4 / 266
海神 1※
しおりを挟む
私は神殿で海の気配に意識を研ぎ澄ませながら、物思いにふけっていた。
私には古くから恋煩っている者がいた。
白妙だ。
だが、私がどんなに想っても、白妙が振り向いてくれることはない。
あれには想い人がいるのだから・・・・・・。
それでも思いきれずにいたのは、白妙の想い人が亡き者になり、その傷の癒しになりたいと思ったからだった。
だが・・・・・。
私は深いため息をついた。
あれが求めるのはただ一人。
私ではだめなのだ。
「潮時・・・・・か。」
広い神殿の中、独りそうつぶやいた時、私の意識に強大な穢れの影が映った。
今まで感じたことのない、底の見えない相手に息をのむ。
私は印を組むと、すぐさま言霊を発した。
『開眼』
足元に巨大な目玉模様が描かれ、そこから無数の海鳥が現れる。
頭上を旋回する鳥の群れに、私は言伝を託した。
「私の身に何か起きた時は、皆みずはに従え。みずはには白妙に力を貸してもらうよう伝えろ。」
それだけ伝えると、私は腰の刀に話しかけた。
「お前は最期まで私に付き合ってもらうぞ。・・・・・すまないな。」
刀は嬉しそうにその刀身を白く輝かせた。
遠く離れたこの場所からでもわかる圧倒的な力に、心が恐怖で震えそうになりながら、私は深く息を吐きその場へと転移した。
相手を視覚に捕らえた瞬間。
私は先手をとって鋭く切りかかった。
だが、不意打ちの一撃は、まるで子供を相手にしているかのごとく、あっさりとかわされてしまった。
「やぁ。随分なごあいさつじゃないか。・・・ひどいなぁ。」
「・・・・・・。」
「おいおい。口がきけないのかい。それとも言葉が話せないとか?」
私はそれらの言葉に耳を貸さず、そのまま連続で切りつけた。
だが、顔面を切りつけた時、刃は紙切れのごとく、片手で易々と止められてしまった。
それでも私が諦めるわけにはいかない。
私は気取られぬよう、奴に向かいとっさに1つの術を放った。
「しつこいな。ボクを怒らせたいのかい?」
男の声音が冷たく変わった。
凍てつくような慈悲のない殺気が、ゾクリと身体を突き抜ける。
その時、一陣の風が吹き抜けた後ピタリと風がやんだ。
男の顔を隠す白銀の長い髪が流れ、表情があらわになる。
私は、殺される直前であることも忘れ、思わず目を見開いた。
透き通るような薄く青い、海色の瞳。
滑らかな白い肌。
妖艶につやめく形の良い唇。
すっきりと通った鼻筋。
年の頃は青年と呼ぶにふさわしい。
とても背が高く、190センチほどはありそうだ。
絹糸のような美しい銀の髪を無造作に束ね、青い組み紐を緩くたなびかせている。
青い衣をまとい海に浮かぶその姿は、恐ろしいまでに美しく、優雅だった。
「お前・・・・・殺すには惜しいな。」
青年は、私から刀を取り上げ遠くへ放り投げると、腰に手を回し抱き寄せてきた。
「何をする!」
「なんだ。しゃべれるじゃないか。・・・・・でも・・・今は、いらない。」
青年はそう言って、私の首筋に口づけた。
抗いようのない、強力な呪いに身体の力が抜けていく。
首筋から、耐えがたいほどの強烈な甘い痺れが広がり、全身を甘美な毒となって巡りはじめた。
「これで、君はボクから逃げられない。」
「お前。私に何をした……。」
青年の美しさと強さに魅入られないよう、私は視線を鋭くして向き合った。
「呪印を贈ったのさ。この呪印があれば、君の位置や今なにしてるかとか、ボクが望めばなんでもわかっちゃうんだよね。他にも色々できるけど・・・・・。」
青年の美しい唇から言葉があふれる度に、官能的な刺激が全身を駆け巡り、私は声を抑えるのに必死だった。
「つらいでしょー。僕の声を聴くたびに、君に強烈な甘い刺激が贈られるようにしたんだ。」
「外道が・・・・死ね。」
「無理無理ー。だってボク、強いもん。それよりさ、君、名前なんていうの?」
「・・・・・。」
「強情だね。でも残念・・・・・嫌いじゃないんだ。」
青年は「名を教えてくれ」としつこく囁き始めた。
