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第1章 似て非なるは表裏一体

1.最凶の武神③

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どうしてこうなったのだろう⁈

ガチャカチャと小さく音を立てながら、目の前に皿が並べられていく。
皿には見た事もない料理が盛られ、かつ、湯気といい匂いを立てている。
ちらっと伏し目にしていた目線だけをあげる。
次々と皿やらはし(食器文化は似てるらしい…)を並べるのは、12~3歳位の少年だ。
給仕するのは彼だけで、黙々とそれもこなしていく横顔は寡黙かもくに尽き、声をかけるのもはばかられる。

「食事が済みましたら、片付ける為に参ります。それでは」
「ま、待ってくれ!話、話先に聞きたい!!」

ペコリと頭を下げ去ろうとするその姿に、俺は咄嗟とっさに声をかけた。
正直、空腹は感じている。
帰宅途中だったし、突然起きた理解不能な事態に混乱しまくり、すっかり忘れ去っていたそれは、目の前のいい匂いのする料理に触発しょくはつされ、今にも腹が鳴りそうだ。
が、だからと言って、悠長ゆうちょうに出された食事を取れるほど、俺も神経図太くない。
空腹を満たすより先に、事態を把握はあくし、とりあえず、今、自分が置かれてる状況を知り安心を得たい。

「話……?ご説明はお受けになったのでは?」
「受けた…というか、正直、まだ、あまり理解できてない」

いぶかるように眉根を寄せ、少年が首を傾げる。言われた意味が分からないといった体だが、俺だって他に言いようがないのだからしょうがない。
なにせ、今、この状況になっている事も訳が分かっていないのだ。
それというのも………ーーーーーーーーーー

            *
            *
            *
            *
            *

伸ばされた天后の手を思わず払い除けた。
パシンと、思いの外小気味良い音を立てて払われたそれに、天后は怒るでもなく、まじまじと俺を見つめた後、クッと喉奥で笑いを立て、堪え切れないとばかりに吹き出す。

「あははは!!自分、ほんに可愛いわぁ。自慢やないけど、俺、こんなにねろうた子から拒絶きょぜつされたん初めてや」

目端に涙を浮かべ、くつくつと籠もった笑いを立て、振り払われた手をプラプラさせながら意味深な言葉を向けられるが、俺には正直笑われる覚えもない。
手を払い除けてしまったのは無意識だ。狙ってやったわけじゃないし、ましてや、天后を笑わそうと思ったのでもない。
それに……
天后こいつ、今狙うとか言ってなかったか?
奇異きいな物を見るような目を向けてしまうが、まったく意に介してないようだ。得体の知れないものを相手してるようでひるんでしまうのも無理はなく…

「いい加減にしろ、天后……何がしたいのか分からんぞ」

俺の心境を代弁するように、騰蛇が言葉を放つ。
同じ意味が分からないでも、目の前にいる2人は違って、騰蛇は何を考えているのか分からないが、俺に興味がないのは分かる。天后は何を考えているのか分からないし、何をしたいのかも分からない。
同じ分からないなら、どちらかと言えば……

「あ~らら?そっち行くん?」
「え?ぁ………」

天后の言葉にハッとなり、自分を見つめて思わず狼狽うろたえた。
いつの間にか、騰蛇の陰に隠れるように体が添い、俺の手は意図せず騰蛇の袖を掴んでいる。

うわ⁈俺、何やって⁉︎

内心動揺どうようしまくり、自分のあまりの意味不明さに言葉を無くす。
掴んだ袖を離さなきゃと思えば思うほど手が動かなくなり、変な汗が止まらない。
袖を掴まれた騰蛇が無言なのもそれに拍車はくしゃをかけた。
一体、どんな顔をしているのか。気にはなるが、怖くて顔を上げられない。

「何これ?たのしわぁ。良かったな、騰蛇、ご指名や。お前が連れてくしかないで?」

肩を震わせ笑いながら天后が言うが、騰蛇は依然いぜん無言のまま。
何も言えないでいる俺に、無言のまま、騰蛇が腕を引き袖が手から外れた。
ずっと握ってたい訳ではなかったが、そんな風にされると拒否されたようで複雑だ。
なんとなく気不味い。

「連れてくだけだ……それ以外、何を言われようと俺は関わらん」

ハッとして顔を上げるが、騰蛇はすでにこちらへ背を向けていて、顔から意図と感情を伺い知れない。

「やって?なら、行こか?まぁ、どっちみち、次位じいさんに噛み付かれんのは決まりやけどな」

あははと言葉ほど大事とは思えない軽快な笑いを上げ、天后に促され、やや躊躇ためらいつつ、2人に連れられ歩き出す。

            *
            *
            *
            *
            *

「その時点で、騰蛇様からも天后様からも何も聞かされてない……と?」
「うん…まぁ、特に、何、も?」

ポツリと答える俺に、少年が頭が痛いとばかりにこめかみを手で押さえる。

「それからお二方に連れられ?」
「うん……え、、っと、太子、、さん?とかいう人ンとこ……」

連れてかれて……ーーーーーーーーーーーーーーーー












           
            
            
            
         

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