双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

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守れなかったもの 1 ※

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 三毛みけに呼び戻され戻ってみれば、なるほど館の周りは雲霞うんかのごとくたかっている低級妖鬼で、空の色が変わるほどだった。

 中心では、黄色のやつがごちゃごちゃと下品な言葉を叫びまくっている。
 どうやら奴は、三毛を手籠めにしたいらしい。

 せっかくの海神わだつみとの時間を、この品のない馬鹿に邪魔され、ボクは気が立っていた。
 ボクは我慢するのが大嫌いなんだ。

 神妖の姿を解き、元の妖鬼の姿に戻る。

 群がる低級妖鬼を全て視界にとらえると、ボクは口を開いた。

 「れ。」

 ボクの瞳が紅くギラリと光る。
 同時に、低級妖鬼の大群は、全て一瞬で粉みじんに粉砕され、上空から降り注いできた。

 ボクは懐から薄絹を取り出し、頭から羽織った。
 以前に三毛が用意してくれた特製の品で、全てのものを軽やかに弾き飛ばしてくれる。

 妖鬼どもの血肉が降り注ぐ中を、ボクは一足で屋敷の上まで飛び上がった。

 黄色の奴は、ボクの姿を目にするなり、その巨体をブルブルと震わせた。
 薄絹を懐へしまい、ボクは黄色の奴を見下ろす。

 「邪魔だ。せろ。」

 ボクがそう言うと、黄色の奴は悔しそうにこちらを睨みつけたまま、一瞬で姿を消した。
 これで一応の問題は解決したはずだが、念のためボクは三毛の様子を見に屋敷の中へ入ることにした。

 「蒼様!」
 「いやぁ。ごめんごめん。待った?」

 ボクがそう言うと、三毛が涙目でくってかかってきた。

 「酷いです!あの黄色のやつ、変な事ばかり言ってきて。本当に気持ち悪かったんですよ!」
 「確かに、あいつは品がなかったよね。今度来たらボクがきっちり殺してやるから。元気だしてよ。」

 ボクの胸をポコポコ殴り続けている三毛の頭をなでながら、ボクは嫌な違和感を覚えていた。

 黄色の奴はなぜこんな無謀な真似をしたんだろう。
 いくら脳が溶けている筋肉妖鬼とはいえ・・・いや、だからこそ、恐怖に対しては敏感なはずなのに。

 そんなことを考えていると、いきなりボクは、胸をわしづかみされるような息苦しさに襲われ、思わず膝をついた。

 「蒼様・・・・・・?」

 三毛の心配そうな声が遠くに聞こえる中で、ボクは、ボクの名を呼ぶ海神の声を聴いた。

 『蒼・・・・・。』

 切なく、あえぐような悲壮に満ちた声が、ボクの魂を震わせる。

 海神・・・・。
 何が起きている・・・・・。

 ボクは立ち上がると同時に、海神の元へ転移した。
 そこで目にした光景に、ボクは全身の血液が凍るほどの衝撃を受けた。

 服をはだけ素肌をさらし、無数の触手になぶられ身体を震わせる海神の姿がそこにあった。
 冷たい石の床で無理矢理組み敷かれ、深く口づけられている海神の、きつく閉じた目からは、涙が溢れ続けている。

 怒りに震えそうになる唇をキュッと引き結び、激しく渦巻く冷たい怒りを腹の底に押し込みながら、ボクは何とか口を開いた。

 「貴様・・・・・何のつもりだ。」
 「まさか・・・早すぎる!」

 そいつは海神から口を離すと、ひどく動揺して叫び声を上げた。

 「蒼・・・・・。」

 辛そうに表情かおを歪める海神の口から、ボクの名が切なく高い声で紡がれる。
 次の瞬間、ボクは海神を組み敷いている妖鬼の触手を全て切り刻み、奴の喉を思い切り締め上げていた。
 
  
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