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333 Nice to meet you
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狭苦しいバンの荷台部分に、ぎゅうぎゅうと若者たちが詰まっている。肩はぶつかるほどで、中腰のような姿勢で全員車両右側を向いていた。椅子は全て取られ、中に医療用ベッドを入れて運搬できるよう改造されたものだ。ナンバープレート部分には、ロシアのものの上から日本のプレートが留められている。
チヨ子は、胸に抱いたテディベアをぎゅっと抱きしめ直した。ぴくりとも動かず、普段より少し軽い。
車内で見ている映像の中では、中年から壮年といった年頃の警察官が四名、ディミトリたちロシア人亡命者を警察車両で連行していくのが見える。脳波コン未手術者の朝比奈美空に合わせ、モニターに表示していた。映像は少々乱れているが、天地はひっくり返っておらず位置関係もわかりやすい。
公民館の上空から撮影されている映像を見るに、二階の窓ガラスが一階の植木近くに散乱していて危険だ。正面玄関は変わりなく、開け放たれたガラスの観音開きドアから一列に並んだディミトリたちが大人しく出てきている。
「暴れてないなぁ」
「意外ー」
チヨ子と陽太郎がふむふむと感想を言うが、滋行や阿国からの返事はない。脳波コンをつたって何やら話し合っているらしい。陽太郎が除外されているのは、彼の役目が別にあるからだ。
「アイツらを監視し、助けに来るベルベットの部下を追跡……可能なら『パン』を仕込んでベルベットの居場所を特定」
「ヨウタロさん、めっちゃ責任重大じゃん」
「それな」
手元で弄っているシャーレには、黒ネンドとチヨ子たちが呼んでいたサイバーアメーバがごく微量だが入っている。陽太郎はこの微量黒ネンドの操作に専念し、中に突入する部隊とは別行動を取る予定となっていた。
陽太郎以外の全員が揃いで与えられた服は、黒と白のモザイクに時折シアンやマゼンタのパターンが混ざっている特殊なツナギだ。人間の目には何も感じないが、警察が使うパブリックシギント・カメラには人間に見えなくなるパターンだと八木が説明していた。犯罪ではないかとチヨ子は心配になる。違法な商品はそうと知っているユーザーも罪に問われると学校の授業で習ったため、気付かぬふりが一番だと目を逸らした。
日電スタッフの一人が運転席に座り、ヘッドセットを被って後ろを振り返って頷いた。後頭部から生えているケーブルは車内の大型機材と繋がっており、どうやらネットワークを介して車外のドローン群をコントロールできるよう強化したモデルのようだった。
残り三名の日電スタッフも、それぞれ同じような機材でドローンの操作を行なっている。映像はすでに動いているうちの一台から送られてくるもので、以前滋行たちが操作していたものと違い無線式の軽量タイプだ。武装などは付いていない。
「いいか、お巡りさんがアイツらに注意が向いてる今がチャンスだ。三橋を30分で起こして、車椅子に乗せて、逃げる!」
「了解!」
「りょうかーい」
日電スタッフは全員二十から三十代前半だ。若い輪の中で見劣りしない美貌の朝比奈美空も、お揃いのツナギで靴の紐を締め直している。リュックを背負っており、美空たち脳波コンユーザーが抱えきれない機材やケーブル類を持ってくれた。
レモンイエローの全身スーツを着ているセレブ・阿国は無言で宙を睨んでいる。
どこかに連絡しているのか、視線がたまに右へ左へと忙しなく動いた。三人以上話しかける相手がいる場合に任意で会話相手を定める際の脳波コンユーザーの癖の一種だ。話に夢中で、突入直前だと気付いていない。
カメラの映像内でバタンとパトカーのドアを閉める音がし、白と黒と赤のカラーが画面から見切れる。
「……よし。警察の応援か、もしくは三橋を回収に来るベルベット部隊、はたまた警察が呼んでりゃ救急車が先か……時間との勝負だ! 行くぞ!」
「おー!」
