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2章 夏

下敷き

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暑い・・・。なんで、こんなに暑いのっ!?
プレハブ校舎の中で、由衣は、叫んでいた。汗がうっとうしいほど、ポロシャツに
ぴったりと張り付く。スカートの下の足も、汗でじっとりと濡れていた。
顔を下敷きで扇ぐがそれで、暑さが和らぐことはあまりない。だけど、時折少しだけ
風が涼しくなるため、由衣は扇ぐのをやめなかった。
「うわっ!びっくりした・・・」
と、急に強風になった。思わず声を上げ、横を向くと菜津乃がいた。
手には、下敷きが。由衣が、それで扇いだのか。そう思っていると、菜津乃は、
両手で下敷きを持ち、勢いよく扇いだ。同時に由衣の顔には風が吹きまくり、汗が
冷たくなった。菜津乃が扇ぐのをやめる頃には、由衣の体はさっきまでの暑さは
どこに行ったのかと思うほど、涼しくなっていた。
「涼しい~!じゃ、菜津乃にも・・・」
由衣は、持っていた下敷きを、思い切り扇いだ。よほど風が吹いたのだろう。
菜津乃が目をぎゅっとつぶった。
「涼しー!わぁぁぁー!」
そして、扇風機の前で言うように、風に向かって声を飛ばす。だけど、風が強くない
ため、声は響かない。それでも、菜津乃があーと言い続けるから、由衣は笑ってしまった。
「ちょ、ちょっと菜津乃・・あはは。声が面白いんだけど・・・」
「え?あぁぁぁぁぁー。わぁぁぁぁー。あはは!確かに・・」
二人であははと笑い出す。扇風機があれば、もっと面白い声なのかもしれないが、
今はこれだけでも、十分面白かった。一度笑い出すと、止まらなくて休み時間が
終わるまで、ずっと笑っていた。
今度、扇風機の前で私もしてみようかな。
チャイムが鳴り、自分の席に着くとき、由衣はそう思った。
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