上 下
7 / 24
序章

序章 第2話「奴隷オークション」

しおりを挟む
  俺は、商人のケイン。
今日は月に一度の奴隷オークションの日なので会場に向かっている。
普段は商品が少なく2時間程度ですぐ終わるオークションだが今月は三日間に分けられて夜7時から深夜まで行うとの事、今日はその初日だ。
数年に一度の規模なので主要な商人は皆集まっているだろう
会場もいつもと違って普段は演劇など催している都市の一番大きな建物になる

この世界では、奴隷は合法で、国が認めている。
オークション会場は政府が管理し、奴隷商人主導で行われる。
たいていは軍が捕縛した罪人や不法移民、身寄りのない獣人が殆んどだ
奴隷は3種類いる。

・1つ目は解放奴隷  これは国が定めた年数奴隷として勤めれば解放され市民権を得られるが、その後も住居制限はある。
不法移民、戦争捕縛者等が該当する。期間は4-10年くらいか

・2つ目が犯罪奴隷、 罪刑期が終えれば解放されるが、犯罪の内容や再犯等により扱いが異なる。奴隷商人が扱うのも多くの者は刑期15年以下が殆んどだ。
この国の重犯罪者は軍の奴隷となり強制労働場に行かされる、奴隷商人も扱えない

・3つ目が借金奴隷  こちらは政府主導の競売にて落札される、奴隷商人も扱えない。ほぼ労働奴隷で年250万ギル相当の労働とみなされる。1000万ギル以上の借金持ちは少ないので多くは5年以内で再び市民に戻る
主人も街の商店や娼館の主、職人が殆んどだ。娼館は規定により短期間で解放される。

奴隷魔法印により奴隷主の命令には逆らえない、主人が死ねば魔法印は解除され再度別の者の奴隷になる。主人も奴隷を殺すことはできない。
奴隷主は労働や仕事を与える。給金はでないが衣食住は全て保証される。
奴隷魔法印は契約が終われば役所の魔導士により正式に解除される。
また管理責任が発生する、違反すれば犯罪者となる。国は一般市民は処罰ができるが、貴族等は捕まえて引き渡すだけで罰則はほぼない。
この国では多くは犯罪奴隷と借金奴隷が半々だ。解放奴隷は戦争等が無い限りは少ない、島国なので移民も少ない
商人主導の奴隷オークションに出されるのは解放奴隷と犯罪奴隷だ。

そうは言っても、人身売買に変わりはないので、俺は好きになれない。
契約が終えれば解放されるのだが、自由になっても帰る家もない、仕事もない者が多いので、そのまま奴隷主の使用人を続けるか冒険者や傭兵になるのがほとんどだ。

そうしているうちにオークション会場に着くと沢山の人が集まっていた。
本日は71人が出品されたか。最近は一桁の人数も多かったのに
今月は三日で220人は出品されると聞く
先月軍が隣国の内戦に協力した時に多くの獣人を捕縛したと聞くがそいつらが出品されたのだろう

少し会場のエントランスを歩き周りを見渡すと明らかに避けられてる ”異臭のする異様な浮浪者のような恰好の者”がいた

薄汚れたボロ布で全身を覆い隠すフードのついたマントの異様な出立ち、背丈は150cmくらいか?顔は仮面覆われていた。

「あのような者はオークションで初めて見るな」
会場に似つかわしくない者の出現に周りの商人たちがざわついていた。
その者は俯いて歩きながらさっと会場の中に入り後方に座った、勿論その者の周りに座る人間など誰一人いなかった…

私は会場に入り顔見知りの商人と談笑した
「今日の目玉はなんですか?」
「先月の隣国の戦争の捕縛者や敵軍の未亡人だろ」「いや軍が捕縛した傭兵の獣人ハーフの女だろ」
オークション開始が近づき周りもざわつき始める
今日は女奴隷も多いか、可哀想に・・・。 男は労働奴隷だが女は性奴隷や愛玩奴隷になることが多い。
性奴隷は男も女もいるが女が殆んどだ、貴族か街で一番大きい娼館が多く買っていく…。

オークションが始まり次々と商品が出てくる。
隣国の内戦で負けた傭兵の獣人が労働力として多く買われていく。
後半からは最低落札価格が多い者が出てくる獣人の若い女の子が多いな・・・
「7500万」
久々に大きい金額を見たな、性奴隷は近年市民から問題視されて短期間のみの奴隷とされた
性奴隷は奴隷オークションでは奴隷魔法印は長くても5年までとされている
それでも高額で買う貴族は後を絶たない。

そして最後に出てきた商品を見て驚いた
会場の中央のステージに連れられて出てきたのは、やせこけた若い男だ
決して美少年でもない、覇気がない今にも泣きそうな情けない顔をして俯いている

「それでは最後の出品です、本日の目玉商品!」司会が囃し立てる

「この者は解放奴隷、毒耐性ユニークスキルを持っています、是非ご購入を! 年齢は18歳、奴隷契約期間は8年間、最低価格は2000万ギルから始めます」

「ふざけるな!もっとましなの連れてこい!500万ギルから始めろ!」
いつも冷やかしで来ている下級貴族から野次が飛ぶ

「2100万」貴族が言う。
「2200万」商人が競る。
「2500万ギル」錬金術士が吹っ掛ける。
「3000万!!」上級貴族の執事が叫ぶ
これで決まりかな?毒見役と雑用係にしては少々お高い値段だが

「えっと、そこの後方にお座りの方、4000万ですか?」そうオークション司会の者が言うと会場が静まりかえった

その先に異様な浮浪者のような恰好の”異臭を放つ仮面のモノ”が手を上げ指で4を示していた

あの会場入りから異臭で避けられていた者だ
そもそもこの会場は貴族やある程度の資産を持つ商人の者、他に各ギルドマスターの推薦等のある人間でなければ絶対に入れない
警備も厳重だ。一般人や素性の知れないものが入れるのはあり得ない
「あの者は誰なんだ?」

すると商談の札が上がる。貴族の提示額よりかなり高い 4000万ギルで落札された。
”異臭を放つ仮面のモノ”は立ち上がり奴隷商人の元に降りて行った
周りの客は露骨にその”異臭を放つ仮面のモノ”を避けて動き始めた

私の少し離れた席の風貌に似つかわしくない高級な服を着た冒険者が喋った
「あの仮面の奴はたまに見掛ける、ランクEだが冒険者ギルドでは特別視されてるベテランだ」
背丈が小さいのに冒険者か、魔法使いとかだろうか?

司会に促されて
”異臭を放つ仮面のモノ”は中央のステージに行きオークションで落札した奴隷に近付いた
オークションに連れて来られてからずっと下を俯いてうなだれていたその奴隷は
自分を落札した者を見て突然泣き始め座り込んだ

”異臭を放つ仮面のモノ”はその姿をずっと見つめていた……。
仮面で表情など見えないのに何故かその姿は優しく見えた

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました

桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて… 小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。 この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。 そして小さな治療院で働く普通の女性だ。 ただ普通ではなかったのは「性欲」 前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは… その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。 こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。 もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。 特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。

誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味のあいつがいる

迷路を跳ぶ狐
BL
*本編は完結済みで、番外編を更新中です*  僕には大事な恋人がいる。心から愛し合っているのに、上司の魔族は別れろってうるさい。  その魔族は、僕と恋人の大事な時間を邪魔して、僕を連れ去った挙句、僕のことを嬲る最低な男。  何度も殺そうとしているのに、僕はそいつに勝てない。いつも負けて、部屋に監禁されては弄ばれる。  もう許せない。今度こそ絶対に殺してやる。  そう何度決意しても、やっぱり勝てない。  なんでなんだ。勝てないのも。僕があいつから離れられないのも。 *ムーンライトノベルズに掲載した「誰より重くて愛がないと言われる僕の後ろには、いつも監禁趣味の上司がいる」を続編とあわせて加筆、修正を加えたものです。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

【R18】らぶえっち短編集

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)  R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。 ※R18に※ ※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。 ※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。 ※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。 ※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。

戦国de無双!~時代は彼が動かす~

夜夢
ファンタジー
彼は現代日本で若くして様々な武術を修めた武人、名を【大和 武瑠(やまと たける)】という。 ある日武瑠は部屋で兵法書を読んでいた。 「あ~この時代に生まれてたらなぁ…。」 そんな何気ない一言が暇を持て余していた神に届いた。 「叶えたげよっか?」 「はい?うぉあぁぁぁぁぁっ!」 これは現代日本で力を持て余した彼が過去の日本に似た世界に飛び、時代を生き抜いていく、そんなお話。 ※徐々にエロくなって行きます?いや、確実にエロくなります。苦手な方は回れ右(笑)大好物な方はそのままティッシュを御用意下さい(笑)

ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?

望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。 ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。 転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを―― そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。 その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。 ――そして、セイフィーラは見てしまった。 目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を―― ※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。 ※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

処理中です...