バンのハッチドアを開き、滋行や美空が飛び出す。
「あっ、ちょっと! もうですの!?」
「遅いよぉ。お先!」
阿国が慌てている。チヨ子もミルキィちゃんを抱えてジャンプで飛び出した。
正面玄関前のガラスが散っている部分には、手早い警察官が置いたカラーコーンの侵入禁止区割りがされている。建物内部へ続く玄関口は施錠されていないが、警備の意味を込めたであろうパブリックシギント・カメラが三脚で置かれてある。ドローンタイプは首都圏近隣三県と大阪だけだ。民間の防犯カメラと、それでは賄い切れないエリアに置かれる移動式の360度カメラのパブシギがうまく治安維持を担っている。地元民はパブシギのボディに配色された警察カラーリングを見れば入ってこないだろう。
「すごい、全然探知されてない」
<服もそうだが、一応外からカメラを少しいじってある。映像のログは残らんさ>
バンから支援する日電スタッフの自慢げな声に、チヨ子たちは背中を押される形で公民館へと入っていく。
階段を登ってすぐ見えてくる景色は、夜逃げしたIT系オフィスのようだった。
「いた!」
朝比奈がすぐに壁際の大きなベッドへ駆け寄る。よく耳を澄ませると、チヨ子たちが昭和島の倉庫で毎日聞いていた医療機器の音に似たものが聞こえた。心拍のリズムだとすれば落ち着いていて危険はない。すでに二台、モニター部分に軽量型ドローンが取りついている。
<看護師さんがリアタイでモニタしてるが、血圧があんま良くないっぽい。ちょっと急げ>
「ちょっと、焦らせるようなこと言うなですの!」
久仁子がレモンイエローのヘルメット越しにくぐもった声をあげた。
手筈通り、朝比奈とチヨ子は有線回線の接続を最優先に動く。ドローン群と三橋のベッドをつなげる朝比奈と、抱えているミルキィの腹から出ているケーブルを三橋脳波コンに直で差し込むチヨ子、そのミルキィからさらに別のコードで繋がっているのは滋行だ。手には、八木から託されたカマボコ型の機械がある。
「接続できたぞ、ギャンさん」
<おう、後は任せな>
「っていうかぁ、ミルキィちゃんの中にぜーんぶ入れてきたんだから。他にやることなんてある?」
<そうそう、メインはクマチャンだ。違いねぇ。だが誰がどう何をしてくるかわかんねーっしょ? なー、ベルベット?>
つくばにいる八木が、通信越しにチヨ子の知らない人間のことを呼んだ。ベルベット。朝比奈から聞いている、大柄で派手なミンクコートを着た元男性かと思われる女性(確証は無し)だ。クセの強そうな人だという印象だが、半分恋愛相手を探しに来ているようなモチベーションのチヨ子にとっては対象外になるため興味が薄い。
<やっぱり優秀じゃない。なんて呼べばいいかしら? ギャンちゃん?>
「うわっ」
「べ、ベルベット!?」
<アハ>
「す、すげぇ! 本物!」
ゴロリと床に転がっているドローンの一台から聞こえる。スピーカーの音量は大きいが聞き取りにくい。
「こいつはこっちでいただきますの! 渡しませんのよ、ベルベットォ!」
<うーん、渡したくなんかないわよそりゃあ。どんだけ大変だったと思ってんのよぉー。ねぇ、朝比奈ちゃん?>
「龍田さん……」
<オツカレ様。報酬、お家のポストに入れといたわよ>
「そんなことより、弓子さんたちは!?」
<無事よぉ勿論。拉致られないよう守ってたくらいよ?>
「ええ、ええ。存じてますの。ですがベルベット、秘密主義は嫌われますの。このままじゃ弓子さまを利用してるって分かってますでしょう? 共有すべきことは伝えて、ちゃんと協力しあって……」
<それ、阿国チャンが言う? うっふふ、ネットストーカーがこうまで変わるとはねぇ>
「変わってませんの。ワタクシ、何も信じませんの。ガルド様以外何も。ここの子たちも、向こうの輩も、アナタも」
ベルベットと阿国が睨み合う。手を止めずにケーブルを伸ばしながら朝比奈が叫ぶ。
「そうよ、龍田! 黙ってたことが多すぎ! 信用無くして一人になったのはアンタだから!」
<うわー、耳が痛ーい>
