Dress Circle

七賀ごふん

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災難

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「……っ」

間違っても学校でしていいことじゃない。だけど考えちゃいけない。
そんな常識を振るっていたら、理性を捨てられないからだ。今理性を保ったら、羞恥心と敗北感から気が触れそう。

「やっ……と勃ってきたな」

声もなく笑う、美しい青年。継美さんの前でイクには、まともな頭じゃ絶対無理だ。

今だけは諦めて受け入れよう。俺が悪い……俺が……。
男が好きなこと、視姦に興奮すること、梼原に近付いたこと。その全部が悪い。
「はぁ……っ」
泣きたい。
脚を開いて、嫌いな男の前で自慰に没頭している。屈辱だ。他人の痴態を眺めるその特等席は、俺だけのものだったのに。

人のセックスは俺にとってショー同然だ。
それを鑑賞したいと思うこと。……どうせなら最高の席で楽しみたいと思うのは、当然の願望だろう。
けど現実問題それは異常で、合意でなければ犯罪枠に入る。人として終わってる行為だ。
とてもそんな自覚がないから続けてきたわけだけど、とうとう鉄槌が下されたらしい。

「自分の恥ずかしい姿を人に見られるのはどんな気分だ?」

継美さんはもう笑っても怒ってもいなくて、無表情でこちらを見下ろしていた。
「見て興奮するお前みたいな奴もいれば、人に見られて興奮する奴もいるだろ? お前も今度は後者になれるといいな」
嘲る言葉には腹が立ったけど、今はどうでもいい。あることで頭がいっぱいだった。
「あの……」
「ん?」
望むことはただ一つ。
「イ……イきたい……です」
もう限界だ。我慢も演技も、自尊心も。
これ以上持つのは不可能。自分で全部手放すぐらいなら、いっそメチャクチャにしてほしい。
「もう辛い……からっ……許してください……っ」
色んな所が濡れて靄がかかって、彼の顔もよく見えない。それでも耳だけは働いて、彼の透き通った声がよく聞こえた。
「じゃあ、エッチで悪い子の俺に触ってください、って言って」
この変態……。彼も凄まじく異常者だ。だがその馬鹿な台詞を選んだ理由は理解できた。誰にも、指一本でも触られたくない俺を完全に服従させる言葉だ。
でも……。
「……」
もういい。もう全部終わらせて、さっさと楽になりたい。

「エ……エッチで、悪い子の俺に……触ってください……!!」

この瞬間、俺は自分という人間を棄てた。プライドもなけなしの理性も、全部粉々に叩き割った。
「演技でも建前でもなく」
継美さんは俺の言葉を聞くと、今までで一番満足そうに頷いた。

「今までで一番良い台詞だよ、一架」

根本から中の蜜を掻き出すように、激しく先端へ向かって扱かれる。
「あ、あっ、あぁ!」
体と頭の理解が全然同じ位置に留まらなくて、必死に彼にすがりつく。視界の端で彼の愉悦に満ちた顔が映りこんだ。





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