15 / 114
第1話
5
しおりを挟む
◇
すっかり遅くなった帰り道。
彩の心は、ボロボロだった。
あれから2時間に渡ってみっちりと、美希からキッツいアドバイスを受けたのである。
それは彩にとって、ショックの連続だった。
『39歳の今から婚活するなら、甘い願望はすっかり捨て去ること。正直に言って彩のレベルだと、相手の年齢は最低でも45歳以上、容姿不問。年収はまあ、300万程度かな。それで、やっと見つかるかどうかなんだから!』
その言葉にグサリときた。
それが現実だと美希は言うが、夢も希望もないじゃないか。
そんなに私って、価値のない女なのだろうか……。
『それから、せめて10キロ以上は痩せること。彩はぽっちゃりなんかじゃない。太ってるのよ。アラフォーの上に太っているなんて、婚活市場では無価値。いい? 誰からも見向きもされないの!』
そう言われても、ずっとこの体型なんだから仕方ないじゃない。
美希と別れた後、あまりのショックと空腹で、ラーメン3杯に餃子5皿を食べてしまった。
この調子じゃ、どうやっても痩せるのは無理だ。
『とにかく選り好みせずに、紹介されたら誰とでも会うこと。例えそれが不細工で貧乏な年寄りであってもね。一度逃したチャンスは二度と巡ってこないと心に命じなさい!』
……ということは。
この前ヤケクソ結婚相談所で紹介された、カバみたいな顔をした留三さんであっても、付き合うべきだったのだろうか。
いやいや、さすがに留三さんは、生理的に無理だ……。
しかも無職だったし。
それでも結婚に向けて付き合うのは、どうしても考えられない。
今になって、急に結婚に焦り始めたけど……。
やっぱり、今頃になって結婚するのは難しいのかな……。
すっかり気分がヘコんで夜道をとぼとぼ歩いていると、スマホが鳴った。
「はい……」
『お、お世話になっております、ヤケクソ結婚相談所の鶴田です』
鶴田さんか。
なんか相変わらず、おどおどしてるな。
『せ、先日は、大変ご迷惑をお掛けして、申し訳ございませんでした!』
「いえ……」
『そのお詫びと言ってはなんですが……杉崎様だけの、スペシャルなプランをご用意させて頂きました』
「私だけの、スペシャルなプラン……?」
『はい。お年頃の素敵な男性会員をたくさん集めた婚活パーティーを開催致します。しかも、参加する女性は杉崎様、おひとりだけとなります!』
そういや美希も、結婚相談所が開催する婚活パーティーは積極的に参加しろって言ってたな……。
しかも参加女性は私だけって……男性がよりどりみどりってこと!?
『ただ、特別なパーティーですので、別途参加費が1万円ほどかかりますが……いかがでしょうか?』
1万円は痛いが……鶴田さんも私のためを思って、一生懸命企画を考えてくれたんだろう。
そう思うと、申し訳ない気持ちになってしまう。
とりあえず……参加してみるか。
たくさん男が参加するのなら、こんな私だって僅かながらでもチャンスはあるかもしれない。
「……わかりました。じゃあ、参加します」
『あ、ありがとうございます! ききききっとご期待に答えますからっ!』
電話を切った彩は、すっかり沈んでいた気持ちが、ちょっとだけ晴れてきたのを感じていた。
すっかり遅くなった帰り道。
彩の心は、ボロボロだった。
あれから2時間に渡ってみっちりと、美希からキッツいアドバイスを受けたのである。
それは彩にとって、ショックの連続だった。
『39歳の今から婚活するなら、甘い願望はすっかり捨て去ること。正直に言って彩のレベルだと、相手の年齢は最低でも45歳以上、容姿不問。年収はまあ、300万程度かな。それで、やっと見つかるかどうかなんだから!』
その言葉にグサリときた。
それが現実だと美希は言うが、夢も希望もないじゃないか。
そんなに私って、価値のない女なのだろうか……。
『それから、せめて10キロ以上は痩せること。彩はぽっちゃりなんかじゃない。太ってるのよ。アラフォーの上に太っているなんて、婚活市場では無価値。いい? 誰からも見向きもされないの!』
そう言われても、ずっとこの体型なんだから仕方ないじゃない。
美希と別れた後、あまりのショックと空腹で、ラーメン3杯に餃子5皿を食べてしまった。
この調子じゃ、どうやっても痩せるのは無理だ。
