130 / 217
第六部 ざまぁ編
ブサ猫令嬢はただの悪役令嬢ではない⑤
しおりを挟む
「ジゼル・ハイマンが犯せし罪……二つ、民衆に飴玉と偽って宝石を配り、見返りとして不当な利権や支持を集めたばかりか、王太子殿下とアーメンガート様の事実無根の悪評を流すよう扇動し、王家の権威や品位を著しく貶めたこと」
「はあぁぁ!?」
予想斜め上な展開に、外面をつくろうのも忘れて素の声を上げた。
恒例の飴ちゃん攻撃は賄賂の意味合いも無きにしも非ずなので、純粋な善意だったとは言えないものの、まさかただの飴玉を宝石だと言われる日が来るとは思いもしなかった。
そもそも、あのカップルが世間から快く思われていない……というか人気がないのは、これまで社交や政治の世界にかまけて民衆との触れ合いをしてこなかったからで、ほぼ自業自得だ。
彼らを差し置いてジゼルがあれこれやらかしたこともあるけど、別に貶めたいなんて考えたことはないし、責任転嫁もいいところだ。
ジゼルが彼らのネガティブキャンペーンをする必然性がないし、命を狙っている相手の悪口をわざわざ民衆にばらまくなんて、自分が下手人ですと言いふらしているようなもの。
あまり賢くはない自負はあるが、そこまで阿呆だと思われていたのか。
そりゃあゲームに登場する本物のジゼルだったら、自ら墓穴を掘るタイプなのでありえない話ではないが。
怒りよりも呆れの方が勝ったせいか脱力感に苛まれるのと同時に、ツッコミどころが多すぎてどこから切り崩すべきか途方に暮れてしまう。
そんなまさに『呆れてものが言えない』状態のジゼルを、図星を突かれてひるんだと勘違いしたミリアルドは、怜悧な王子様顔に悪役じみた嗜虐的な笑みを刻むと、畳みかけるようにニックに新たな証人を呼ばせた。
(メインヒーローがどんどん壊れていくなぁ……いろんな意味で)
随分前世の記憶も薄れてきたので、元のキャラがどんな感じだったか思い出せないが、断罪シーンでもあんな顔はしてなかったはずだ。というか、メインヒーローがしちゃいけない顔である。
この国大丈夫か……などと憂国の士を気取っている場合ではない。
ジゼルの思考が明後日の方に行っている間に、やはり身元を隠すためか給仕係の制服を着て仮面を被った、年齢も背格好もまちまちな男女五人がやってきて、壇上の前に並べられる。
「こちらは王都に居を構える大店の商家に雇われ、重要な仕事を任されている方々です。先ほど述べたジゼル・ハイマンの仕掛けた巧妙かつ卑劣な罠により悪の手先にさせられ、忠誠を誓った主人の不利益になることを強要されていました。彼らが己の罪の重さに耐えきれず自ら出頭して供述してくれたことで、かの者の悪辣非道な手口が明らかになったのです。そうですね、皆様?」
「は、はい……単なる飴玉だと思って疑いもなく受け取って……でも、よく見たら飴玉のように細工された宝石で……」
「もちろん、すぐに返そうとしたんですよ? で、でも、無理矢理押し付けてきて返せなかったんです」
「しかもそのあと、盗人だと疑いをかけられて……役人に突き出されたくなかったらおとなしく言うことを聞けと……お、脅されて……」
恐縮して受け取らないでおこうとする人に「まあまあ、そう遠慮せんと」とか言いながらグイグイ迫っただけに、ちょっと言い返せないところはあるが、本気で無理強いしたことはないし、飴玉の代わりに宝石を包んだことも決してない。
それに、取引先の重役ポストなら大体顔を覚えている。
仮面さえ剥げばでっち上げの偽者だと証明してやるのに……と苦々しく思いつつも、ここでキャンキャン喚いたところでいらぬ墓穴を掘るだけ。
一旦静観に徹し、反撃は最後まで相手の手の内を見てからだ。
「はあぁぁ!?」
予想斜め上な展開に、外面をつくろうのも忘れて素の声を上げた。
恒例の飴ちゃん攻撃は賄賂の意味合いも無きにしも非ずなので、純粋な善意だったとは言えないものの、まさかただの飴玉を宝石だと言われる日が来るとは思いもしなかった。
そもそも、あのカップルが世間から快く思われていない……というか人気がないのは、これまで社交や政治の世界にかまけて民衆との触れ合いをしてこなかったからで、ほぼ自業自得だ。
彼らを差し置いてジゼルがあれこれやらかしたこともあるけど、別に貶めたいなんて考えたことはないし、責任転嫁もいいところだ。
ジゼルが彼らのネガティブキャンペーンをする必然性がないし、命を狙っている相手の悪口をわざわざ民衆にばらまくなんて、自分が下手人ですと言いふらしているようなもの。
あまり賢くはない自負はあるが、そこまで阿呆だと思われていたのか。
そりゃあゲームに登場する本物のジゼルだったら、自ら墓穴を掘るタイプなのでありえない話ではないが。
怒りよりも呆れの方が勝ったせいか脱力感に苛まれるのと同時に、ツッコミどころが多すぎてどこから切り崩すべきか途方に暮れてしまう。
そんなまさに『呆れてものが言えない』状態のジゼルを、図星を突かれてひるんだと勘違いしたミリアルドは、怜悧な王子様顔に悪役じみた嗜虐的な笑みを刻むと、畳みかけるようにニックに新たな証人を呼ばせた。
(メインヒーローがどんどん壊れていくなぁ……いろんな意味で)
随分前世の記憶も薄れてきたので、元のキャラがどんな感じだったか思い出せないが、断罪シーンでもあんな顔はしてなかったはずだ。というか、メインヒーローがしちゃいけない顔である。
この国大丈夫か……などと憂国の士を気取っている場合ではない。
ジゼルの思考が明後日の方に行っている間に、やはり身元を隠すためか給仕係の制服を着て仮面を被った、年齢も背格好もまちまちな男女五人がやってきて、壇上の前に並べられる。
「こちらは王都に居を構える大店の商家に雇われ、重要な仕事を任されている方々です。先ほど述べたジゼル・ハイマンの仕掛けた巧妙かつ卑劣な罠により悪の手先にさせられ、忠誠を誓った主人の不利益になることを強要されていました。彼らが己の罪の重さに耐えきれず自ら出頭して供述してくれたことで、かの者の悪辣非道な手口が明らかになったのです。そうですね、皆様?」
「は、はい……単なる飴玉だと思って疑いもなく受け取って……でも、よく見たら飴玉のように細工された宝石で……」
「もちろん、すぐに返そうとしたんですよ? で、でも、無理矢理押し付けてきて返せなかったんです」
「しかもそのあと、盗人だと疑いをかけられて……役人に突き出されたくなかったらおとなしく言うことを聞けと……お、脅されて……」
恐縮して受け取らないでおこうとする人に「まあまあ、そう遠慮せんと」とか言いながらグイグイ迫っただけに、ちょっと言い返せないところはあるが、本気で無理強いしたことはないし、飴玉の代わりに宝石を包んだことも決してない。
それに、取引先の重役ポストなら大体顔を覚えている。
仮面さえ剥げばでっち上げの偽者だと証明してやるのに……と苦々しく思いつつも、ここでキャンキャン喚いたところでいらぬ墓穴を掘るだけ。
一旦静観に徹し、反撃は最後まで相手の手の内を見てからだ。
1
お気に入りに追加
2,286
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。