全身を駆け巡る強烈な甘い痺れに、私はたまらず身もだえた。
息が荒く、高くなっていくのを抑えられない。
青年は少し微笑むと、名前を聞くのをやめ、ただただ柔らかく深い声でとりとめのない言葉を重ねてくる。
止まることのない快感の波にのまれ、自分が何をしているのかすら朧気になっていく。
膨れ上がったこの快感を堪えるのに必死で、吐き出したくて、楽になりたくて・・・・。
私は、懇願するように青年の美しい瞳を見つめた。
そんな私の頬と耳に、青年がふいに優しくふれてきた。
「っ・・・・・!」
青年が触れた瞬間、まるで電気が駆け巡るように、触れられた部分から耐えがたいほどの快楽の衝撃が走った。
もう、何も考えることなどできなかった。
打ち寄せる衝動に声を抑えることも忘れ、私は何度も身体を硬直させ、快楽の熱を吐き出した。
青年が、熱くなった私の身体を、包み込むように強く抱きしめてくる。
私はその背にきつくすがりつき、爪を立てた。
快楽の波が去り、放心している私の顎を上げ、彼はその艶やかな唇で口づけてきた。
滑らかな舌が、私の口の中を甘く柔らかく刺激する。
私は何をされているのか何も理解ができないまま、ただ彼に身体を預けていた。
私には古くから恋煩っている者がいた。
白妙だ。
だが、私がどんなに想っても、白妙が振り向いてくれることはない。
あれには想い人がいるのだから・・・・・・。
それでも思いきれずにいたのは、白妙の想い人が亡き者になり、その傷の癒しになりたいと思ったからだった。
だが・・・・・。
私は深いため息をついた。
あれが求めるのはただ一人。
私ではだめなのだ。
「潮時・・・・・か。」
広い神殿の中、独りそうつぶやいた時、私の意識に強大な穢れの影が映った。
今まで感じたことのない、底の見えない相手に息をのむ。
私は印を組むと、すぐさま言霊を発した。
『開眼』
足元に巨大な目玉模様が描かれ、そこから無数の海鳥が現れる。
頭上を旋回する鳥の群れに、私は言伝を託した。
「私の身に何か起きた時は、皆みずはに従え。みずはには白妙に力を貸してもらうよう伝えろ。」
それだけ伝えると、私は腰の刀に話しかけた。
「お前は最期まで私に付き合ってもらうぞ。・・・・・すまないな。」
刀は嬉しそうにその刀身を白く輝かせた。
遠く離れたこの場所からでもわかる圧倒的な力に、心が恐怖で震えそうになりながら、私は深く息を吐きその場へと転移した。
相手を視覚に捕らえた瞬間。
私は先手をとって鋭く切りかかった。
だが、不意打ちの一撃は、まるで子供を相手にしているかのごとく、あっさりとかわされてしまった。
「やぁ。随分なごあいさつじゃないか。・・・ひどいなぁ。」
「・・・・・・。」
「おいおい。口がきけないのかい。それとも言葉が話せないとか?」
私はそれらの言葉に耳を貸さず、そのまま連続で切りつけた。
だが、顔面を切りつけた時、刃は紙切れのごとく、片手で易々と止められてしまった。
それでも私が諦めるわけにはいかない。
私は気取られぬよう、奴に向かいとっさに1つの術を放った。
「しつこいな。ボクを怒らせたいのかい?」
男の声音が冷たく変わった。
凍てつくような慈悲のない殺気が、ゾクリと身体を突き抜ける。
その時、一陣の風が吹き抜けた後ピタリと風がやんだ。
男の顔を隠す白銀の長い髪が流れ、表情があらわになる。
私は、殺される直前であることも忘れ、思わず目を見開いた。
透き通るような薄く青い、海色の瞳。
滑らかな白い肌。
妖艶につやめく形の良い唇。
すっきりと通った鼻筋。
年の頃は青年と呼ぶにふさわしい。
とても背が高く、190センチほどはありそうだ。
絹糸のような美しい銀の髪を無造作に束ね、青い組み紐を緩くたなびかせている。
青い衣をまとい海に浮かぶその姿は、恐ろしいまでに美しく、優雅だった。
「お前・・・・・殺すには惜しいな。」
青年は、私から刀を取り上げ遠くへ放り投げると、腰に手を回し抱き寄せてきた。
「何をする!」
「なんだ。しゃべれるじゃないか。・・・・・でも・・・今は、いらない。」
青年はそう言って、私の首筋に口づけた。
抗いようのない、強力な呪いに身体の力が抜けていく。
首筋から、耐えがたいほどの強烈な甘い痺れが広がり、全身を甘美な毒となって巡りはじめた。
「これで、君はボクから逃げられない。」
「お前。私に何をした……。」
青年の美しさと強さに魅入られないよう、私は視線を鋭くして向き合った。
「呪印を贈ったのさ。この呪印があれば、君の位置や今なにしてるかとか、ボクが望めばなんでもわかっちゃうんだよね。他にも色々できるけど・・・・・。」
青年の美しい唇から言葉があふれる度に、官能的な刺激が全身を駆け巡り、私は声を抑えるのに必死だった。
「つらいでしょー。僕の声を聴くたびに、君に強烈な甘い刺激が贈られるようにしたんだ。」
「外道が・・・・死ね。」
「無理無理ー。だってボク、強いもん。それよりさ、君、名前なんていうの?」
「・・・・・。」
「強情だね。でも残念・・・・・嫌いじゃないんだ。」
青年は「名を教えてくれ」としつこく囁き始めた。
全身を駆け巡る強烈な甘い痺れに、私はたまらず身もだえた。
息が荒く、高くなっていくのを抑えられない。
青年は少し微笑むと、名前を聞くのをやめ、ただただ柔らかく深い声でとりとめのない言葉を重ねてくる。
止まることのない快感の波にのまれ、自分が何をしているのかすら朧気になっていく。
膨れ上がったこの快感を堪えるのに必死で、吐き出したくて、楽になりたくて・・・・。
私は、懇願するように青年の美しい瞳を見つめた。
そんな私の頬と耳に、青年がふいに優しくふれてきた。
「っ・・・・・!」
青年が触れた瞬間、まるで電気が駆け巡るように、触れられた部分から耐えがたいほどの快楽の衝撃が走った。
もう、何も考えることなどできなかった。
打ち寄せる衝動に声を抑えることも忘れ、私は何度も身体を硬直させ、快楽の熱を吐き出した。
青年が、熱くなった私の身体を、包み込むように強く抱きしめてくる。
私はその背にきつくすがりつき、爪を立てた。
快楽の波が去り、放心している私の顎を上げ、彼はその艶やかな唇で口づけてきた。
滑らかな舌が、私の口の中を甘く柔らかく刺激する。
私は何をされているのか何も理解ができないまま、ただ彼に身体を預けていた。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集
あかさたな!
BL
全話独立したお話です。
溺愛前提のラブラブ感と
ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。
いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を!
【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】
------------------
【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。
同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集]
等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。
ありがとうございました。
引き続き応援いただけると幸いです。】
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。
丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。
イケメン青年×オッサン。
リクエストをくださった棗様に捧げます!
【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる