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明日の景色
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しおりを挟む志望した大学は彼と違う。加えて俺は引っ越すから、以前のように顔を合わすこともなくなる。一番の理解者と離れてしまうのはやはり悲しかった。
「一架。別に今生の別れじゃないんだから、何かあったら連絡しろよ。すっ飛んでいくから」
「はは、ありがと」
でも、いらない心配かもしれない。
どんなに離れても、どんなに時が経っても彼と分かり合える自信がある。自分はいつだって彼の味方だから。
「はーあ……柊先輩も一架先輩も卒業しちゃうなんて、つまんないな」
蚊帳の外になっていた柚がぼそっと呟く。彼は彼で、取り残されることに不満があるようだ。
「つまんないとかじゃなくて、クラスでお友達つくれよ、お前は。同年代の友達が作れなきゃ大学行ってもぼっち確定だぞ。便所飯は嫌だろ?」
「そんな心配してませんよ。俺は一架先輩と違ってコミュニケーションは自信ありますから。少なくともナルシストじゃないんで、一緒にしないでください」
話の途中で、卒業証書で殴り掛かりそうになった。けどそれは柊に止められ、冷静になるように宥められる。
「ほんっとーに最後までクソ生意気だな!」
いつもと同じペースだけど、最後ぐらい怒らないで別れたかった。けど後ろで見守っていた柊が呆れたように肩を落とす。
「はは、まったく……柚、そんなこと言うために一架に会いにきたんじゃないんだろ? こんな日ぐらい素直になれって」
素直。何のことか分からず柚を見る。どうせまたろくでもない話だと思ったのに────彼は、急に俯いてボロボロと涙を流した。
何だ。怖っ……怖い。
「おいおい、どうした。何で泣いてんの?」
泣かせるような台詞を言った覚えはない。彼のことだから、演技じゃないかと疑ってしまう。
でもマジ泣きっぽいな。
恐る恐る待ってると、柚は嗚咽しながら瞼を擦った。
「だって……先輩が、いなくなっちゃうから……っ」
俺と柊の目の前で、人目も気にせず泣き出した。周りにも先輩との別れを嘆いて泣いてる後輩がちらほら居るから、別に目立ちはしないけど……突然のことに言葉を失う。
「本当はずっと謝りたかったけど、一架先輩を見るとつい苛めたくなっちゃって……! 今までちゃんと謝れなかったし、お礼も言えなかったんです。ごめんなさい……っ」
柚はそれだけ言うと、再び大泣きした。
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