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第2話
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その日、夕方から降り始めた雨は、深夜になってもしとしとと降り続いていた。
時折雷も鳴る、そんな丑三つ時。
せんべい布団で寝ていた亀吉は、ガラケーの着信音で飛び起きた。
「ひゃ、ひゃい! 居酒屋ヤケクソですっ! いらっしゃいませ!」
「え、えっ!?」
聞こえてきたのは、菊奈の声だ。
寝ぼけたすっからかんの頭で、ああ今は結婚相談所でしたっけと慌てて言い直した。
「あっ、す、すみません。ヤケクソ結婚相談所の鶴田です」
「鶴田さん! わ、私、どうしていいか……!」
雨音混じりに泣き声を上げる菊奈は、すっかり動揺しているようだ。
「ど、どうされましたか?」
「高宮さんが事故にあったんです! 今、病院の外から電話してて……ああ、私の呪いのせいで高宮さんが……!」
「おおおお落ち着いてください、めめめ冥府さん。どどどどどこの病院でしょうか?」
落ち着いていないのは、亀吉も同じである。
「市内の藪総合病院です……」
「わ、わかりました。すぐ伺いますから!」
◇
亀吉と令子が病院に着くと、がらんとした通路のソファに、ひとり腰掛けていた菊奈が立ち上がって出迎えた。
その目は、すっかり泣き腫らしたのか真っ赤である。
「鶴田さん! こんな夜更けにすみません!」
「た、高宮様の具合はいかがですか?」
「今、集中治療室に入っていて……どんな状態かも……」
「ひゃあ! なんてことだ!」
頭を抱える亀吉の脇で、タバコの煙をぷかーと吐き出しながら令子が冷静に菊奈を見つめた。
「なにがあったんだい。落ち着いて話してみな」
「はい……私のアパートに高宮さんが来ていたんですが、高宮さんが明日朝に打ち合わせがあるから帰るって言ったんです」
「ちょっと待て。こんな時間におまえのアパートに高宮が来てたってのは、つまりそういうことだな?」
「……はい」
菊奈は気まずそうに、うな垂れた。
「それで……アパートの前で高宮さんを見送っていたら、目の前でいきなり自転車に撥ねられてしまって。高宮さんは倒れて頭から血が流れていて……!」
「撥ねたやつは、どうした」
「そのまま逃げてしまいました。雨で黒いポンチョを着ていて、一瞬のことだったんで顔もわからなかったんですけど……」
「ふうむ」
「全て私が悪いんです! 私のせいなんですっ! 呪われているのをわかっていながら、高宮さんのこと……!」
両手を顔に当てて泣き崩れる菊奈を見て、今更ながら亀吉は状況を把握したのだった。
まさか……俺様が苦手って言ったのに、あんな男が好きになるなんて。
いやはや本当に女心ってのは、さっぱり理解できません!
亀吉がひとり唖然としていると、集中治療室の扉が開いた。
時折雷も鳴る、そんな丑三つ時。
せんべい布団で寝ていた亀吉は、ガラケーの着信音で飛び起きた。
「ひゃ、ひゃい! 居酒屋ヤケクソですっ! いらっしゃいませ!」
「え、えっ!?」
聞こえてきたのは、菊奈の声だ。
寝ぼけたすっからかんの頭で、ああ今は結婚相談所でしたっけと慌てて言い直した。
「あっ、す、すみません。ヤケクソ結婚相談所の鶴田です」
「鶴田さん! わ、私、どうしていいか……!」
雨音混じりに泣き声を上げる菊奈は、すっかり動揺しているようだ。
「ど、どうされましたか?」
「高宮さんが事故にあったんです! 今、病院の外から電話してて……ああ、私の呪いのせいで高宮さんが……!」
「おおおお落ち着いてください、めめめ冥府さん。どどどどどこの病院でしょうか?」
落ち着いていないのは、亀吉も同じである。
「市内の藪総合病院です……」
「わ、わかりました。すぐ伺いますから!」
◇
亀吉と令子が病院に着くと、がらんとした通路のソファに、ひとり腰掛けていた菊奈が立ち上がって出迎えた。
その目は、すっかり泣き腫らしたのか真っ赤である。
「鶴田さん! こんな夜更けにすみません!」
「た、高宮様の具合はいかがですか?」
「今、集中治療室に入っていて……どんな状態かも……」
「ひゃあ! なんてことだ!」
頭を抱える亀吉の脇で、タバコの煙をぷかーと吐き出しながら令子が冷静に菊奈を見つめた。
「なにがあったんだい。落ち着いて話してみな」
「はい……私のアパートに高宮さんが来ていたんですが、高宮さんが明日朝に打ち合わせがあるから帰るって言ったんです」
「ちょっと待て。こんな時間におまえのアパートに高宮が来てたってのは、つまりそういうことだな?」
「……はい」
菊奈は気まずそうに、うな垂れた。
「それで……アパートの前で高宮さんを見送っていたら、目の前でいきなり自転車に撥ねられてしまって。高宮さんは倒れて頭から血が流れていて……!」
「撥ねたやつは、どうした」
「そのまま逃げてしまいました。雨で黒いポンチョを着ていて、一瞬のことだったんで顔もわからなかったんですけど……」
「ふうむ」
「全て私が悪いんです! 私のせいなんですっ! 呪われているのをわかっていながら、高宮さんのこと……!」
両手を顔に当てて泣き崩れる菊奈を見て、今更ながら亀吉は状況を把握したのだった。
まさか……俺様が苦手って言ったのに、あんな男が好きになるなんて。
いやはや本当に女心ってのは、さっぱり理解できません!
亀吉がひとり唖然としていると、集中治療室の扉が開いた。
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