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隣
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しおりを挟む彼も心の底では分かっていたんだろう。
嫉妬の感情に任せて攻撃しても、事態が好転することなんてないと。
それでも自分を制御できないのは、人を想う気持ちの強さ故。誰かを好きになることは、それまでの価値観をひっくり返すほど大きなことだ。
延岡は徐に頭を下げた。
「崔本に会えてよかった。でも、本当にごめん」
「もういいって言ってんだろ。偉大な俺に嫉妬するのは仕方ないし、これからはお前が俺の信者になれば済む話だ」
もちろん冗談。本気にしないでほしい。でも延岡は至極真面目な顔で頷いた為、ちょっと気まずかった。
「ところで。崔本、梼原先生とはどう?」
「えっ? ふ、普通だよ、普通!」
「何で慌ててんの。てか顔真っ赤じゃん……崔本って意外にピュアだよな。嘘ついてもバレバレ」
「バレバレじゃない!」
くだらない会話を二、三交わして、またカーテンを開けた。
「早く脚治せよ」
「うん。……あのさ……もし、また学校に戻ったら……ゼロから、友達になってもらえないかな」
延岡は両手を組んで、弱々しい声で尋ねた。彼こそ、本当にわかりやすい。
そして恥ずかしい。わかりきった台詞を言わせないでほしい。
「……もうとっくになってるだろ」
そう答えた瞬間、彼は顔を真っ赤にした。くそ、何か俺まで顔が熱くなる。
とりあえず、これ以上彼の反応を見るのが嫌で勢いよくカーテンを閉めた。
「それじゃお大事に!」
病室ということも忘れ、少し荒々しい足音を立ててその場を離れてしまった。
本当におかしい。俺も、彼も。……世の中ヘンな奴ばっかりだ。
とりあえず延岡は早く回復して、学校に復帰して、また勉強に取り憑かれたらいい。
彼が戻ったら、次のテストは絶対に俺が勝つから。
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