Dress Circle

七賀ごふん

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明日の景色

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笑って言うと、彼はハッとして、わずかに目を細めた。そして困ったように肩を竦める。

「それか。まったく、お前には適わないな」

珍しく頬を染めながら、小さな声で呟く。俺がずっと待っていた、ちょっと過激なプロポーズを。
「もう、すぐにでも抱きたいな」
「あはは! いいよ、ガンガン一線を越えていこう! もう俺達を邪魔するものは何もないからね。ショタコン継美さんの性癖をおさらいしてホテル街へゴー!」
「一気に萎えた。やっぱ飯食いに行くぞ」
「何で!?」
ちょっと悪口を混ぜたのがいけなかったか。彼は早足で先に行ってしまった。

「ごめん継美さん、何もすぐに既成事実が欲しいわけじゃないんだ。タイミングも大事だと思うから、まずは同じベッドで寝るとこから始めよう……」
「同じベッド?」
「き、今日は無理だけど……来週からひとり暮らしするから」

必死になって叫ぶと、継美さんは盛大に吹き出した。
「わかったから落ち着け。ゆっくりでいいんだよ。無事に高校を卒業したんだから、今日はそのお祝い」
夜の闇に紛れて、彼は俺の唇を奪った。
一瞬で終わってしまったけど、その熱は俺の全身に駆け巡る。風は冷たいのに、ちっとも寒くなかった。
むしろ顔が火照って熱い。はぁ……。
 
「来週はお前の家で、大学の入学祝いしようか」
「う……うん」

舞い上がってることが自分でも分かって、ちょっと恥ずかしい。熱いわけないのに、掌を団扇代わりにして風を送った。
こんな簡単に沸騰してたら先が思いやられる。
でも、今から楽しみでしょうがない。

「一架、おいで」

俺より一回り大きいかもしれない手を取って、小走りで隣に並んだ。
身長差はあっても、これなら同じ景色が見れる。

華々しい舞台じゃなくていい。
人に用意された特等席も駄目だ。俺はこれから、自分の意志で見たいものを決める。
できれば、この人と色んな景色を見たい。

「継美さん。これからよろしく!」
「ふふ。……こちらこそ、よろしく」

俺の世界を変えてくれた人のために。

たくさん笑って、笑わせて、新しい明日を生きていこう。




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