99 / 157
先に奪ったのは
7
しおりを挟む長い長い午前の授業が終わった。
心が重くて身体は怠い。頭はずっと鈍痛が響いて止まないし、たまに息苦しい。
正直、もうしばらく学校に来たくない。それぐらい朝のダメージがこたえていた。
けど不幸中の幸いは、クラスメイト達が庇ってくれたことだ。学年主任にまで話が伝わったけど、俺が最近嫌がらせを受けてることを知っていた友人達が口添えしてくれた。
「だって、皆が見てるところで煙草をぶちまけるとかバカでしょ。筆記用具入れずに、しかもあんな大量に……普通、誰かの仕業だと思うよ」
教室に残ってくれた友人は憤りと呆れをあらわに、継美さんに訴える。
彼もまた、難しい顔で黙って聞いていた。
「一架の物が汚されてることも多かったんですよ~。あとやばかったのは、上履きに画鋲入ってたことか」
「は!?」
友人の言葉に、継美さんはメモをとっていた手を止め、声を荒げた。
「大問題だろう! そんな事があったならすぐ話しに来い!」
「だって、俺の嫉妬してる歪んだファンかと思ったんだもん。イジメとは違うと思うし」
「あのな……何も知らない先生方からしたら、反抗的態度をとったと思われてもっと大変にことになるんだぞ」
むしろイジメとして報告した方が穏便かもしれない。
継美の言っていることは充分わかった為、申し訳ない気持ちになる。彼の必死の説得もあり、主任は親に報告するだけに留めてくれた。
ていうか父親に知られたのも嫌だな。次会った時はなんて言い訳しよ。
「まぁまぁ先生、一架も悪気はなかったと思うんで……。とりあえず良かったな、一架。お咎めはなしになったし」
「……うん。皆、本当にありがとう」
お礼を言うと、彼らは軽く手を振って帰って行った。テストは午前のみ、昼に下校となる。明日もテストがあるから、皆長く学校に残るわけにはいかない。
無論、自分も────早く帰って明日の科目の勉強をしないといけないけど。ちょっとまだ、そんな気分になれない。
淀んだ思考。
教室には一架と継美しかいない。彼らは二人きりになって、ようやく互いの顔を見合わせる。
「……自分で解決しようと思ったんだろうけど、本当は教えてほしかった」
彼は腕を組み、低い声で訊ねた。
「事前に知っていれば俺もあそこまで困惑しなかったし、対応策だって考えることができた」
「はい。ごめんなさい……」
矢継ぎ早に尖った言葉が紡がれる。
少しの間、沈黙が流れた。理由は一架にある。
継美としてはまだ説教するつもりだったが、目の前の少年の沈んだ顔を見て、次に言うべきことを忘れてしまっていた。
「……ふう」
継美は小さくため息をつき、自身の額を押さえる。そして両手を強く叩いた。
「ごめんな。お前を責めるより、先に言うことがあった。……辛い思いをしてたのに、気付いてやれなくて悪かった」
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
『僕は肉便器です』
眠りん
BL
「僕は肉便器です。どうぞ僕を使って精液や聖水をおかけください」その言葉で肉便器へと変貌する青年、河中悠璃。
彼は週に一度の乱交パーティーを楽しんでいた。
そんな時、肉便器となる悦びを悠璃に与えた原因の男が現れて肉便器をやめるよう脅してきた。
便器でなければ射精が出来ない身体となってしまっている悠璃は、彼の要求を拒むが……。
※小スカあり
2020.5.26
表紙イラストを描いていただきました。
イラスト:右京 梓様
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
創作BL)相模和都のカイキなる日々〜天使の囀りに寒雷は鳴る
黑野羊
BL
「先生と付き合う気はもうないのか? それなら、俺と付き合えよ」
狛犬騒動が落ち着いた12月のある日曜日、親友の春日からそんなことを言われて驚く和都。先生との関係は、言われてみれば明確にしていなかったし、婚約者の問題も考えるとよく分からない。
不安な気持ちで迎えた月曜日の放課後、不自然なケガをした生徒が運び込まれてきた。そして、付き添いの生徒がポツリと「エンジェル様のお告げが当たったんだ」と呟いて──。
オカルト×ミステリー×ラブコメ(BL)な現代ファンタジー。
和都のカイキなる日々はまだまだ続く。
ーーー
※相模和都のカイキなる日々の続編になります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702387773/266817429
「*」のついている話は、キスシーンなどを含みます。
===
主な登場人物)
・相模和都:本作主人公。高校二年、お化けが視える。
・仁科先生:和都の通う高校の、養護教諭。
・春日祐介:和都の中学からの友人。
・小坂、菅原:和都と春日のクラスメイト。
===
※小説家になろう、Pixiv、Xfolioにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる