84 / 119
第3章 翡翠の剣姫
4.求める結果がそれだけだとは限らない!①
しおりを挟む白く霞みがかっていた意識が浮いてきた。
目の前が徐々に鮮明になり、ぼんやりぼやけていた目に色が映る。
俺、何やって?
暖かい。それに、何か息苦しい?
「ふ、あ…?ッ、、、、んう⁈」
ち、近い!
近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い!!!!
カイザーとの顔の距離が近い。っていうか、くっついてる⁈
目を白黒させる俺に構わず、口づけが深くなる。
柔らかく唇を舐められ、ぞくっと走った背中の震えに体が強張る。
差し入れられた舌で口中を舐め回され、軽く舌先を絡まされてから口づけが解かれた。
「ん、ぁ……」
唇同士が離れる際の音が聞こえ、体の熱が一気に上がる。
エ、エロ過ぎる!!
情けないが、官能を刺激されまくり足がガクガクだ。
はっきり言って、何でこんな事態になってんのか、さっぱり分からん。
「は、え??こ、こ、、は?な、んれ??へ???」
頭がボーっとする。
呂律が回んねぇ。
抱き竦めるカイザーを胸元から見上げる俺と、背中から腰に腕を回すカイザーの体が、突如、バリッとばかりに引き剥がされた。
「やめんかッッッ!!」
「わっ⁈」
「ッ!!」
いきなりの事に戸惑う俺と、顔を盛大に顰めるカイザーの間で、金茶の髪に翡翠の瞳の美女が怒りを顕にしていた。
ふぅっと一つ肩で息をついた後、美女が俺をキッと睨みつけてきた。
「へ???????」
こ、これは………………………もしや、、修羅場?
ずいっと歩み寄られ、俺の喉が思わずゴクリと鳴る。
「聖下!!」
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
ハァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……ッ
長い。
自分でも長すぎんだろ?と思うくらいに、長~~~い!溜め息が漏れた。
「お疲れですわね?まぁ……気持ちは分からなくもありませんが…」
コトリと、目の前のテーブルにカップが置かれた。
芳ばしい香りが鼻をくすぐる。
一口飲み、ハァッと違う溜め息が漏れた。
最近、花実入りの高級茶ばかり飲んでたから、このちょっとお手軽感な感じの軽いお茶が美味く感じる。
聖獣妃なんて呼ばれて崇められても、俺は所詮庶民だ。(向こうの世界じゃ金持ち分類されてても、一般人には変わりない……)
「美味しい…サンキュ、じゃなくて、ありがと。ジディ」
「いいえ」
キツめ美人のジディが、ほんのり笑みを浮かべた。
にへらと俺も笑みになる。
うん。やっぱり、俺の好みは女の子寄り。
カイザーは………別格なんだな。
改めて認識すると、ちょっと顔が熱くなる。
慌てて誤魔化すようにお茶を飲み、ふ~っと息を吐き、ゆっくりと見渡した。
近衛騎士の寄宿舎。前にも来た場所だ。
今は、俺とジディだけ。
「中庭園はとりあえず修繕できそうですわ。木や花はいくつか植え替えなければなりませんが……」
「う………ご、めん」
「マヒロ様のせいでは……!まぁ、その………いろいろ、重なったと申しましょうか……」
ジディが言いにくそうに言葉を濁す。
ははっ!そうなるよなぁ~……
実際、なぁんも覚えてねぇけど、俺があの惨状を引き起こしたらしい。けど、わざとやったわけじゃねぇし……俺に説明しなかったカイザー。いきなりやってきたシャイア。
ジディとしては誰も庇えないから言葉を濁すしかない。
「隊長がお戻りになればお話して下さいね?」
「うん………」
カイザーとシャイアは、今はリステアのところだ。
庭園がしっちゃかめっちゃかになり、我に返った後………
俺とカイザーを引き離し睨みつけるシャイアとで、あわや修羅場!となりかけた空気を切り裂き、兵が駆けつけた。
その後は、リステアのところへ全員(何故かエルシアは居らず)連行。
こっぴどくお説教を食らった。
いや……マジ、あの皇太子怖いわ。
ふんわり笑みを浮かべて、声も荒げる事なくゆったり話すんだけど……背後に般若見えたし、言葉はトゲありまくりの毒ありまくり……
全員、殊勝に大人しく話聞いてました。
カイザーとシャイアは残って、俺だけキリアンに連れられて寄宿舎に先に来た。
3人で何を話してんのか、正直、気にならないわけじゃない。
でも………
戻ってきたカイザーが何を言うのか。
シャイアと改めて修羅場るんじゃないかと、不安で仕方ない。
シャイアは婚約を申し込みに来たって言ってた。
聖獣妃とは呼ばれても、俺は女の子じゃない。貴族であるカイザーは跡継ぎをつくらないとならないだろう。そうなると、子供を産めない俺の代わりに、ちゃんとした奥さんは必要で………
あぁ………マズい。
1人で勝手に考えて、自分のそれに凹んでく……
仕方ない………って、思わなきゃなんないんだろうなぁ。
最初に湧いた怒りは、時間を追うごとに冷めていき、代わりに冷静な考えが増えていく。
自分の中で消化しきれない思いがドロドロ溜まっていくのを感じ、何度めになるか分からない溜め息が漏れる。
「マヒロ様……」
「何?何かあったの?マヒロちゃん」
奥からキリアンも出てきたが、今は何も答えらんない。
「マ……」
躊躇いがちに口を開きかけたジディを遮るように、部屋の扉がバンッと勢いよく開いた。
険しい顔で唇を引き結んだシャイア。その後ろで、額に手をやり目を閉じ顔を顰めるカイザーが居て………
0
お気に入りに追加
3,892
あなたにおすすめの小説
転生したら召喚獣になったらしい
獅月 クロ
BL
友人と遊びに行った海にて溺れ死んだ平凡な大学生
彼が目を覚ました先は、" 聖獣 "を従える世界だった。
どうやら俺はその召喚されてパートナーの傍にいる" 召喚獣 "らしい。
自称子育て好きな見た目が怖すぎるフェンリルに溺愛されたり、
召喚師や勇者の一生を見たり、
出逢う妖精や獣人達…。案外、聖獣なのも悪くない?
召喚師や勇者の為に、影で頑張って強くなろうとしてる
" 召喚獣視点 "のストーリー
貴方の役に立ちたくて聖獣達は日々努力をしていた
お気に入り、しおり等ありがとうございます☆
※登場人物はその場の雰囲気で、攻め受けが代わるリバです
苦手な方は飛ばして読んでください!
朔羽ゆきさんに、表紙を描いて頂きました!
本当にありがとうございます
※表紙(イラスト)の著作権は全て朔羽ゆきさんのものです
保存、無断転載、自作発言は控えて下さいm(__)m
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?
優
BL
前世、自分の命を使い国全土に防護魔法をかけた救国の騎士……が、今世は普通の平民として生まれた!?
普通に生きていこうとしているのに、前世の知識が邪魔をする!そして、なぜか前世で縁のあった王公貴族達に溺愛される!!
もし、生まれ変わりがバレたらとんでもないことになる……平民として生きるために普通を目指す!!
総愛されです。でも、固定。
R18は後半になります。
*をつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる