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みずはの苦悩
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ここ数日の出来事は、みずはの頭を抱えさせ続けることばかりだった。
突然の白妙からの招集で、穢れ堕ちした神妖の中でも最凶と呼ばれ、過去に恐れられた宵闇が復活したことを告げられた。
その翌日、ただならぬ凶悪な気配を感じると同時に、海神の気配を見失った時には、心臓が凍り付いたかと思った。
何事もなく戻ってきた海神にほっとしていると、今度は仲間内から次々と穢れ堕ちが発生した。
先ほど祈りの間で瀕死状態で拘束された神妖に至っては、ただの穢れ落ちではない。
完全に身体が変異し、自我を失ってしまっていた。
一体、何が起きているのか全く理解が追い付かない。
一番みずはを混乱させているのは、突然現れた一人の美しく若い神妖だった。
飄々として、つかみどころのないこの男は、全く抵抗するそぶりを見せず大人しく自分に拘束された。
考えてみれば、そもそもがおかしいのだ。
海神に見慣れている自分でさえ思わず魅入ってしまうほど美しい顔をしているのに、気配から読み取れる力の大きさは並みの神妖と変わらない。
神妖の持つ、外見の美しさや禍々しさは力に比例する。
こんなに美しい神妖が、並みの力しか持ち合わせていないはずがない。
自分が全く知らないというのも妙な話だ。
それに・・・・・。
一体、この男はどうやってここまで入ってきたのだ?
この祈りの間は、上位の神妖でも入ることが叶わない、強固な結界で守られているのに。
あの変異した穢れ堕ちを使ったのか?
いや・・・・仮にあれを使っても、この結界は破れない。
だいたい、もしそうだとしたら、祈りの間であれを倒したのはだれなのだ?
あの場にいるはずの海神の姿は、どこにも見あたらなかった。
その後。
深海の門番が私怨にまみれ、はりきって拷問をはじめたが、あの男を薄皮一枚すら傷つけることができなかった。
頑丈な枷も、まるで飴細工でも扱うかのようにぐにゃりとねじ開けられてしまい、みずはにそれを渡した男は、そのまま海神を追って行ってしまった。
深海の門番は、奴が一瞬だけ放った強烈な殺気にあてられ、意識を飛ばされ放心たまま戻らない。
再起は難しそうだ。
一体どれほどの力を持っていれば、こんなことができるのか・・・・・・。
だが、一番みずはを混乱させているのは、そんなことではなかった。
みずはは、人界では恋愛成就の神としてまつられている。
他の上位の神妖ほどの力の強さはないが、色恋ざたについてのするどさは右に出る者はいない。
海神・・・・・・?
常に海神の傍らにいた、みずはだからこそ、なおのことすぐに気づいてしまった。
この得体の知れない、見たこともない男に、海神が激しい慕情を持っていることに。
長い年月、白妙に報われない想いを抱き続けている海神を見守ってきたが、それとは明らかに違う。
息苦しいほどに熱い恋慕の情にあてられ、みずはは、自分の鼓動までもが高鳴ってくるように感じた。
甘く匂い立つような海神の小さな仕草の一つ一つが、海神があの男に寄せる切ない想いの強さを教えてくる。
男と触れ合う指先が離れるのを嫌ったのだろう。
海神は思わず男の指先をにぎりしめ・・・戸惑い・・・またすぐに振り払った・・・・。
その様子を見たみずはは、心の底から驚いた。
白妙に恋慕の情を抱いている海神は、つねに積極的で、真っ直ぐに白妙にぶつかっていた。
なんど冷たくあしらわれても一向にかまわず、じゃれあうように向かっていたのだ。
それなのに、この男に対する海神の行動は、まるで自分の想いが成就できないことを恐れ、最初から目をそらしているようだった。
恋ではないのだ・・・・・。
海神がこの男に持つ感情は、もっと深い・・・・・。
そしてそれは、この得体の知れない男も同じだった。
激しく海神を求め、近づいていくくせに、心が触れそうになると目を逸らす・・・・・・。
鈍感なこの男は、海神の想いに全く気付いていないようだった。
海神と同じように・・・・・。
本当ならば、海神の想いの成就を祈りたいみずはだったが、この男はあまりに怪しすぎた。
海神に対する悪意はなく、むしろ彼を守ってくれるというのだから、今の不安な状況を考えれば願ったりかなったりではあるのだが・・・・・。
これは、本当に神妖なのだろうか・・・・・・。
みずはは、また一つ増えてしまった大きな問題にため息をついた。
突然の白妙からの招集で、穢れ堕ちした神妖の中でも最凶と呼ばれ、過去に恐れられた宵闇が復活したことを告げられた。
その翌日、ただならぬ凶悪な気配を感じると同時に、海神の気配を見失った時には、心臓が凍り付いたかと思った。
何事もなく戻ってきた海神にほっとしていると、今度は仲間内から次々と穢れ堕ちが発生した。
先ほど祈りの間で瀕死状態で拘束された神妖に至っては、ただの穢れ落ちではない。
完全に身体が変異し、自我を失ってしまっていた。
一体、何が起きているのか全く理解が追い付かない。
一番みずはを混乱させているのは、突然現れた一人の美しく若い神妖だった。
飄々として、つかみどころのないこの男は、全く抵抗するそぶりを見せず大人しく自分に拘束された。
考えてみれば、そもそもがおかしいのだ。
海神に見慣れている自分でさえ思わず魅入ってしまうほど美しい顔をしているのに、気配から読み取れる力の大きさは並みの神妖と変わらない。
神妖の持つ、外見の美しさや禍々しさは力に比例する。
こんなに美しい神妖が、並みの力しか持ち合わせていないはずがない。
自分が全く知らないというのも妙な話だ。
それに・・・・・。
一体、この男はどうやってここまで入ってきたのだ?
この祈りの間は、上位の神妖でも入ることが叶わない、強固な結界で守られているのに。
あの変異した穢れ堕ちを使ったのか?
いや・・・・仮にあれを使っても、この結界は破れない。
だいたい、もしそうだとしたら、祈りの間であれを倒したのはだれなのだ?
あの場にいるはずの海神の姿は、どこにも見あたらなかった。
その後。
深海の門番が私怨にまみれ、はりきって拷問をはじめたが、あの男を薄皮一枚すら傷つけることができなかった。
頑丈な枷も、まるで飴細工でも扱うかのようにぐにゃりとねじ開けられてしまい、みずはにそれを渡した男は、そのまま海神を追って行ってしまった。
深海の門番は、奴が一瞬だけ放った強烈な殺気にあてられ、意識を飛ばされ放心たまま戻らない。
再起は難しそうだ。
一体どれほどの力を持っていれば、こんなことができるのか・・・・・・。
だが、一番みずはを混乱させているのは、そんなことではなかった。
みずはは、人界では恋愛成就の神としてまつられている。
他の上位の神妖ほどの力の強さはないが、色恋ざたについてのするどさは右に出る者はいない。
海神・・・・・・?
常に海神の傍らにいた、みずはだからこそ、なおのことすぐに気づいてしまった。
この得体の知れない、見たこともない男に、海神が激しい慕情を持っていることに。
長い年月、白妙に報われない想いを抱き続けている海神を見守ってきたが、それとは明らかに違う。
息苦しいほどに熱い恋慕の情にあてられ、みずはは、自分の鼓動までもが高鳴ってくるように感じた。
甘く匂い立つような海神の小さな仕草の一つ一つが、海神があの男に寄せる切ない想いの強さを教えてくる。
男と触れ合う指先が離れるのを嫌ったのだろう。
海神は思わず男の指先をにぎりしめ・・・戸惑い・・・またすぐに振り払った・・・・。
その様子を見たみずはは、心の底から驚いた。
白妙に恋慕の情を抱いている海神は、つねに積極的で、真っ直ぐに白妙にぶつかっていた。
なんど冷たくあしらわれても一向にかまわず、じゃれあうように向かっていたのだ。
それなのに、この男に対する海神の行動は、まるで自分の想いが成就できないことを恐れ、最初から目をそらしているようだった。
恋ではないのだ・・・・・。
海神がこの男に持つ感情は、もっと深い・・・・・。
そしてそれは、この得体の知れない男も同じだった。
激しく海神を求め、近づいていくくせに、心が触れそうになると目を逸らす・・・・・・。
鈍感なこの男は、海神の想いに全く気付いていないようだった。
海神と同じように・・・・・。
本当ならば、海神の想いの成就を祈りたいみずはだったが、この男はあまりに怪しすぎた。
海神に対する悪意はなく、むしろ彼を守ってくれるというのだから、今の不安な状況を考えれば願ったりかなったりではあるのだが・・・・・。
これは、本当に神妖なのだろうか・・・・・・。
みずはは、また一つ増えてしまった大きな問題にため息をついた。
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