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第4章 白花の聖女
5.黒と白⑧
しおりを挟む「どういうことだ!説明しろ、シャイア!」
近衛騎士の青年より報告を受け、俺とカイザーの話し合い(?)は一旦保留。取り急ぎ屋敷に戻ると、使者の面々は応接間と思しき部屋にて、優雅をお茶をしているという場面に落ち合う。
カイザーは不在の中、しかも、ここへの移動滞在事後報告。皆、顔見知りの幼馴染とは言え、よくもここまで平然としてられるもんだ。
シャイアに至っては、勝手知ったる何とやらとばかりに家令に用意させたのか、果物盛り盛りのケーキを黙々と食べてるし……
眉間に縦じわ、こめかみに怒りマークを浮かべたカイザーが、すわと目を剥き、殊更、ゆったりとお茶を啜るシャイアに問い質す。
「どういうとは?聞いていないのか?見て分からんか?」
「聞いてもないし、見てもさっぱりだ!だから、聞いてんだろうが!」
何が問題だとばかりなシャイアに、カイザーがキレる。
まぁ、気持ちはわからないでもない。
もうだいぶ慣れたが、シャイアは相変わらず我が道を行くだ。
「城の貴賓室の壁が崩れ落ちたんだ」
「それは聞いた!」
「じゃ、そういう事だ!」
「詳しく言えッッッ!!!!!」
シャイアの代わりにジオフェスが口を開いたが、益々カイザーを怒らせるだけで終わる。
口を開かせない方がいいツートップ。
期待通り(そんな期待は要らねぇけど)の言動かましてくれて、呆れるより感心してしまう。
「まぁまぁ、カイザーも落ち着いて?座ったら?お茶を用意させるし、ケーキもあるよ?」
「ここは俺の屋敷だ……エルシア」
頼むから、お前も口開くな……エルシア。
駄目だ。
まったくもって会話になんねぇ。
まともな奴が1人も居ないのか?
第一、使者…ジオフェスは皇国から離脱。エルシアは正式な使者じゃないから、実質、この場で使者と呼べるのはシャイアだけだ。
あと2人。居るはずの者は居ないし、話も進まない。
どうしたもんかと思案する中、部屋の扉がノックされる音が耳に届いた。
「入れ!!」
苛立ちMAXなカイザーの応えに、扉が開いた。
入って来たのは困惑しきったジディと、妙に気不味そうなキリアン。
良かった。
ジディとキリアンなら上手く話を繋げられる。
ホッとし…かけて、続けて入ってきた奴を見て、思わずげんなりしてしまった。
濃藍色の瞳に、明らかに侮蔑の色を湛えてこちらを見据える男。
黒の皇国の黒の聖騎士、ジークレイド。ハッキリ言ってこいつは苦手だ。城の回廊でのやりとりは記憶に新しい。
こいつの敵意をうまく逃し去なす術を俺はまだ知らない。
男としては、同じ男に侮られる事に劣等感刺激されまくるが、常に争いとは無縁な平和な世界で生きてきた俺と、魔導と剣が当たり前の世界で生きてきた男とでは経験値が違いすぎる。
同じ土俵に立つ事もままならないのなら、悔しいが避けて通るが賢明だ。
こっちを睨みつけてる気配をバンバン感じたが、敢えて、素知らぬふりをする。
「あの……」
不意に小さく呼びかけられ、ハッと意識を戻された。
視線をやる俺の眼にまさに純白とも言える……ーーーーー
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