双凶の妖鬼 蒼 ～再逢～

きっかけ

　一刻ほど前、ボクは冥府にある照射殿の屋根に腰掛け、光に照らされながら、放射線状に広がる華やかな石段通りを眺めていた。

　闇のイメージしかない冥府だが、全てが暗いわけじゃない。
　ボクお気に入りの照射殿の建つ場所は、あふれ出す光に照らされ、いつも眩しいほどに明るかった。

　どのくらい前のことだったか。
　突然堕ちてきたの1体の妖鬼によって、鬼界は他の妖鬼たちにとっては、少しだけ過ごしにくい場所になったみたいだった。

　彼は妖鬼なのに、同じ妖鬼を食す偏食家だったんだ。
　地に群れる妖鬼たちは、絶好の的になっていた。

　常にフラフラと放浪してるボクみたいな奴には、全く関係のないことだったけど。

　黒衣を身にまとったその妖鬼は、圧倒的なまでの力で妖鬼の群れを殲滅し、鬼界に溢れさせた鬼の魂をたらふく喰らうと、再び姿を消してしまった。

　それはホントに一瞬の出来事だったんだ。

　あれはすさまじかった。
　多分、彼はボクよりもかなり強いんじゃないかな。
　今の冥府で最強なのは、彼で間違いないだろう。

　ボクは、立ち上がると気の赴くまま、空へと駆け上がった。

　最近になって黒衣の妖鬼が再び現れ、神妖界へ昇ったらしいという話を耳にしたんだ。
　彼に触発されたボクは、ようやく、久しぶりに他の世界を見てみる気になった。

　海・・・しばらく見てなかったな・・・・・。

　潮の香りと鮮やかな深い青が頭にうかび、海へと行き先を定めたボクは転移したのだった･････。