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ともだち
#6
しおりを挟むなづなは丹波から離れると、窓を開けてそこに身を乗り出した。
「おい、危ないって! 何だよ急に!」
「いやぁ……やっぱり俺のこと殺せないみたいだからさ。自分で飛び降りないと駄目みたい」
「いや何でそうなんだよ!」
「三尋にも話しただろ。許せないんだよ。百回生まれ変わったとしても彼らが許せない。本当はそのナイフでメッタ刺しにしてやりたいぐらいなんだ!」
なづなは、躊躇わずに怒鳴り返してきた。今までの遠慮がちな笑顔とはまるで違う。……彼の本当の顔だった。
「でもできないじゃん。本当に殺す、なんてことできなかった。こんなに……こんなに憎いのに!」
彼は脚を引っ掛けて、手を離せば真下に落ちてしまう状態をとった。
「だから同じ方法で復讐した。なのにそんなことした自分も許せなくなった。三尋に会ってから怖いぐらい、冷めちゃったんだ。本当にごめんね。騙して、……嘘ばっかついて」
……そんな。
何で今さら、そんなことを言うんだ。
三尋は彼の目の前まで歩き、手を差し伸べた。
「確かに……お前は間違ってるよ。被害者だったけど、こいつらに復讐した時点で加害者だ。でもそれが死ぬ理由にはならないだろ。自分が悪いと思ってんなら、それこそ逃げるなんて卑怯だ! 生きろよ」
窓から入ってくる強風が唸り声を上げている。
「大丈夫だから……。俺が、お前を守るから」
なづなは外に身を乗り出しながらも、つい後ろを振り返った。
三尋……。
可哀相なほど青ざめた顔で、可愛らしいほど声を震わしている。
「こんな事になっても、俺はこれからもお前といたい。信じてもらえないかもしれないけど……俺もお前が好きなんだ」
そんな言葉に、何か意味はあったんだろうか。
言ったところで何か変わるんだろうか。
分からないが、考えるより先にそう叫んだ。
「え。好……?」
なづなにとって、それは生まれて初めての告白だった。
初めて、自分を受け入れてもらえた言葉。
そんな風に言ってくれる彼の心根はさっぱり分からなかったけど。単純に、自分が飛び降りるのを止めたいから……適当に言った言葉なのかもしれないけれど。
それでも、どんな行動も躊躇させる魔法の言葉だ。
「まだやり直せるはずだ。だから戻ってこい!」
そう言って自分の前に差し出されたその手は、とても大きく見えた。
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