従者♂といかがわしいことをしていたもふもふ獣人辺境伯の夫に離縁を申し出たら何故か溺愛されました

6 ★

「大事な妻を傷付けるわけにはいかない」

　ラーファはあくまでも生真面目に応え、顔を近付けた。
　ぴったりと閉じた割れ目をラーファの舌先になぞられた瞬間、イズの腰がびくっと動いた。キスや胸への愛撫とも違う強い刺激に、肺から息が押し出される。

「はっ、はぁ……あぁ、あっ！」

　イズは両手で顔を覆い、身体を小刻みに震わせた。今のシチュエーションと、ラーファの舌の感触によって頭がおかしくなりそうだった。

「心配になるくらい感じやすいな、イズは」

　ラーファは視線だけを動かしてイズの様子を窺《うかが》う。イズの敏感な場所からとめどなくあふれる透明の蜜を唇を押し付けて軽く吸い、より奥へと舌を差し入れた。柔らかい舌がちゃぷ……ちゅぷと音を立て、イズ自身も知らない場所をこじ開けていく。

「はぁ……ぁんっ……お願い、ラーファさま。ほんとに、変に……なり、そ……」

　イズは何か得体の知れない感覚に心と身体が追い立てられている気がした。加速度的に呼吸と鼓動が早くうるさくなり、意識が朦朧《もうろう》とする。だが感覚だけは鋭く、太腿を押さえるラーファの手や、荒い息遣い、舌の動きをしっかりと感じ取れた。

「ふっ、やめてほしいようには見えないよ？　ここもこんなに感じて」

　ラーファは笑みをこぼすと、小さく膨らんだ花芽を唇で挟みこんだ。そのまま唇でやんわりと圧をかける。
　ラーファの尻尾が楽しげにぱたぱたと振れているのが見えたが、イズにそれを可愛いと思う余裕はなかった。

「ひゃんっ！　そこ、あぁん……だめ……感じすぎ、ぅん……ま、す……」

　イズは無性に切なくなり、自分の指を噛んだ。もう片方の手は意識せず胸に添えていた。

「……悪い、我慢できそうにない」

　突然ラーファは呻くように言い、自分の顔を手で覆い隠す。

「えっ」
「無理だ。もう待てない」

　ラーファは下衣《かい》から屹立したものを性急に取り出した。
　知識として知ってはいるが、まったく見慣れないその威容《いよう》にイズは目をしばたたく。

「やらしすぎる」

　イズの耳元で、ラーファは怒ったような声色で囁いた。イズの手の上から胸を揉みしだき、男根を潤んだ場所にあてがう。

「きゃっ、ラーファ様!?」

　イズは反射的に腰が引けてしまう。だがラーファに腰を掴んで押さえられた。
　ラーファの濡れた屹立の先端が、ゆっくりと秘裂を擦りあげる。淫らで粘度の高い水音がイズの鼓膜を震わせた。

「あぁ……こんな……」

　恥ずかしさと興奮でイズの顔がまた熱くなる。濡れた粘膜が擦れ合うのがもどかしくて気持ちが良い。けれど、そんなはしたないことは口にできなかった。
　理性とは裏腹に、ラーファを受け入れやすいように自然とイズの腰が浮く。

「入れるよ。痛かったら無理はしないで」

　ラーファは手の甲でイズの頬を撫でた。ふわふわの被毛が肌を優しくくすぐる。
　イズが小さくうなずくのを見届けてから、ラーファは腰を進めた。
　熱い塊に押し広げられる痛みに、イズの目の端に涙が溜まる。悲鳴が出そうになるのを噛み殺した。

「イズ？」

　異変を察知したラーファが心配そうにイズの顔を窺う。

「んっ……来てください、ラーファ様。わたくしなら、大丈夫ですから」

　イズは笑みを作り、顔を見られないようにラーファの身体にしがみついた。
　ラーファはイズの頭を撫で、イズの中に自身を埋める。

「……いっ……はぁ……あ、ぁん！」

　イズの唇から息と呻きの中間のような声があふれた。ラーファを深く受け入れるほど、痛みに甘い刺激が混じる。

「イズの中、温かくて気持ち良い」

　ラーファはうっとりと囁き、ちゅっと音を立ててイズの耳にキスをした。
　ラーファが感じてくれているのが嬉しくて、イズはラーファの首元に額を押し付ける。

「大丈夫？　痛くはない？」
「少し、変な感じはありますけれど……ラーファ様と一つになれたことが、嬉しい、です……」

　イズは自分の腹部に手を当て、微笑んだ。
　ラーファの巻き尻尾がまっすぐに伸び、ぶんぶんと風を切るほど激しく揺れる。

「ラーファ様？」
「本当に、君は……」

　ラーファは顔を押さえ、深くため息をついた。

「どうにか理性的であろうとする俺の努力を、ことごとく打ち砕いてくれるな」
「はぁ……」

　発言の意図がわからないイズは、生返事しか返せない。

「我が細君は、本当に性質が悪くて可愛いよ」

　ラーファはイズの頬にくちづける。それが合図だったかのように腰を突きあげ始めた。
　最初こそ異物感が強かったが、抽送が繰り返されるうちに、身体の内側がとろりと溶けるような感覚があった。ラーファを強く求めてイズの内奥がきゅっと締まる。

「あ、あっ、あぁっ……うぅん……ラーファさま、ぁ……」

　イズは無我夢中でラーファを抱き寄せ、自ら唇を重ねた。唇を食み、舌が絡まり、互いの体温が混じり合う。

「くっ……ぅ……良すぎて、あまり持たないかもしれないな」

　ラーファはわずかに眉をひそめ、腰を打ちつける速度を速めた。イズが感じる場所を的確に刺激する。

「あぁ、ああっ！　だめ……おかしく、なっちゃう、んっ……うぅぅん……！」

　最奥を突きあげられた瞬間、イズは自分の中で何かが弾けた気がした。総身が震え、背中が弓形《ゆみなり》に反る。
　どろりとした熱が中に注がれるのを感じながら、イズは意識を手放した。

◇　◇　◇

「今度はわたくしの好きにさせていただいても良いですよね？」

　初めて交わった後、完全に理性を飛ばしたラーファによって、さらに三度も好き放題にされたイズは、両手の指をわきわきと動かした。

「もう本当にダメだと言うからやめたのだけれど、君がその気なら俺はやぶさかではないよ」

　ラーファは艶っぽく微笑み、イズに覆いかぶさった。

「違います！」

　イズは力強く否定し、ラーファの身体を押しのける。

「尻尾に触りたいんです！」
「いいけれど、後悔しない？」

　ラーファの尻尾が誘うように妖しく揺れた。

「どうしてですか？」

　イズは首をかしげる。
　今までは遠慮して言えなかったが、柔らかそうなもふもふの巻き尻尾にずっと触りたかった。仮に想像しているような手触りでなかったとしても後悔などするわけがない。

「イズは少し獣人について学んだ方がいいね。俺たちにとって尻尾も性感帯の一つだ。それに触れたいということは、『性交渉をしましょう』と言っているのと同義だよ」

　ラーファは意地悪く目を細め、自分の尻尾をまっすぐしごくように撫でた。手を離すとくるんと丸まる。
　イズは自分の発言の重大さに顔を赤くした。

「もふもふだけしたいのですが、ダメですか？」

　イズはめげずに交渉する。

「ダメ」
「これから夕食の用意もしなきゃいけないですし……」
「一食くらい抜いても死なないよ」
「本当にもふってするだけで良いので」
「ダメ」
「だめ？」

　イズは両手を合わせ、上目遣いでラーファを見つめる。

「可愛く言ってもダメ」

　ラーファはぽんっとイズの頭に手を乗せた。

「俺の過失ではあるけれど、二十一日も食べられなかったんだ。まだ全然たりないよ」

　ラーファは噛みつくようなキスをし、イズの唇を舌先でなぞった。


<終>