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みずはの祈り
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海神は行動が早い。
やるべきことが見つかれば、すぐに段取りを組んでさっさと動き出してしまう。
神妖の中でも3本の指に入る上位の存在である海神の能力は非常に高く、最近では大きな用向きもなかったため、彼一人が動けばそれですぐに事足りてしまっていたのだ。
さらに、一見するとわからないが、海神は冷たく見えて意外にも思いやりが深い。
相談を受ければ、時間が許す限り、相手を選ぶこともせず自ら進んで足を運ぶため、一人の方が自由がきき都合がよい。
そしてもう一つ、決してみずはを危険にさらそうとはしないことも、海神が一人で行動する要因の一つにもなっていた。
そのためにみずはは、海神に取り残されてしまうことが、ままあった。
数日前に海神が行方不明になった時もそうだ。
自分がかけつけた時には、海神はすでに行動に移った後だったのだ。
その海神が、すぐに行くと言ったのに自分の前に全く姿を現さない。
まさか、また何かおかしなことに巻き込まれているのでは・・・・そう思い、みずはは慌てて祈りの間の前に転移した。
穢れ堕ちが続けて出現している件といい、海神が行方をくらましてしまったことといい・・・宵闇の復活を耳にすると同時に、不安に想う出来事があまりにも頻発しすぎている。
不安に胸を震わせ転移したみずはだったが、着くと同時に祈りの間の扉が開かれそこから出てきた2人と目が合い、思わず固まった。
海神の腰には蒼という押しかけ従者の腕が、しっかり回されていたのだ。
思わずぎょっとして目を逸らしたが、海神がとても幸せそうにしているのに気づき、ぽっかりと胸に空いたような寂しさと海神の幸せを喜ばしいと思う気持ちに同時に襲われ、みずはは戸惑いを感じた。
それにしても、この蒼という男は、全く人目をはばかることを知らない。
齢は別として、一応幼子の見た目をしているみずはの前で、平気で海神を抱きしめている。
未だに蒼の得体は知れないが、どうやらこの2人はとても強い慕情で深く繋がることができたのだとわかり、みずはは顔に熱が上がるのを感じながら、心の中で海神に祝福の言葉を送った。
ところが、あんなに嬉しそうだった海神が、地下牢へ着いた途端、恐怖に身を固くしてしまった。
恐らく自分の知らない忌まわしい何かがあったのだ。
これほどまでに心を痛めている海神を、みずはは見たことがなかった。
心配になり思わず声をかけようとしたが、その必要はなかった。
蒼は、海神にしっかりと心を寄り添わせている。
いたわる様に抱きしめる手も、海神が顔をうずめたうなじも、口づけを落としている形の良い唇も、黒曜のように美しい瞳も・・・・その全てが海神を求め、慈しんでいることが伝わってきて・・・・・みずはの胸を締め付けるような切なさがあふれ、胸が熱くなり鼓動が高鳴った。
ふと、思わず魅入ってしまっていることに気づき、みずはは慌てて2人に背中を向けた。
そこに自分と同じように、口を開けて海神と蒼に見入っている部下たちの姿を見つけ、無理矢理牢の奥を捜索するよう指示する。
出会ったばかりの2人が、なぜここまで深く想い合うことができるのか・・・・。
長く想いをすれ違わせていた者がようやく添い遂げた時のような、途方もない愛情がそこに潜んでいる気がして、みずはは心を震わせた。
もはや、蒼の正体など重要ではなかった。
2人には長く、共に幸せであって欲しい。
海神が上衣の影で蒼の指を握りしめているのを見ながら、祈るようにみずはは思った。
やるべきことが見つかれば、すぐに段取りを組んでさっさと動き出してしまう。
神妖の中でも3本の指に入る上位の存在である海神の能力は非常に高く、最近では大きな用向きもなかったため、彼一人が動けばそれですぐに事足りてしまっていたのだ。
さらに、一見するとわからないが、海神は冷たく見えて意外にも思いやりが深い。
相談を受ければ、時間が許す限り、相手を選ぶこともせず自ら進んで足を運ぶため、一人の方が自由がきき都合がよい。
そしてもう一つ、決してみずはを危険にさらそうとはしないことも、海神が一人で行動する要因の一つにもなっていた。
そのためにみずはは、海神に取り残されてしまうことが、ままあった。
数日前に海神が行方不明になった時もそうだ。
自分がかけつけた時には、海神はすでに行動に移った後だったのだ。
その海神が、すぐに行くと言ったのに自分の前に全く姿を現さない。
まさか、また何かおかしなことに巻き込まれているのでは・・・・そう思い、みずはは慌てて祈りの間の前に転移した。
穢れ堕ちが続けて出現している件といい、海神が行方をくらましてしまったことといい・・・宵闇の復活を耳にすると同時に、不安に想う出来事があまりにも頻発しすぎている。
不安に胸を震わせ転移したみずはだったが、着くと同時に祈りの間の扉が開かれそこから出てきた2人と目が合い、思わず固まった。
海神の腰には蒼という押しかけ従者の腕が、しっかり回されていたのだ。
思わずぎょっとして目を逸らしたが、海神がとても幸せそうにしているのに気づき、ぽっかりと胸に空いたような寂しさと海神の幸せを喜ばしいと思う気持ちに同時に襲われ、みずはは戸惑いを感じた。
それにしても、この蒼という男は、全く人目をはばかることを知らない。
齢は別として、一応幼子の見た目をしているみずはの前で、平気で海神を抱きしめている。
未だに蒼の得体は知れないが、どうやらこの2人はとても強い慕情で深く繋がることができたのだとわかり、みずはは顔に熱が上がるのを感じながら、心の中で海神に祝福の言葉を送った。
ところが、あんなに嬉しそうだった海神が、地下牢へ着いた途端、恐怖に身を固くしてしまった。
恐らく自分の知らない忌まわしい何かがあったのだ。
これほどまでに心を痛めている海神を、みずはは見たことがなかった。
心配になり思わず声をかけようとしたが、その必要はなかった。
蒼は、海神にしっかりと心を寄り添わせている。
いたわる様に抱きしめる手も、海神が顔をうずめたうなじも、口づけを落としている形の良い唇も、黒曜のように美しい瞳も・・・・その全てが海神を求め、慈しんでいることが伝わってきて・・・・・みずはの胸を締め付けるような切なさがあふれ、胸が熱くなり鼓動が高鳴った。
ふと、思わず魅入ってしまっていることに気づき、みずはは慌てて2人に背中を向けた。
そこに自分と同じように、口を開けて海神と蒼に見入っている部下たちの姿を見つけ、無理矢理牢の奥を捜索するよう指示する。
出会ったばかりの2人が、なぜここまで深く想い合うことができるのか・・・・。
長く想いをすれ違わせていた者がようやく添い遂げた時のような、途方もない愛情がそこに潜んでいる気がして、みずはは心を震わせた。
もはや、蒼の正体など重要ではなかった。
2人には長く、共に幸せであって欲しい。
海神が上衣の影で蒼の指を握りしめているのを見ながら、祈るようにみずはは思った。
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