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海神の不安 1 ※
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温かい食事を楽しみ、デザートのゴマ豆腐を口に運びながら、ボクはようやく、碧に黄色の妖鬼の件を話して聞かせ始めた。
「・・・そんな感じで黄色の奴はさ、ショクに喰われて既に死んでたんだよね。亡骸だけ、着ぐるみみたいに使われてたけど、結局それも、ひずみから現れたおかしな腕の奴に引き裂かれて、ぐちゃぐちゃの台無しになってた。・・・あれって、持ってきた方がよかった?」
「いえ。必要あれば、こちらで回収いたしますから。」
「腕の奴は、黄色の妖鬼の中からショクだけを抜き去って、そのままひずみへ飛び込んで逃げた。せっかくお膳立てしてくれたのに、まんまと逃げられて・・・ごめんね。」
「私の好きでお手伝いしたこと・・・その言葉は必要ありません。」
碧の言葉に、ボクは笑顔で感謝を口にしながら、彼女手づくりのゴマ豆腐を口にした。
「うん!碧・・・やっぱり君、ゴマ豆腐も絶品じゃないか。・・・海神、半分こしよう?あんみつも食べてみたい。」
「うん。」
海神は最初からボクがそう言うとよんでいたのか、綺麗に半分残しながら食べ進めていた。
「・・・蒼。腕・・・というのは、どんなものだったのだ?」
海神の口に木の匙でゴマ豆腐を運んでいたボクは、彼のその台詞で、ようやく海神がショクの事や腕の事を知らないでいることに気づいた。
あの時、既に海神は術の反動で眠りについていたから、ボクは危険のないよう、彼を繭に納めてしまっていた。
そのあとは海神はほとんど眠り続けていたんだから、知っているはずがないんだ。
「ごめん・・・・。」
これほど重要なことをうっかり伝えそびれていたことに、ボクがうなだれると、海神は少し微笑んで小さく首を横に振った。
ボクが匙を置き海神の頬を右手でやんわり包みこむと、彼はボクの手の上からそっと自分の手を重ね押し付けるようにして、頬を寄せてきた。
碧は何かの空気をよんだのか、既に食べ終えた分の食器を手早くまとめると、幼子を連れ、奥へ下がって行った。
「・・・・すまない、蒼。お前が気づいていないのを、幸いと・・・私のわがままで、あえて聞こうとはしなかったのだ。・・・・だから、お前が気にする必要はない。」
「・・・わがまま?」
「うん。・・・黄色の妖鬼にお前を奪われていた時間は、戻らない・・・・。だからせめて、二人きりの時は・・・誰にも奪われたくなかった。・・・蒼の、心を。」
「・・・・・。」
海神の滑らかな頬を指でなでていたボクの指が、ピタリと動きを止めた。
「・・・・海神。君に、内緒の話があるんだ。・・・耳を貸して。」
「うん。」
素直にボクへと顔を寄せてきた海神に・・・ボクはふいに口づけた。
海神は、瞳を揺らしてボクを見つめている。
「君は本当に、悪い子だね・・・・・。」
ボクは立ち上がり、海神の方へ回り込むと、手首を掴んで無理矢理立ち上がらせ、軽く打ち付けるような勢いで、彼をすぐ横の壁へと追い詰めた。
揺れる淡い光に照らされながら、壁を背に動けずにいる海神の薄い唇を強引にこじ開け、ボクは激しく口づけ始める。
碧の目を気にしてか、ボクの身体をやんわりと押しやろうとしてきた海神の手を乱暴に捕らえ、逃れられないよう強く壁に押し付けると、一層深く口内を蹂躙する。
つかまれた手首の痛みからか、息をする隙のない飲み込まれそうな口づけに上手く呼吸が追い付けずにいるせいなのか・・・・海神はわずかに苦し気な表情を浮かべた。
「嫌なら、本気で抗えよ。・・・・海神。」
ようやく唇を離し、捕らえていた腕を解放した途端。
海神はボクの首に腕を絡ませ、自分から唇を重ねてくる。
熱を帯びた2つの呼吸が追い詰められるように乱れ始め、ボクは慌てて海神から唇を離した。
「・・・そんな感じで黄色の奴はさ、ショクに喰われて既に死んでたんだよね。亡骸だけ、着ぐるみみたいに使われてたけど、結局それも、ひずみから現れたおかしな腕の奴に引き裂かれて、ぐちゃぐちゃの台無しになってた。・・・あれって、持ってきた方がよかった?」
「いえ。必要あれば、こちらで回収いたしますから。」
「腕の奴は、黄色の妖鬼の中からショクだけを抜き去って、そのままひずみへ飛び込んで逃げた。せっかくお膳立てしてくれたのに、まんまと逃げられて・・・ごめんね。」
「私の好きでお手伝いしたこと・・・その言葉は必要ありません。」
碧の言葉に、ボクは笑顔で感謝を口にしながら、彼女手づくりのゴマ豆腐を口にした。
「うん!碧・・・やっぱり君、ゴマ豆腐も絶品じゃないか。・・・海神、半分こしよう?あんみつも食べてみたい。」
「うん。」
海神は最初からボクがそう言うとよんでいたのか、綺麗に半分残しながら食べ進めていた。
「・・・蒼。腕・・・というのは、どんなものだったのだ?」
海神の口に木の匙でゴマ豆腐を運んでいたボクは、彼のその台詞で、ようやく海神がショクの事や腕の事を知らないでいることに気づいた。
あの時、既に海神は術の反動で眠りについていたから、ボクは危険のないよう、彼を繭に納めてしまっていた。
そのあとは海神はほとんど眠り続けていたんだから、知っているはずがないんだ。
「ごめん・・・・。」
これほど重要なことをうっかり伝えそびれていたことに、ボクがうなだれると、海神は少し微笑んで小さく首を横に振った。
ボクが匙を置き海神の頬を右手でやんわり包みこむと、彼はボクの手の上からそっと自分の手を重ね押し付けるようにして、頬を寄せてきた。
碧は何かの空気をよんだのか、既に食べ終えた分の食器を手早くまとめると、幼子を連れ、奥へ下がって行った。
「・・・・すまない、蒼。お前が気づいていないのを、幸いと・・・私のわがままで、あえて聞こうとはしなかったのだ。・・・・だから、お前が気にする必要はない。」
「・・・わがまま?」
「うん。・・・黄色の妖鬼にお前を奪われていた時間は、戻らない・・・・。だからせめて、二人きりの時は・・・誰にも奪われたくなかった。・・・蒼の、心を。」
「・・・・・。」
海神の滑らかな頬を指でなでていたボクの指が、ピタリと動きを止めた。
「・・・・海神。君に、内緒の話があるんだ。・・・耳を貸して。」
「うん。」
素直にボクへと顔を寄せてきた海神に・・・ボクはふいに口づけた。
海神は、瞳を揺らしてボクを見つめている。
「君は本当に、悪い子だね・・・・・。」
ボクは立ち上がり、海神の方へ回り込むと、手首を掴んで無理矢理立ち上がらせ、軽く打ち付けるような勢いで、彼をすぐ横の壁へと追い詰めた。
揺れる淡い光に照らされながら、壁を背に動けずにいる海神の薄い唇を強引にこじ開け、ボクは激しく口づけ始める。
碧の目を気にしてか、ボクの身体をやんわりと押しやろうとしてきた海神の手を乱暴に捕らえ、逃れられないよう強く壁に押し付けると、一層深く口内を蹂躙する。
つかまれた手首の痛みからか、息をする隙のない飲み込まれそうな口づけに上手く呼吸が追い付けずにいるせいなのか・・・・海神はわずかに苦し気な表情を浮かべた。
「嫌なら、本気で抗えよ。・・・・海神。」
ようやく唇を離し、捕らえていた腕を解放した途端。
海神はボクの首に腕を絡ませ、自分から唇を重ねてくる。
熱を帯びた2つの呼吸が追い詰められるように乱れ始め、ボクは慌てて海神から唇を離した。
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