不毛でよく分からない会話だ。チヨ子はミルキィを抱えてベッドに集中した。眠る三橋はたまに何か喋っている。唇は少しカサついているが想像したほどやつれてはいない。
ミルキィと接続してから、頭を覆う金属ボウルのようなヘッドセットのファン音が大きくなった。滋行の手にあるカマボコはインジケータをチカチカ言わせており、あまり聞いたことのない機械の音をあげている。コマのような回転系の音だ。
「三橋を取り返したければ、何もかも白状するんですの! ガルド様のためになるなら手だって貸してやってもいいですの!」
<おおっとォ、そりゃ聞き捨てならんねー。ボスの本懐は田岡さんのログアウト。ガルド氏が誰が知らんがなァ、田岡さんのログアウトに必要なデータは渡さねぇよ!>
<彼が第一号なのよね? データねぇ、正直欲しいけどぉ……教授に貰うから要らなぁーい>
<ひゃっは! ひひひ! ばーかばーか!>
<にゃ、にゃにおー!?>
<白亜教授だろぉ? あんにゃろーめ、言われるがまま当てたら三橋の頭が吹っ飛ぶとこだったぜ!>
<ヤダァー! なぁに教授! どういうことー!? ちょ……無視ィ!?>
<キィヒヒ! ざまーみろー! ぜってーやらねぇ。三橋は俺らンだ!>
<ちょっと待ってェ! きょーじゅ、教授も知りたいって! ねぇーソースコードうつさせてー>
<い、や、だ!!>
<お金なら払うわ!>
<三橋から手を引くって言え!>
<アラマ、そんなのでいいの? どうせ諦める気でいたのよね>
「えっ」
「えっ」
焦りながら必死に三橋周りで格闘していた滋行たちが一斉に顔を上げる。
「八木、八木、ガルド様も! ガルド様のお身柄がどこか言ったらコード渡すって言えですの!」
<それはできないわ、阿国チャン>
「えええーん!」
<ガルドチャンはね、もうアタシの手を離れたわ>
「なぁんですって!? 誰ですの!? ねぇ! 言えですの!」
<えー? うーん、ディンクロンに聞くといいわ>
「アイツやっぱ黒ですの!?」
<違うわよぉ。でもそうね、そろそろ彼の保護者に迎えに来てもらわないと>
「……奴の子どもってことですの!?」
「あっはっは! 惜しい!」
<惜しい!?>
「惜しいってことは何、え? 隠し子!?」
<ボスの隠し子!?>
「ディンクロンの!? え!?」
現場は賑やかに大混乱だった。
チヨ子は、胸に抱いたテディベアをぎゅっと抱きしめ直した。ぴくりとも動かず、普段より少し軽い。
車内で見ている映像の中では、中年から壮年といった年頃の警察官が四名、ディミトリたちロシア人亡命者を警察車両で連行していくのが見える。脳波コン未手術者の朝比奈美空に合わせ、モニターに表示していた。映像は少々乱れているが、天地はひっくり返っておらず位置関係もわかりやすい。
公民館の上空から撮影されている映像を見るに、二階の窓ガラスが一階の植木近くに散乱していて危険だ。正面玄関は変わりなく、開け放たれたガラスの観音開きドアから一列に並んだディミトリたちが大人しく出てきている。
「暴れてないなぁ」
「意外ー」
チヨ子と陽太郎がふむふむと感想を言うが、滋行や阿国からの返事はない。脳波コンをつたって何やら話し合っているらしい。陽太郎が除外されているのは、彼の役目が別にあるからだ。
「アイツらを監視し、助けに来るベルベットの部下を追跡……可能なら『パン』を仕込んでベルベットの居場所を特定」
「ヨウタロさん、めっちゃ責任重大じゃん」
「それな」
手元で弄っているシャーレには、黒ネンドとチヨ子たちが呼んでいたサイバーアメーバがごく微量だが入っている。陽太郎はこの微量黒ネンドの操作に専念し、中に突入する部隊とは別行動を取る予定となっていた。
陽太郎以外の全員が揃いで与えられた服は、黒と白のモザイクに時折シアンやマゼンタのパターンが混ざっている特殊なツナギだ。人間の目には何も感じないが、警察が使うパブリックシギント・カメラには人間に見えなくなるパターンだと八木が説明していた。犯罪ではないかとチヨ子は心配になる。違法な商品はそうと知っているユーザーも罪に問われると学校の授業で習ったため、気付かぬふりが一番だと目を逸らした。
