だったのだ・・・・・。
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