Dress Circle

有名人

１１

確かに俺の性癖は世間では完全アウトだ。
それは認める。けどそもそも俺がこの性癖に気付いてしまった原因は継美さんにあり、今さら治るもんでもない。

昼休み、二階の渡り廊下から通り過ぎる生徒達を眺めていた。これも一種の目の保養……とか考えてる自分が怖くなる。
末期だ。年齢は関係なく、性別が男ならオーケー。抱き合っていれば言うことなし。

だっ抱き合っていれば……！？

自分で想像しておきながら戦慄する。やっぱり俺は、二人で一人と捉えてるらしい。
俺の欲望を満たすには必ず二人必要。『抱き合ってる』ところを視ることが最終目的なんだ。

「一架せーんぱい！」
「うわあぁっ！？」

明るく幼い声が聞こえた。と同時に、耳朶に熱い吐息を吹きかけられて飛び上がった。
「うわ。ユーレイでも見ちゃったみたいな反応しないでよ」
背後に佇む童顔の少年は、壁まで引いた一架に心底呆れていた。
「おまっ……高城！ 人の後ろに忍び寄るな！」
「柚って呼んでくださいよ。俺も先輩のこと名前で呼んでんだから」  
う、なんて白々しい。
無垢で汚れを知らなそうな容姿からは想像もつかないだろうが、彼は俺に手を出してきた変態二号だ。
「ところで先輩って耳ビンカン？ 顔真っ赤だよ」
俺も変態……だけど、彼と同類とは思われたくない。
「お前がいきなり変なことしてくるからだろ。誰だってビックリするよ」
舌打ちして安全な距離をとる。
俺は自分の手を汚さない変態だが、彼は直接手を下す変態だ。そこらへんがちょっと違う。

「ああ、だとしても先輩がウブなこと忘れてたよ。ごめんなさい」
「誰がウブだって？ 俺はお前が見たこともないようなプレイを何百回と生で見てきてんだよ」
「それ自慢できることかなぁ。先輩やらしー」

わざと過剰な反応をして、高城……柚はこちらを煽ってくる。煽るのが上手いことは認めるけど、要はただのクソ生意気なガキだ。
捻り潰したいところだけど、大勢の生徒が行き交うこんな場所で騒ぎは起こせない。
本当、めんどくさい奴に捕まっちまった。

「で！ 先輩はこんなとこで何してんの？ 暇なら俺と遊ぼうよ？」