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足手まとい
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「俺たちも行こう。」
「だな!」
「まぁ待て。」
光弘の後を追い、急いで水穂の元へ移動しようとした子供たちを、ボクは止めた。
双凶と呼ばれてはいるけれど、黒の妖鬼はボクより強い。
元々はボクと同じくらいの強さだったのだろうが・・・・。
海神と身体を重ねた今だからこそわかる。
彼は、ボクと同じだ・・・・。
異種の者をつがいと持ち、交わったことがあるに違いなかった。
だが・・・・腑に落ちないこともあった。
以前彼を目にした時と比べ物にならないほど、黒の妖力は異常なほど増幅しているのだ。
正直、ボクでは彼の力の神髄が見えない。
それほどまでに、力の差ができてしまっている・・・・・。
ボクでさえがそんな状況なのだ。
これでは子供たちはついていくだけ無駄というものだし、足手まといにもなるだろう。
「必要ない。我々は彼らの帰りを待てばいい。何も心配はいらないよ。」
「どういう意味ですか。どうして心配ないと言い切れるんですか。」
「さっきそこにいたのは、黒の奴だろ。あいつがそこにあった魂の石を持って光弘という子供の後を追った・・・悪意も感じない。ということはだ、どういう関係かは知らないが、十中八九、あいつはあの光弘という子供のために後を追って行ったんだろう。」
ボクは、海神の髪についた小さな葉をつまんで捨て、彼の黒髪を手ですいて整えながら子供らに言った。
あの二人の関係がどういうものなのかはわからないが、黒は光弘を随分大切にしているように見えた。
彼が守っているのなら、光弘に危険が及ぶことは、まずないだろう。
「だから、何も心配はないのさ。むしろ、あいつで手に余るような事は、もはやこの天地でどうにかできるやつなんて、誰もいないっていうことを意味するんだ。お手上げだよ。・・・・だから、今はあいつにまかせて、足手まといは行くべきじゃない。」
ボクは海神の様子にホッと胸をなでおろした。
ショクがいなくなったことで緊張がとけたのか、海神の顔色は悪くない。
頭に血が上り、そのまま駆けつけてしまったが、ボクがもう少し、海神に配慮してあげるべきだった・・・・・。
猛省しながら、ボクは海神の頬を手のひらで包み、親指でそっと滑らかな肌をなでた。
不思議そうに見つめてくる海神に苦笑いを浮かべ、ボクは彼に口づけたい気持ちをどうにか抑えると、名残を惜しみながら手を離し、懐から白い繭を二つ取り出した。
手の上で繭を転がしながら、ボクは少し離れた地面に転がって伸びている少女を、冷たく見つめる。
碧の情報では、この少女は真美と言って、大分質の悪い人間のようだ。
光弘が助けに向かった水穂という名の少女と、ボクが先ほど託された少女の霊・・・・この2人が追い詰められているのは、全てこの真美という少女が要因らしい。
碧の言葉を肯定するかのように、ボクの目に映る彼女の心は、反吐がでるような品のない色を放ち、触れるのもためらうほどだった。
とはいえ、このまま彼女を放置して移動するというわけにはいかないだろう。
ボクは全然かまわないけれど、責任感の強い海神が、納得するわけがない。
仕方なく、ボクは繭の1つに「穢」の文字をかきこんだ。
『納めろ。』
ボクは、その繭の中へ彼女を詰めると、同じようにして、今度は「霊」の文字を繭に記し、そこに音楽室の少女を繭に入れて、懐へ二つを突っ込んだ。
「この2人の事は後で解放しよう。とりあえずお茶でも飲みに行かないか?」
「お茶?どこに?てゆーか、あんた、誰?」
問いかけてきた、長身の青年にボクは笑顔で答えた。
「ボクの名は蒼。これから彼呼迷軌へお茶にいこう。」
「だな!」
「まぁ待て。」
光弘の後を追い、急いで水穂の元へ移動しようとした子供たちを、ボクは止めた。
双凶と呼ばれてはいるけれど、黒の妖鬼はボクより強い。
元々はボクと同じくらいの強さだったのだろうが・・・・。
海神と身体を重ねた今だからこそわかる。
彼は、ボクと同じだ・・・・。
異種の者をつがいと持ち、交わったことがあるに違いなかった。
だが・・・・腑に落ちないこともあった。
以前彼を目にした時と比べ物にならないほど、黒の妖力は異常なほど増幅しているのだ。
正直、ボクでは彼の力の神髄が見えない。
それほどまでに、力の差ができてしまっている・・・・・。
ボクでさえがそんな状況なのだ。
これでは子供たちはついていくだけ無駄というものだし、足手まといにもなるだろう。
「必要ない。我々は彼らの帰りを待てばいい。何も心配はいらないよ。」
「どういう意味ですか。どうして心配ないと言い切れるんですか。」
「さっきそこにいたのは、黒の奴だろ。あいつがそこにあった魂の石を持って光弘という子供の後を追った・・・悪意も感じない。ということはだ、どういう関係かは知らないが、十中八九、あいつはあの光弘という子供のために後を追って行ったんだろう。」
ボクは、海神の髪についた小さな葉をつまんで捨て、彼の黒髪を手ですいて整えながら子供らに言った。
あの二人の関係がどういうものなのかはわからないが、黒は光弘を随分大切にしているように見えた。
彼が守っているのなら、光弘に危険が及ぶことは、まずないだろう。
「だから、何も心配はないのさ。むしろ、あいつで手に余るような事は、もはやこの天地でどうにかできるやつなんて、誰もいないっていうことを意味するんだ。お手上げだよ。・・・・だから、今はあいつにまかせて、足手まといは行くべきじゃない。」
ボクは海神の様子にホッと胸をなでおろした。
ショクがいなくなったことで緊張がとけたのか、海神の顔色は悪くない。
頭に血が上り、そのまま駆けつけてしまったが、ボクがもう少し、海神に配慮してあげるべきだった・・・・・。
猛省しながら、ボクは海神の頬を手のひらで包み、親指でそっと滑らかな肌をなでた。
不思議そうに見つめてくる海神に苦笑いを浮かべ、ボクは彼に口づけたい気持ちをどうにか抑えると、名残を惜しみながら手を離し、懐から白い繭を二つ取り出した。
手の上で繭を転がしながら、ボクは少し離れた地面に転がって伸びている少女を、冷たく見つめる。
碧の情報では、この少女は真美と言って、大分質の悪い人間のようだ。
光弘が助けに向かった水穂という名の少女と、ボクが先ほど託された少女の霊・・・・この2人が追い詰められているのは、全てこの真美という少女が要因らしい。
碧の言葉を肯定するかのように、ボクの目に映る彼女の心は、反吐がでるような品のない色を放ち、触れるのもためらうほどだった。
とはいえ、このまま彼女を放置して移動するというわけにはいかないだろう。
ボクは全然かまわないけれど、責任感の強い海神が、納得するわけがない。
仕方なく、ボクは繭の1つに「穢」の文字をかきこんだ。
『納めろ。』
ボクは、その繭の中へ彼女を詰めると、同じようにして、今度は「霊」の文字を繭に記し、そこに音楽室の少女を繭に入れて、懐へ二つを突っ込んだ。
「この2人の事は後で解放しよう。とりあえずお茶でも飲みに行かないか?」
「お茶?どこに?てゆーか、あんた、誰?」
問いかけてきた、長身の青年にボクは笑顔で答えた。
「ボクの名は蒼。これから彼呼迷軌へお茶にいこう。」
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