日電スタッフの一人が運転席に座り、ヘッドセットを被って後ろを振り返って頷いた。後頭部から生えているケーブルは車内の大型機材と繋がっており、どうやらネットワークを介して車外のドローン群をコントロールできるよう強化したモデルのようだった。
残り三名の日電スタッフも、それぞれ同じような機材でドローンの操作を行なっている。映像はすでに動いているうちの一台から送られてくるもので、以前滋行たちが操作していたものと違い無線式の軽量タイプだ。武装などは付いていない。
「いいか、お巡りさんがアイツらに注意が向いてる今がチャンスだ。三橋を30分で起こして、車椅子に乗せて、逃げる!」
「了解!」
「りょうかーい」
日電スタッフは全員二十から三十代前半だ。若い輪の中で見劣りしない美貌の朝比奈美空も、お揃いのツナギで靴の紐を締め直している。リュックを背負っており、美空たち脳波コンユーザーが抱えきれない機材やケーブル類を持ってくれた。
レモンイエローの全身スーツを着ているセレブ・阿国は無言で宙を睨んでいる。
どこかに連絡しているのか、視線がたまに右へ左へと忙しなく動いた。三人以上話しかける相手がいる場合に任意で会話相手を定める際の脳波コンユーザーの癖の一種だ。話に夢中で、突入直前だと気付いていない。
カメラの映像内でバタンとパトカーのドアを閉める音がし、白と黒と赤のカラーが画面から見切れる。
「……よし。警察の応援か、もしくは三橋を回収に来るベルベット部隊、はたまた警察が呼んでりゃ救急車が先か……時間との勝負だ! 行くぞ!」
「おー!」
バンのハッチドアを開き、滋行や美空が飛び出す。
「あっ、ちょっと! もうですの!?」
「遅いよぉ。お先!」
阿国が慌てている。チヨ子もミルキィちゃんを抱えてジャンプで飛び出した。
正面玄関前のガラスが散っている部分には、手早い警察官が置いたカラーコーンの侵入禁止区割りがされている。建物内部へ続く玄関口は施錠されていないが、警備の意味を込めたであろうパブリックシギント・カメラが三脚で置かれてある。ドローンタイプは首都圏近隣三県と大阪だけだ。民間の防犯カメラと、それでは賄い切れないエリアに置かれる移動式の360度カメラのパブシギがうまく治安維持を担っている。地元民はパブシギのボディに配色された警察カラーリングを見れば入ってこないだろう。
「すごい、全然探知されてない」
<服もそうだが、一応外からカメラを少しいじってある。映像のログは残らんさ>
バンから支援する日電スタッフの自慢げな声に、チヨ子たちは背中を押される形で公民館へと入っていく。
階段を登ってすぐ見えてくる景色は、夜逃げしたIT系オフィスのようだった。
「いた!」
朝比奈がすぐに壁際の大きなベッドへ駆け寄る。よく耳を澄ませると、チヨ子たちが昭和島の倉庫で毎日聞いていた医療機器の音に似たものが聞こえた。心拍のリズムだとすれば落ち着いていて危険はない。すでに二台、モニター部分に軽量型ドローンが取りついている。
<看護師さんがリアタイでモニタしてるが、血圧があんま良くないっぽい。ちょっと急げ>
「ちょっと、焦らせるようなこと言うなですの!」
久仁子がレモンイエローのヘルメット越しにくぐもった声をあげた。
手筈通り、朝比奈とチヨ子は有線回線の接続を最優先に動く。ドローン群と三橋のベッドをつなげる朝比奈と、抱えているミルキィの腹から出ているケーブルを三橋脳波コンに直で差し込むチヨ子、そのミルキィからさらに別のコードで繋がっているのは滋行だ。手には、八木から託されたカマボコ型の機械がある。
「接続できたぞ、ギャンさん」
<おう、後は任せな>
「っていうかぁ、ミルキィちゃんの中にぜーんぶ入れてきたんだから。他にやることなんてある?」
<そうそう、メインはクマチャンだ。違いねぇ。だが誰がどう何をしてくるかわかんねーっしょ? なー、ベルベット?>
