28回の後悔

おまめ

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カンカンカンカンカン…
「うるさ…」
「起きてーーー」
昨日の優しさは何だったんだ…
「起きますから…やめてそれ…」
「はいおはよーー」
体を起こして、時計を見た。表示は5:30。フライパンとオタマで起こす人本当に居るんだ…
「早…」
「朝ご飯、外に食べに行こ」
「はい…」

言われるがままに用意を済ませ、まだ目覚めきっていない街に出た。
「美味しい店があるらしくて」
「へぇ…」
「ここだね」
あまり目立たない、落ち着いたカフェだった。
「フレンチトーストが人気らしいけど、それにする?」
「はい」
「バニラアイストッピングあるよ」
「欲しいです」
私はまだぼんやりした状態で答えただけだったが、竜斗は一瞬驚いた後、にっこりと笑って頷いた。
「?」
「いや。すみませーん」
しばらくして、出来立てのフレンチトーストが運ばれてきた。バニラアイスが溶け始めている。
「「いただきまーす」」
甘い。美味しい。ふわっふわっ。
「早起きした甲斐があるねーしあわせー」
「竜斗ってもしかして甘党?」
「言われてみれば…そうかも!」
自覚無しだった。

食べ終わり、その足で服屋周りに出掛けた。
「私、服に関しては全然だめです」
「そんな気はしてた。持ってきたの見てると」
「う…」
「まぁ任せて。これ行ける?」
「えっ派手では…」
「サイズの話。モデルだから君の好みじゃない」
「あ、すみません。大丈夫です」
「んーじゃあ、これとこれ、試着してきて」
「はい」

どれくらい時間が経ったのか。
何回も試着を繰り返し、購入した服はウン十万円を超えていた。竜斗はさっとカードで支払った。
「経費で落ちるんですか…」
「まぁね。帰るよ」
店を出て大通りをしばらく歩いていると、竜斗が突然止まった。顔が青い気がする。
「えっ大丈夫…?」
「碧衣こっち」
腕を掴まれて、大通りから逸れた路地を早歩きで引っ張られる。何だか呼吸が浅い。焦っている。今まで見たことの無い顔で。
「えっあの」
「何でここに…」
私のこと忘れてる?
「竜斗…?!」
「あっ…ごめん」
そんな笑顔は見たこと無い。
「なんでもないよ」
「なんでもないって…」
「ちょっとトイレ行きたい。そこで待ってて」
一体どうしてしまったんだ…

「やっぱいねぇわ」
「おかしいなーぜってぇ居たのに…」

強面の男二人が私の後ろをそう話しながら歩いていった。
竜斗は、誰かに追われてる…?いやそんなまさか…
そういえば竜斗はあまり自分の事を話さない。最初に会ったとき、経験上、なんてことを行った。飛び降りを止めたことがある経験があるんだとしたら、只者ではない。本当に竜斗は美容系の仕事をしてるのか。

分からない。何も話してもらってないから。
今までなかった不安が積もる。ただ、私はあの人を信じたいとは思う。何か怖いことがあるなら、頼ってほしいと、そう願う。
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