125 / 157
対比
5
しおりを挟む聞き間違いじゃないようだから、尚さら腸が煮えくりかえる。いくらなんでもふざけ過ぎだ。憤りに負けて彼に怒鳴った。
「お前いい加減にしろよ! 朝間さんが俺を好きだって言うのは絶対嘘だし、お前もあの人に騙されてるだけだ。あんな人と関わって良いことなんてひとつもない!」
……はずだ。多分。だって大人の考えてることなんて、俺達には分からない。
朝間さんは嘘とホントを上手に使い分け、優しい言葉で油断させる。普段から暴言を吐く継美さんとは根っから人種が違う。
俺もまだ朝間さんの十分の一も分かっちゃいないんだろうけど。それでも信用し過ぎたら駄目な人間だ。
「あの人が何で俺に執着すんのかも分かんないし、……俺には好きな人がいる。その人を裏切るわけにはいかないんだ」
「あぁ、梼原先生でしょ? 男からモテモテだね。俺は朝間さん以外の人間に好かれても嬉しくないけど」
「くそ、俺だって継美さん以外は……じゃなくて、もう終わりにしようよ。こんな言い合いしたって誰も得しないだろ」
「……」
柵に足を掛け、彼と同じ目線に立つ。少し風が吹いただけで体幹が崩れそうだ。早く延岡を説得しないと。
けど、彼は瞼を伏せてかぶりを振った。
「もういいよ。何かどうでもよくなった。やっぱり俺、人を好きになるの向いてないみたい。だから誰にも好かれないんだ」
「そんなもんに向き不向きなんかない。つうかあってたまるか! それを言ったら俺だって……お前よりずっと頭おかしかったよ。他人に興味もなかった。でも、今は普通に近付けてる。……気がする! だから、大丈夫だよ」
迷いまくってひたすら坂を下っていった。
幻滅されたし失望されたし、たくさんシバかれたけど……最終的に引っ張って助けてくれたのは、やっぱり大切な恋人。
「戻ろう。好きな人しか見えないって気持ちはよく分かるけど。……朝間さん以外の人にも目ぇ向けてみようって」
最後の望みで、彼との距離を詰めた。
「な?」
おかしいのは、寂しいのは自分も同じ。
いや、誰もが同じ。独りは嫌だ。
「……分かった」
その想いが届いて、延岡は頷いた。
早く引き寄せようと彼に手を伸ばす。彼と手が触れる、一瞬前だった。彼は足を滑らしてバランスを崩す。
「延岡っ!」
咄嗟にその手を掴んだけど、身体は外側に傾く。普段なら絶対味わわないような浮遊感に襲われる。暗く飲み込まれそうな夜空が見えたと同時に、気が遠くなるほどの衝撃を全身に受けた。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
学校の脇の図書館
理科準備室
BL
図書係で本の好きな男の子の「ぼく」が授業中、学級文庫の本を貸し出している最中にうんこがしたくなります。でも学校でうんこするとからかわれるのが怖くて必死に我慢します。それで何とか終わりの会までは我慢できましたが、もう家までは我慢できそうもありません。そこで思いついたのは学校脇にある市立図書館でうんこすることでした。でも、学校と違って市立図書館には中高生のおにいさん・おねえさんやおじいさんなどいろいろな人が・・・・。「けしごむ」さんからいただいたイラスト入り。
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
『僕は肉便器です』
眠りん
BL
「僕は肉便器です。どうぞ僕を使って精液や聖水をおかけください」その言葉で肉便器へと変貌する青年、河中悠璃。
彼は週に一度の乱交パーティーを楽しんでいた。
そんな時、肉便器となる悦びを悠璃に与えた原因の男が現れて肉便器をやめるよう脅してきた。
便器でなければ射精が出来ない身体となってしまっている悠璃は、彼の要求を拒むが……。
※小スカあり
2020.5.26
表紙イラストを描いていただきました。
イラスト:右京 梓様
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる