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隣
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しおりを挟む友達……。
一架が帰った後、病室の窓際で、延岡は曇った空を見上げていた。
授業やテストのことで話す友達はたくさんいた。けど彼のように、乱暴な言動や行動をする友達は初めてかもしれない。
本音でぶつかれる相手。十七年も生きておいて、ようやく手に入れたようだ。
早く脚を治したい。リハビリの時間までちょっとあるから、ちょっとだけ外の空気を吸いにいこう。
ナースに了承を得て車椅子に移乗し、一階へ向かった。脚はともかく、車椅子で移動していると図らずも腕が鍛えられる。操作は慣れたもので、すぐに中庭に着いた。
小さな人工池と、綺麗に植えられた花々が見る者の心を和ませる。
人って……生き物って、植物って実はすごいんだな。
きっとこんな機会がなければ目を向けることなんてなかった。自由に動き回れなくなって初めて、自分以外の生命に感動している。
元気だった頃は花を真剣に眺めたことなんてない。視界には入ってたけど、実際はまったく見えてなかった。晴れの日も雨の日も、通り過ぎるだけ。
見た目によらず強い。崔本みたい。
って、花に例えたら彼は怒るかもな。あれでいて、かっこいいと言われることに喜びを見出してるし。
でも、そんなことを考えてるのも楽しい。
初めて色々考える時間ができた。当たり前だと思っていた生活が一瞬でなくなったけど、代わりに手に入れたものも大きかった。
「あ」
鯉が泳ぐ度に生じる池の波紋を目で追っていたけど、頬に冷たい何かが当たる。
雨だ。瞬く間に、足元のアスファルトの色が変わっていく。曇り空を見上げて、慌てて建物の中へ入っていく患者を見た。……そういえば、今日は雨が降ると言っていた。
崔本は折りたたみ傘持ってたのかな?
「ぬれちゃうよ? 中に入ろう」
そろそろ戻ろうと思っていた矢先、背後から声を掛けられた。誰だが知らないけど、それには素直に従おうと思い、車椅子を操作する。
でも、振り返った瞬間力が抜けてしまった。
「朝間さん!」
目の前に佇む青年を見たら、雨なんてどうでもよくなった。髪がぬれても気にならない。むしろ彼のスーツがぬれることを心配した。
「雨が降る前に来たかったんだ。久しぶり、祐代」
彼は俺の後ろに回ると、ゆっくり車椅子を押し始めた。屋内じゃないけど、屋根のある場所まで移動して雨宿りする。
本降りになって、彼と霞んだ景色を眺めた。
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