つくばにいる八木が、通信越しにチヨ子の知らない人間のことを呼んだ。ベルベット。朝比奈から聞いている、大柄で派手なミンクコートを着た元男性かと思われる女性(確証は無し)だ。クセの強そうな人だという印象だが、半分恋愛相手を探しに来ているようなモチベーションのチヨ子にとっては対象外になるため興味が薄い。
<やっぱり優秀じゃない。なんて呼べばいいかしら? ギャンちゃん?>
「うわっ」
「べ、ベルベット!?」
<アハ>
「す、すげぇ! 本物!」
ゴロリと床に転がっているドローンの一台から聞こえる。スピーカーの音量は大きいが聞き取りにくい。
「こいつはこっちでいただきますの! 渡しませんのよ、ベルベットォ!」
<うーん、渡したくなんかないわよそりゃあ。どんだけ大変だったと思ってんのよぉー。ねぇ、朝比奈ちゃん?>
「龍田さん……」
<オツカレ様。報酬、お家のポストに入れといたわよ>
「そんなことより、弓子さんたちは!?」
<無事よぉ勿論。拉致られないよう守ってたくらいよ?>
「ええ、ええ。存じてますの。ですがベルベット、秘密主義は嫌われますの。このままじゃ弓子さまを利用してるって分かってますでしょう? 共有すべきことは伝えて、ちゃんと協力しあって……」
<それ、阿国チャンが言う? うっふふ、ネットストーカーがこうまで変わるとはねぇ>
「変わってませんの。ワタクシ、何も信じませんの。ガルド様以外何も。ここの子たちも、向こうの輩も、アナタも」
ベルベットと阿国が睨み合う。手を止めずにケーブルを伸ばしながら朝比奈が叫ぶ。
「そうよ、龍田! 黙ってたことが多すぎ! 信用無くして一人になったのはアンタだから!」
<うわー、耳が痛ーい>
不毛でよく分からない会話だ。チヨ子はミルキィを抱えてベッドに集中した。眠る三橋はたまに何か喋っている。唇は少しカサついているが想像したほどやつれてはいない。
ミルキィと接続してから、頭を覆う金属ボウルのようなヘッドセットのファン音が大きくなった。滋行の手にあるカマボコはインジケータをチカチカ言わせており、あまり聞いたことのない機械の音をあげている。コマのような回転系の音だ。
「三橋を取り返したければ、何もかも白状するんですの! ガルド様のためになるなら手だって貸してやってもいいですの!」
<おおっとォ、そりゃ聞き捨てならんねー。ボスの本懐は田岡さんのログアウト。ガルド氏が誰が知らんがなァ、田岡さんのログアウトに必要なデータは渡さねぇよ!>
<彼が第一号なのよね? データねぇ、正直欲しいけどぉ……教授に貰うから要らなぁーい>
<ひゃっは! ひひひ! ばーかばーか!>
<にゃ、にゃにおー!?>
<白亜教授だろぉ? あんにゃろーめ、言われるがまま当てたら三橋の頭が吹っ飛ぶとこだったぜ!>
<ヤダァー! なぁに教授! どういうことー!? ちょ……無視ィ!?>
<キィヒヒ! ざまーみろー! ぜってーやらねぇ。三橋は俺らンだ!>
<ちょっと待ってェ! きょーじゅ、教授も知りたいって! ねぇーソースコードうつさせてー>
<い、や、だ!!>
<お金なら払うわ!>
<三橋から手を引くって言え!>
<アラマ、そんなのでいいの? どうせ諦める気でいたのよね>
「えっ」
「えっ」
焦りながら必死に三橋周りで格闘していた滋行たちが一斉に顔を上げる。
「八木、八木、ガルド様も! ガルド様のお身柄がどこか言ったらコード渡すって言えですの!」
<それはできないわ、阿国チャン>
「えええーん!」
<ガルドチャンはね、もうアタシの手を離れたわ>
「なぁんですって!? 誰ですの!? ねぇ! 言えですの!」
<えー? うーん、ディンクロンに聞くといいわ>
「アイツやっぱ黒ですの!?」
<違うわよぉ。でもそうね、そろそろ彼の保護者に迎えに来てもらわないと>
「……奴の子どもってことですの!?」
「あっはっは! 惜しい!」
<惜しい!?>
「惜しいってことは何、え? 隠し子!?」
<ボスの隠し子!?>
「ディンクロンの!? え!?」
現場は賑やかに大混乱だった。
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