『とにかく選り好みせずに、紹介されたら誰とでも会うこと。例えそれが不細工で貧乏な年寄りであってもね。一度逃したチャンスは二度と巡ってこないと心に命じなさい!』
……ということは。
この前ヤケクソ結婚相談所で紹介された、カバみたいな顔をした留三さんであっても、付き合うべきだったのだろうか。
いやいや、さすがに留三さんは、生理的に無理だ……。
しかも無職だったし。
それでも結婚に向けて付き合うのは、どうしても考えられない。
今になって、急に結婚に焦り始めたけど……。
やっぱり、今頃になって結婚するのは難しいのかな……。
すっかり気分がヘコんで夜道をとぼとぼ歩いていると、スマホが鳴った。
「はい……」
『お、お世話になっております、ヤケクソ結婚相談所の鶴田です』
鶴田さんか。
なんか相変わらず、おどおどしてるな。
『せ、先日は、大変ご迷惑をお掛けして、申し訳ございませんでした!』
「いえ……」
『そのお詫びと言ってはなんですが……杉崎様だけの、スペシャルなプランをご用意させて頂きました』
「私だけの、スペシャルなプラン……?」
『はい。お年頃の素敵な男性会員をたくさん集めた婚活パーティーを開催致します。しかも、参加する女性は杉崎様、おひとりだけとなります!』
そういや美希も、結婚相談所が開催する婚活パーティーは積極的に参加しろって言ってたな……。
しかも参加女性は私だけって……男性がよりどりみどりってこと!?
『ただ、特別なパーティーですので、別途参加費が1万円ほどかかりますが……いかがでしょうか?』
1万円は痛いが……鶴田さんも私のためを思って、一生懸命企画を考えてくれたんだろう。
そう思うと、申し訳ない気持ちになってしまう。
とりあえず……参加してみるか。
たくさん男が参加するのなら、こんな私だって僅かながらでもチャンスはあるかもしれない。
「……わかりました。じゃあ、参加します」
『あ、ありがとうございます! ききききっとご期待に答えますからっ!』
電話を切った彩は、すっかり沈んでいた気持ちが、ちょっとだけ晴れてきたのを感じていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
叔父と姪の仲良しな日常
yu-kie
ライト文芸
社会人になった葉月魅音(ハヅキミオン)はひとり暮しするならと、母の頼みもあり、ロッティー(ロットワイラー:犬種)似の叔父の悪い遊びの監視をするため?叔父の家に同居することになり、小さなオカンをやることに…
【居候】やしなってもらう感じです。
※同居と意味合いが違います。なので…ここでは就職するまで~始め辺りから順に同居と表現に変えて行きます(^^)/
アッキーラ・エンサィオ006『彼女が僕のほっぺたを舐めてくれたんだ』
二市アキラ(フタツシ アキラ)
ライト文芸
多元宇宙並行世界の移動中に遭難してしまった訳あり美少年・鯉太郎のアダルトサバイバルゲーム。あるいは変態する変形合体マトリューシカ式エッセイ。(一応、物語としての起承転結はありますが、どこで読んでも楽しめます。)グローリーな万華鏡BLを追体験!てな、はやい話が"男の娘日記"です。
白衣とブラックチョコレート
宇佐田琴美
ライト文芸
辛い境遇とハンディキャップを乗り越え、この春晴れて新人看護師となった雨宮雛子(アマミヤ ヒナコ)は、激務の8A病棟へと配属される。
そこでプリセプター(教育係)となったのは、イケメンで仕事も出来るけどちょっと変わった男性看護師、桜井恭平(サクライ キョウヘイ)。
その他、初めて担当する終末期の少年、心優しい美人な先輩、頼りになる同期達、猫かぶりのモンスターペイシェント、腹黒だけど天才のドクター……。
それぞれ癖の強い人々との関わりで、雛子は人として、看護師として成長を遂げていく。
やがて雛子の中に芽生えた小さな恋心。でも恭平には、忘れられない人がいて─────……?
仕事に邁進する二人を結ぶのは師弟愛?
それとも─────。
おっちょこちょいな新人と、そんな彼女を厳しくも溺愛する教育係のドタバタ時々シリアスな医療物ラブ?ストーリー!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる