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第六部 ざまぁ編
ブサ猫令嬢、モデルになる!?②
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権力におもねる奴など興味はないと一刀両断した上で飛び出した懸念材料は、とんでもなくくだらないように見えて、モノマネ対象としては決して無視できない大事な要素である。
大物芸能人が面白おかしくモノマネされても笑って受け入れているのは、自分のキャラを真似するまで愛してくれていることや、完全コピーしようと努力する姿勢が美しいからだ、とジゼルは思っている。
つまり、モノマネとは両者の間に確かなリスペクトがあって、初めて成立する芸なのである。
別に敬意を表しろとか著作権よこせとか言わないが、真似する限りは上っ面だけ似せるだけではなく、全力でやってもらわないと困る。
特に大阪弁はちゃんと再現してもらわないと、こっちまで恥をかくことになる。
モノマネ芸人が貧相だと本物まで貧相に見えてしまうのと同じだ。
(大阪弁に限らず、標準語圏のお人のなんちゃって方言とか、イントネーションが微妙にずれてて気持ち悪いねん。聞くに堪えんわ……)
ノリがいいのは結構だが、どうも地元文化を馬鹿にされている感じがして鼻につくのも癪だ。
まあ、八割方一方的なひがみというか、関ヶ原の合戦以降大阪人の潜在意識に刷り込まれた東京コンプレックスなので、偉そうに言えるものでもないが。
……という地方民あるあるはともかく、ジゼルの知り合いでもない人間が大阪弁をきちんと監修できるわけがない。
「確かに、お嬢様の訛りって独特ですよね。長年一緒にいる私もいきなり真似しろと言われても、なかなか難しいです」
「何年もこの調子やのに、誰も伝染せぇへんのも珍しいけどな……」
テッドがさもありなんという様子でうなずくのに、妙に物悲しくなる。
誰か一人くらい訛ってくれてもいいのに。というか、生まれたばかりのまっさらな三つ子に、大阪弁でベラベラしゃべりかけているというのに、ちっともその気配もないのはどうなんだろう。
もちろん、乙女ゲーム世界に大阪弁を操る貴族などジゼル一人で十分だし、甥っ子姪っ子の将来を考えれば伝染しないのはいいことではあるが……これがシナリオの強制力なのか。
いやまあ、東京のど真ん中に大阪人が一人いたところで、周囲が大阪弁に染まるわけがないので自明の理だが。
「とにかく、現場を見ぃひんことにはなんとも言えんな。副支配人さんに頼んで、稽古場見学させてもらおか……ふふふ、ウチを敵に回したことを後悔するとええわ!」
敵陣に自ら突っ込んで荒らしに行く算段をしながら、悪役ぶったセリフをのたまうジゼルに、テッドは笑いをこらえながらお代わりのお茶を注いだ。
大物芸能人が面白おかしくモノマネされても笑って受け入れているのは、自分のキャラを真似するまで愛してくれていることや、完全コピーしようと努力する姿勢が美しいからだ、とジゼルは思っている。
つまり、モノマネとは両者の間に確かなリスペクトがあって、初めて成立する芸なのである。
別に敬意を表しろとか著作権よこせとか言わないが、真似する限りは上っ面だけ似せるだけではなく、全力でやってもらわないと困る。
特に大阪弁はちゃんと再現してもらわないと、こっちまで恥をかくことになる。
モノマネ芸人が貧相だと本物まで貧相に見えてしまうのと同じだ。
(大阪弁に限らず、標準語圏のお人のなんちゃって方言とか、イントネーションが微妙にずれてて気持ち悪いねん。聞くに堪えんわ……)
ノリがいいのは結構だが、どうも地元文化を馬鹿にされている感じがして鼻につくのも癪だ。
まあ、八割方一方的なひがみというか、関ヶ原の合戦以降大阪人の潜在意識に刷り込まれた東京コンプレックスなので、偉そうに言えるものでもないが。
……という地方民あるあるはともかく、ジゼルの知り合いでもない人間が大阪弁をきちんと監修できるわけがない。
「確かに、お嬢様の訛りって独特ですよね。長年一緒にいる私もいきなり真似しろと言われても、なかなか難しいです」
「何年もこの調子やのに、誰も伝染せぇへんのも珍しいけどな……」
テッドがさもありなんという様子でうなずくのに、妙に物悲しくなる。
誰か一人くらい訛ってくれてもいいのに。というか、生まれたばかりのまっさらな三つ子に、大阪弁でベラベラしゃべりかけているというのに、ちっともその気配もないのはどうなんだろう。
もちろん、乙女ゲーム世界に大阪弁を操る貴族などジゼル一人で十分だし、甥っ子姪っ子の将来を考えれば伝染しないのはいいことではあるが……これがシナリオの強制力なのか。
いやまあ、東京のど真ん中に大阪人が一人いたところで、周囲が大阪弁に染まるわけがないので自明の理だが。
「とにかく、現場を見ぃひんことにはなんとも言えんな。副支配人さんに頼んで、稽古場見学させてもらおか……ふふふ、ウチを敵に回したことを後悔するとええわ!」
敵陣に自ら突っ込んで荒らしに行く算段をしながら、悪役ぶったセリフをのたまうジゼルに、テッドは笑いをこらえながらお代わりのお茶を注いだ。
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