楽しい

アメ

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「真子ちゃん、帰ろ!」
「うん、いいよ」
仲良しな二人が教室から出て、教室はしんと静まり返った。
私は一人帰る支度をし、一番最後に教室を後にした。

私には、友達などいない。勉強もそこそこ。運動も、おしゃれだって。
毎日が、なにもなく楽しくなかった。そんな色のない世界が、ある日突然鮮やかにな
った。きっかけは、ささいなこと。先生が宿題で、
「今日の宿題は、読書感想文。ちゃんと本を読んで、書いて来るんだぞ」
私はそれまで、好きなことなど一つもなかった。でもその日、本を読み、物語の世界
に引き込まれた。一度読んでしまうと、おもしろくて、何冊も何冊も読んだ。
おかげで、次の日宿題を出したときは、
「山本、すごいな。山本の思ったことが素直に書けている」
と褒められた。放課後には、図書室に行き、毎日のように本を借りた。
楽しくない日でも、本を読めばそんなものは、どこかに吹き飛んだ。
物語の中では、私は主人公。楽しい日を過ごしたり、冒険したり、悲しんだり。
本の中では、なにが起きても自由で、自分もこんな作品が作れたらな。
そう思った。

いつものように、図書室に行くと、カウンターに見慣れた顔が。
「あの、すみません。いつも来てる方ですよね?」
「は、はい」
「本が好きなのが、私から見てわかるんですけど・・・。小説を書いてみてはどうで
すか?自分の好きな物語が、自分の手でできますよ」
初めて声をかけられ、驚いたが、小説を書くという言葉に引っ張られた。
家に帰えり、机に向かって話を書いてみた。すると、今までたくさんの本を読んでき
たからなのか、頭でこんな話が書きたいなと思ったことが、すぐに文章にできた。
「楽しい・・・」
読書をするのも楽しいけど、物語を書いてみるというのも楽しかった。
私は、楽しむなんてなくてもいいと思ってたけど、やっぱりないといけないものだ!
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