Dress Circle

隣

１７

レストランから出て、賑わう駅へと向かう。今は何とも思わないけど、数ヶ月前なら想像もできなかった。あの憎き継美さんと手を繋いで外を歩いてるなんて。
未だに現実味がない。それに会話が切れるといやに緊張する。

「継美さん、下ネタしりとりしよう。視姦プレイのイ」
「インコ」
「コンドーム！」
「ムース｣
「素股」
「タニシ。……下ネタじゃなくていいだろ」

継美さんは外では普通の人だ。
ていうか、皆そうか。外では“普通”の仮面を被ってる。
俺は教師なんて俺は何回生まれ変わってもなれる気しないけど。
「タニシ……し……射精管理。あのさ、やっぱり大学に行こうと思う。勉就職でいいやって思ってたんだけど。もう少し時間かけて自分がやりたいこと探してみようと思って」
「輪姦。……いいじゃんか。それじゃあ受験前は時間つくって勉強見てやるよ」
「ありがとう、頑張るよ。しりとりは継美さんの負けね」
「あぁ。俺も頑張って、二十歳前にはお前を真っ当な人間にするよ。でないと親御さんが気の毒だから」
やっぱり、継美さんって面白い。怒らせると普通におっかないけど。
この人に出逢わなかったら、俺の人生はもっと変なことになってたのかもしれない。

「一架は早くナルシストを卒業できるといいな」
「……」

多分、俺はもうナルシストじゃない。でもそこは黙っておいた。

彼は時々辛辣なことを言うけど、最後は必ず手を引っ張ってくれる。
それは当たり前ではないし、いつか見失ってしまう時も来るかもしれない。
それでも隣にいたいから、俺も成長しよう。いつか彼を支えられるぐらい強くなって、同じ場所に立てるように。