26 / 47
除け者
#16
しおりを挟むどういう意味が分からず聞き返す。すると彼は忌々しげに呟いた。
「他に生贄にあった三人も、最初は皆強気でいた。けど一人になった途端、弱気になる。それ追い詰められた奴らの共通点かな」
「……」
分かるようで分からない話。だけどそれ以上訊くことはできなくて、去ってく炭野の後ろ姿を見ていた。
何となく、彼が完全に視界から消えるまで目を離してはいけない気がした。
……背を見せたら刺されるような危機感を、このとき感じていたのかもしれない。
「はぁ……」
何だかあれだけで疲れてしまった。とぼとぼと自分の教室に戻ると、いつもより少し騒がしい。だから入る前に、その場に留まって聞き耳を立ててしまった。
「次は俺達だ……誰がやってんだよ、こんなこと!」
「まぁ落ち着けって。本当は全部ドッキリかもしんないだろ」
「ドッキリなら、何で冴木や辻浦はまだ学校に来ないんだよ!」
教室の中心で取り乱しているのは、この前過激なことを言ってた丹波だった。彼は本当は誰よりも脅えていたのかもしれない。乱心して「もう先にターゲットを作ろうぜ」と言いだした。彼の台詞により、教室は険悪な空気に包まれていた。
周りのクラスメイトも、皆苛立ちを覚えている。
「丹波、お前なぁ……自分がターゲットになんなきゃそれでいいのかよ?」
「そうじゃねぇけど、このままじゃお前らだってヤバいぞ。……ほら、あいつなんかいいじゃん! 国崎だっけ? まだ転校してきたばっかだし、俺らのクラスだけど、仲間ってほどじゃないから」
まさかの、俺が指名されてしまった。
勘弁してくれ。超入りづらい……と思ってると、誰かが丹波の胸倉を掴んだ。
「お前、ふざけんなよ。三尋はもうクラスの仲間だし…誰かを仕立て上げればいいってわけじゃないだろ!」
そう言ってくれたのは、伏美。彼に強く言われたことで、丹波は気まずそうに視線を逸らした。
そこで納得してくれるかと思いきや、彼はまた悔しげにぼやく。今度は、俺も許せないようなことを。
「ま、まぁ落ち着けよ。こっちから生贄を差し出すのは、良い案だと思うけどな。どうせなら俺らじゃなくて、……ほら……芦苅とか、女みたいな奴を渡した方が向こうも喜ぶんじゃね?」
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
サファヴィア秘話 ―妖花満開―
文月 沙織
BL
王の側室となったラオシン。だが王族の男子を妾にしたことに反対する者も少なくはない。
若き貴族ディアニスは王の非道をただすために命がけで説得に向かった。
彼はかつて学問所でラオシンと何度か議論を交わした相手であり、互いに、そこはかとなく好意を抱いていた。
残酷な王アイジャルは、彼の前で、ラオシンを辱しめる。
泣いて嫌がるラオシンだが、身体はすでに開花して……。
前作の「サファビア秘話 ―闇に咲く花ー」を読まれた方へ。
今作も十八歳未満の方はご遠慮してください。
本作はファンタジーですが、作品世界の時代観や雰囲気を出すため、現在では不適切な表現が使用されております。
【R18】翡翠の鎖
環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。
※R18描写あり→*
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!
Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥
財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。
”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。
財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。
財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!!
青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!!
関連物語
『お嬢様は“いけないコト”がしたい』
『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中
『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位
『好き好き大好きの嘘』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位
『約束したでしょ?忘れちゃった?』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位
※表紙イラスト Bu-cha作
標本少年
風雅ゆゆ
BL
親の都合で東京に引っ越すことになった白河京(しらかわきょう)は、転校早々かつあげにあっている生徒を目撃し、思わず助けに入ったが……
被害者生徒の代わりに、自分がターゲットにされ、生徒達の性欲処理係として扱われる日々が始まってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる