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第3章 翡翠の剣姫

2.第2波登場⁈①

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最悪だ。
言うのは二度目になるが、マジで冗談でもなく最悪だ。
何が最悪って……

「あそこで泣くかよ、俺!これじゃ……」

ハァ~ッ、と、重苦しい溜め息が出た。
悲しくて腹が立って、居た堪れずにあの場を逃げ出して今は一人。城の回廊をとぼとぼ寂しく歩いている。
カイザーは追いかけて来なかった。追いかけて来られても困るが、来ないなら来ないで寂しい。
自分でも矛盾しているとは思うが、他に言い表しようがない。
両思いになったのは嬉しかった。まさか、自分でも同性を好きになるとは思わなかったから、今でも信じられないが、一晩経っても気持ちが変わらなかったから、本気でそうなんだろうとは思う。

「まさか、エッチした次の日にこんな修羅場があるとは思わなかったけどな…」

渇いた笑いが出るが、実際は笑ってられんし、精神的ショックがデカ過ぎて、もう何をどう言えば良いやらさっぱりだ。
朝起きた時点で居なかったカイザーを追いかけて城へ来たが、大人しく待ってれば良かったのか?

「無理だな!」

自分で考え自分に突っ込む。
ハッキリ言って、そんな、夫の帰りを待つ健気けなげな妻、、みたいな真似はできないししたくねぇ。
自分の性格は自分が一番分かる。
大人しく泣くなんてしょうに合わない。考えてみればみるほど、さきほど感じていた物凄い悲しさが薄れていき、段々と物凄い怒りが沸々ふつふつ湧いてきた。悲しさとパニックと、少し強引に押し切られた感も手伝って引いてしまったが、俺が引く必要は全くなかったように見受けられる。

「そうだよ!よくよく考えたら、あのひと何なんだ?何で俺が後回しにされんだよ⁈ムカつく!!カイザーはカイザーで説明を先に俺にすべきだろ⁈つうか、俺を置いてくなよ!起きるまで待ってろよ!今だって、何で追いかけて来ないわけ?追いかけて来いっつうの!!」

腹が立ったら、さっきまで考えてた事がくつがえり、怒りに任せてズンズンと大股に歩く。
勢いに任せ歩いていたら開けた場所についた。中庭らしき場所だ。柔らかい日差しが眩しくて目を細めて立ち止まる。
ハァ~、日差しがぬくい………

「ッッッて!和んでる場合か⁉︎こんな世界に訳も分からず来させられて、聖獣妃だかなんだか知らんモンに祀り上げて、人の性嗜好しこうを捻じ曲げてもいいくらいに好きにさせておいて、間女(?)の登場だぁ?上ッ等じゃねぇか!ふっ、、ふっふっ!!俺はなんでも尊い立場らしいし?いいじゃねぇか。権力使えるモノは利用してやる!カイザーの馬鹿やろーーーーーーーーーーッッッ!!!」

うガーーーッと、吠えるように叫ぶ。
ハァ~……スッキリした。誰も居ないのをいい事に、思い切り思いの丈をブチかましてしまった。
ふっと息を小さく吐いた俺の耳に、クスクスという笑い声が届く。

「誰だ⁉︎」

バッと振り向く。
陽光にキラリと眩いばかりに煌めく金茶色の髪と、上質なアメジストとシトリンの瞳の物凄い美人。
すらりとした肢体を包む服装は騎士のそれ。が、柔和な笑みと柔らかな空気を纏っていて、一瞬、全ての性別を凌駕りょうがさせる錯覚さっかくを起こさせた。
男………だよな?
測りかねて眉を顰める俺に、青年がふんわりと微笑みかけてきた。
思わず釣られて微笑み、、かけ、慌ててかぶりを振る。
違うだろッ⁉︎

「あんた、誰だよ⁈」
「凄い、声だったね?見てるぶんには面白かったよ」
「そうじゃなくて!感想なんか聞いてねぇし!」
「う~ん、私もあれぐらい声を出せたら良いんだけど、中々力が入らないんだよねぇ」
「腹に力入れたら出せる…ッッッて!そうじゃない!人の話を聞け!!」
「何を怒ってたの?」
「だから、、!俺の話聞いてんのかよ⁈」

何なんだ⁈
まったく会話が噛み合わない。ポヤポヤふらふら話が右往左往する青年に、イライラがピークに達しそうだ。
思わず怒鳴ろうと口を開きかけた俺に、青年が一気に距離を詰めてきた。思わず息を呑む。
一瞬の動き。まったく見えなかったし、そんな気配も感じなかった。距離を詰められ、手を握られるまで気づかなかった。
間近に美麗な顔が寄る。
カイザーに寄られるのとは違う意味だが、心臓がドキドキする。
どうしてこうも、この世界の奴らは無駄に整ってんだ?
呆然となる俺に、青年がニコと笑いかけてきた。
ハッとなり、遅ればせながらに身動ぐ。

「離せ、よ!近過ぎんだろ⁈」
「いや?」
「いやとかそういう……」
「私は傍に寄りたいなぁ。君、可愛いし」
「……………………」

自然だ。言ってる台詞セリフは限りなくチャらいのに、少しも軽さを感じさせない。
清潔で柔和な見た目のせいか?
クソ!だから、イケメンは……!!

「綺麗な””だね……清廉せいれんで濁りも混じりもまったくない…可愛いは失礼に値する程清らかだ。君……貴方は、この世界の何モノより、、、」

青年のシトリン色の右目がキラリと光を弾く。
透き通るようなそれに、まるで吸い込まれそうな目眩を起こす。
頭の中で目を逸らせ、逃げろと警鐘けいしょうが鳴り響くのに、俺の体が金縛りにあったかの如く、指一本動かせない。
フワリと微笑んで、青年の顔がゆっくりと俺の顔に近づく。
避けられない!

嫌だ!!!!!

思いっきり心で叫び拒絶を抱いた瞬間、圧倒的な熱と、それとは対極な凍てつく冷気が同時に弾けて逆巻き、自由になった体が何かに抱き竦められた。












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