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ロイと楽しく話していたら、あっという間に目的地であるリエルの執務室についてしまった。

入る為に扉をノックしようとしたら、中から扉が開けられた。

「お帰りなさい、カイト兄上」

開けてくれたのはリエルだった。
急に開けられたものだから、凄く驚いてしまった。

「どうして来たと分かった?」

俺は執務室に誰かが近づいて来ても一回も気づいたことはなかった。リエルも今まで一切気づいた素振りを見せたことがなかった。

「カイト兄上達の楽しそうな話し声が聞こえてきたからね」

執務室は壁が厚くて、周りの音など全く聞こえなかった。お前は耳までいいのか?それとも俺らの声がうるさかったのか…いや、声の大きさはいつも通りだったな。

「そうか…」


「そういえば、カイト兄上の裏にいる男は誰?」

こらー、リエル。睨まないの!怪しい奴じゃないから…


「紹介しよう。今日から俺の従者となったロイだ!」


どうだ、可愛いだろう?



「…なんか……普通」

「こらっ、ベルン!申し訳ございません」

ベルン、お前…そうか。お前らはまだ会話してないから、この可愛さが分からないんだな。

「別に構いませんよ。僕は気にしません」

まるで言い慣れたような言葉。きっと今までも沢山言われてきたのだろう。



この魔国は、貴族が第一から第十五序列まである。前までは第十六まであったのだ。だが、リエルの母である王妃が何か問題を起こした為、その第三序列の家は無くなってしまったらしい。


ロイが生まれたカガルバ家は第五序列。
だが、彼は現当主が孕ませて生まれた子らしい。彼の母は周りからの嫌がらせに耐えられず自殺。俺みたいに周りが敵だらけの中で過ごしてきたのだろう。嫌がらせも受けただろうし、暴言も吐かれたと思う。


もう二度とそんな思いはさせたくないと思った。


「ベルン、ロイに謝れ。言っていいこと
と悪いことがある」

このベルンの思ったことがすぐに口から出ると言うのは長所でもあるが短所でもある。今回は悪い方だ。

「カイト様。俺は確かに平民の出だけど、権限は貴方と同じくらい持ってるよ?確かに失礼かもだけど、こんくらいじゃ謝りたくない」

確かに、ベルンは異能者だから王族の俺と同じくらい権限を持ってる。だから俺が謝れと言って、聞かなくても別にいいのだ。
だけどお前は大切なことを忘れてないか?

「そうだ。お前は俺に従う必要はない。だが、お前はリエルの従者だろう?」

従者、それも次期魔王であるリエルのだ。従者であるベルンが言った言葉はその主であるリエルの言葉として捉えられることもある。

しばらく、考えてたベルンは理解したのかハッという顔をした。

「ごめんなさい、ロイ」

「別にいいですよ、ベルン様」

謝れるようになっただけで一歩前進だ。




「ありがとう、カイト兄上。ロイも私の従者が申し訳ない。こんな奴だが、従者歴は長い。何か困ったことがあったら聞くといいだろう。カイト兄上のことをよろしく」

ベルンがこんなので育ったのはリエルが甘すぎるのもある気がする。

「勿論です」


なんだろうな。この2人の間にバチバチ火花が見える気がする。




「あと、俺の執務室が完成したらしい。明日からはそちらでやることになる。今まで世話になったな」


本当に世話になりっぱなしだった。何も分からない俺に一から教えてくれたのだ。感謝の気持ちでいっぱいだ。


「そうか、寂しくなるな。じゃあ、今日は一緒に執務をする最後の日だね…」

そうだな。確かに明日からはリエルに会う機会が減るだろう。寂しいかもしれない。


「カイト兄上、おいで?」

急に自分の椅子に座りだしたと思ったら、腕を広げた。俺は嫌だぞ?お前の膝の上など二度と登るか!


「カイト様、今大人しく従っておかないと明日大変なことになりますよ」

バラン、そんな恐ろしいことを言うな。ぐっ、仕方ない。明日の平和のためだ。今日だけだからな!



明日もカイト兄上不足と言って、昼食をリエルの膝の上に乗ることになろうとは思っていなかった。
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