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集いし六人の勇者(ギタリスト)

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「どうも、平井健だ。皆からは『ケン君』と呼ばれている。」
そう言うと、青年…平井健は右手を差し出した。
「初めまして音守眩魏です。」
眩魏も同じく右手を差し出し、平井と固く握手をした。
「知っている。外から聞こえてたよ。」
「なにそのやりとり。映画みたいだね!いいなぁー!」
「嫌ですよ!秋空先輩と握手したら手が潰れてしまいますよ!」
「眩魏の意見に同意だな。」
平井がそう言った瞬間みんなが笑った。
「入部希望だったな。待ってろ。」
「はい!」
平井は席を立ち、棚の中から紙切れを取り出し、眩魏に差し出した。
「上から二段目の所に名前を書いてくれ。」
「はい!!」
元気な声で返事をし、筆圧の濃い字で
『音守眩魏』と書いた。
「よし、それじゃあ、改めて。」
スーハーと深呼吸をし、そして
「ようこそ、兎温中クラシックギター部へ!歓迎するよ、眩魏」
「ありがとうございます!」
「何か困った事があったら言ってくれ。」
「それじゃあ、早速しつもんなんですけど…。」
と、眩魏は申し訳なさそうに手を挙げた。
「どうした?」
「ヘヤが汚い『理由』を教えてください。」
「あぁ、…いいよ。教えてあげよう。」
平井は苦笑いをしていた。また、秋空先輩も、いつになく暗い顔をしていた。
「部員の人数がいないから部費が集まらず、掃除道具が買えない。他の部活から借りればいいが何しろ規模が小さいから他の部がメンツの為に貸してくれないんだ。あんなへっぽこクラブに関わりたくないってな。」
「そうだったんですか…すいません。つらい話をさせてしまって…。」
部屋の空気がさらに悪くなった。
「いいや、いいよ。そんな事よりお前が入ったからいいんだ。心配すんな。」
「そーだよ眩魏くん!お前が辞めなければ良いだけの話だも~ん!」
「そうですよね…俺、頑張ります。頑張って部員を集めまくってつぶれかけ何て絶対に言わせないようにします!」
「そうだそのいきだよ眩魏くん!」 
「はい!」
「よし、それじゃあギターの星に向かって走り込みだ!俺の後に続け!」
「解りました!」
「止めてくれ!スポ根みたいなことしないでくれ!頼む!」
その時、
「ダダダダダダダダッッッ!」
とてつもない足音が猪の突進のごとく近づいてきた。
「なんなんですか?!」
「安心していい。俺らのじゃじゃ馬が帰ってきただけだ。」
「さぁ、これでTG6全員集合だよ!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおお!」
バン!とドアが壊れそうなぐらいの勢いでドアが開いた。
「新人がはいってるって!!?本当か?」
「ちょっと、邪魔や!どいてくれへんか?」
「どうでもいいから入ってくれ!」
「ゆっくりしていこうなの!」
そこには三人の青年が入り口に詰まっていた。
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