人の恋路を邪魔しちゃいけません。

生徒会長の奉仕(監視)

１３

梅雨明けが感じられる、晴天が続く。今日も智紀は部活へ顔を出そうとしていたが、その直前に“彼”から呼び出しが掛かった。

｢何かお前と話すの久しぶりだな、七瀬？｣

人気の無い階段の踊り場で、智紀は笑顔を浮かべる。教室でもすれ違うことが多かったせいか、二人きりになるのは本当に久しぶりだと思う。相も変わらず仏頂面の少年、七瀬と相対するのは。
｢話があるんだろ。何？｣
｢あぁ……めんどくさいから単刀直入に言う｣
彼はなにかを躊躇っていたが、咳ばらいしてからハッキリ告げた。

｢お前、サッカー部辞めろ｣
｢はぁ！？ 何で！｣

唐突だし、普通に耳を疑う言葉だった。
今一番頑張ってんのに、辞めろとか……！
｢とにかく辞めろ、今日中に退部届け出しとけ｣
｢待て待て、何で！ 理由を言えよ！｣
｢辞めろっつってんだよ、四の五の言わず従え｣
彼のその問答無用さは、さすがにカチンときた。
｢やだね。お前に従う筋合いはないし｣
｢あぁ？ テメェ、何様だよ……てっ！｣
怒る七瀬を、強引に壁に押し付けた。
｢こっちのセリフ。部活入れって言ったり辞めろって言ったり……勝手過ぎねえ？｣
｢知るか。そう思うのはアンタの勝手だろ｣
答えにならない答えを吐いて、彼は抵抗する。

｢俺は俺なりに考えて言ってんだよ。アンタみたく考えなしの馬鹿には難しいかもしれないけどな！｣
｢この……っ！！｣

本当に、人を怒らせる才能はずば抜けてると思う。
故意じゃないとしても、許せるレベルじゃなくなってきてるけど。
｢前から気付いてはいたけどさ……お前、そうやって自分勝手に振る舞ってるから独りなんじゃねえのかよ！？｣
｢だったら何だ！？ いいから離せ！｣
何かだんだん話とズレた取っ組み合いに変わってきてる。それでも今は無我夢中で、考える余裕は無かったけど。
｢……大体俺が自分勝手になったのは独りになってからだ！ だから関係無いんだよ！｣
｢いてっ！｣
かなり強い力で押し返され、智紀は彼から手を離してしまった。
｢おい、七瀬！｣
止めようとしたけど相当ぶちギレてる様で、返事もせずに彼は階段を降りて行った。信じらんねぇ。アレじゃただのヤンキーだろ。

｢何なんだよ……っ！｣

思い通りにいかないと怒る駄々っ子みたいだ。 
あと、“独りになってから”……ってどういう意味だったんだろう。