ヤケクソ結婚相談所

夢 餡子

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第1話

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あれ……わたし、寝ちゃってた?

ぼんやりとした頭で、彩はうとうとと夢心地である。
ああ、朝日が眩しい。会社行かなきゃ……。

ん?
なんだかベッドがいつもより広く感じるな~。シーツもこんなにパリッとしてたっけ。

うーんと伸びをすると、手が何かに当たった。
それは、なんだか柔らかい感触。まるで人のからだのような……。
えっ……これって……!

急にはっと目が覚めて、上体を起こした。
そこは見知らぬホテルの一室である。
そして彩の隣で体を丸めて眠っているのは……竹下くん!?

慌てて彩は、竹下の体を力ずくで無理矢理引き起こす。
そして、両肩をつかんで、その体を激しくゆさゆさと揺らした。

「た、竹下くん!!」

揺らすたびに、竹下の頭は前後にがくがくする。
それでやっと、目を覚ましたようだ。

「ほにゃ? あれ、杉崎しゃん……ろうしましたか……?」

だめだ。
夜の魔法が解けて、すっかりいつもの竹下くんである。

「ななななんでっ! 私、竹下くんとホテルにいるのお~!?」

彩の悲痛な叫びにも、竹下は眠そうに目をごしごしとこすっている。

「昨夜のこと、覚えてないんれすか?」

彩は必死に記憶を探った。

ええと、竹下くんに誘われてオリーブの森へ行って……。
話をしているうちに、なんだかテンションが上がってしまい……。

ああ、それで。竹下くんに勧められるがままに、我を忘れて食べ始めたんだっけ。
おそらく、メニューに載ってる料理の全てを食べ尽くした気がする。
無意識に食べているうちに、いつものように幽体離脱をしてしまい……その後はまるで記憶がない。

「彩しゃん、フォークを手にしたまま急に電池が切れたように、動かなくなっれしまったんれす。それで仕方がないから、僕が担いれ近くのホテルに運びこんだんれすよ」
「マ、マジで……!」
「運ぶの、めっちゃ大変れした。からだじゅう、筋肉痛れす」
「そ、それは申し訳なかったけど、そんなことよりっ!!」

彩はテンパって、自分のからだに目を向ける。
うん、ちゃんと服は着ている。竹下くんもだ。
だけどさ……!

「……竹下くん、わたしたち、何もなかったよね!?」





その頃───。

アズサは顔をしかめて頭を押さえながら、ベッドから起き上がった。

あーあ。また飲み過ぎちゃった。頭がずきずきする。
あれ、なんで私、ハダカなんだろう。
てか、ここはどこ。ホテル?

辺りを見渡して……ぎくっとした。
ベッドの隣に、東雲が寝ていたのである。しかも彼もハダカのままで。

「ちょ、ちょっと! 起きて!!」

その金切り声に、東雲はうーんと唸りながら顔をしかめる。

「ほらっ、ちゃんと目を覚ましなさいってばっ!!」

肩を揺すると東雲は、はっとしたように飛び起きた。

「えっ!!」

お互い素っ裸のまま、ベッドの上で正座して呆然と顔を見合わせるふたりだった。

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