73 / 119
第2章 聖獣妃
8.触れる熱⑦☆
しおりを挟む重なる唇。
柔らかく、甘く食まれて、体が意図せずヒクヒク戦慄く。
「ん、、ッ!」
触れ合った舌先の感触に、ピクッと肩が跳ねる。
絡みつく熱と、強めに吸われる力、口中に溢れる唾液に頭がボーッとしてくる。
余すとこなく触れる口づけは気持ちいいけど、息苦しさと上がる息で心臓が痛い。
思わず逃げかけた体が引き戻される。肩と背中に回された腕に抱き竦められ逃げられなくなる。
「カ……!待っ、あ、お願……ッ、んぅ、、」
生理的な涙が溢れてきて、潤んで霞む目。眉を寄せて、唇の端から切れ切れに訴える俺に、カイザーが舌先を軽く舐めて唇を離す。
プチュと小さく粘つく音が鳴る。
ハァハァと上がる息を忙しなく繰り返す。
首すじにチリっと微かな痛みを感じた。
「ぃ………、んぁ!」
痛みに抗議しかけた声は、その後、癒すかのように這わされた唇の感触に萎む。
「あ、と…つけ、な」
「大丈夫だ。服で隠れる……」
多分ギリギリな、という言葉が聞こえ、再度あげかけた言葉が、胸に走った刺激で甘い喘ぎに変わった。
「や、、!あぁん!な、に、、やだ」
胸の尖りにねっとり舌が這わされ、背中が仰け反る。
今まで、存在を感じた事もないそこに受ける刺激は強烈で、甘く痺れるような熱が、澱のように体の奥に落ちて溜まっていく錯覚を思わせた。
「やっ!やぁ、、いや、だ!カイ、、だめ」
「何がだ?触るのがか?舐めるのがだめ?それとも……」
「ひッッぅ!!」
根元に舌を食い込ませたまま、カイザーが俺のそれを吸い立てた。
ビクビクっと、体が生きた魚の如く跳ね上がった。
まだ、乳首弄られただけなのに……⁈
こんな刺激は知らない。あったことがない。
「や、ちが…ッ、吸う、や!それ、するな、、てばぁ」
「嫌なわりには、舐めると喜んで固くなってくぞ?」
「あ、ぁ、ちが…ッ、そ、な、こと」
「体の方が正直だな……」
「やぁんッッ!」
再び舌が這わされ、溶かされるかと思うくらいに甘く弄られる。再開される愛撫に、自分でも耳を塞ぎたくなるくらいに、歪んだ甘声があがる。
反対側は指で摘まれ、擦り合わせるように弄られ、益々、声が止まらなくなる。
頭の中も、体も、どこもかしこも熔け崩れていきそう……
「ん、ん、ん、、、ゃ、ぁ、あんッ、い」
「いいか?気持ち、いい?」
「ん、、…ぅん……もち、い」
尖り周りの肌にも小さく口づけがいくつも落とされていく。
弄られてぷっくり腫れた乳首を、カイザーの指が摘んで擦りながら、唇と舌が下へと這いながら降りていき、薄い腹の肉と、ヘソ周りに辿り着いた。
ウズウズする。
擽ったいはずの刺激も、全部が快感に塗り替えられてく。
俺は男だし、男同士の行為はもっと乱雑にされるモンだと思ってた。
でも、カイザーの触れ方がすごく優しくて。
こんな、壊れ物みたいに優しく扱われたら……
気になりだしたら、愛撫に集中できなくなった。
「じゃ……な、の…に」
「うん?」
腹と足の付け根あたりに口付けをしていたカイザーが、ゆっくりと顔を上げた。
優しく問われ、自分でも情けないが、喉がヒクッとしゃくり上げると涙が溢れ出した。
一旦体を上げたカイザーが、俺の額に自分のそれを当てて顔を覗き込んできた。
「どうした?やっぱり嫌か?怖い?」
「ん……」
目尻に浮かぶ涙を吸われた。頬や鼻の頭にまでキスを繰り返される。
甘やかすような仕草に、ホッとすると同時に不安にもなる。
「………俺、女じゃない」
「マヒロ?」
唇の端に口付けられ、おずおずと切り出すと、カイザーが軽く目を瞠る。
「女じゃないくせに……こんな、感じて…俺、絶対変だ」
自分でも何を言ってるんだと呆れる。
カイザーの事は好きだ。それはもう認める。
でも、誰かと抱き合う行為は初めてで、ましてや、男同士というのがまだまだ慣れない。
いざ、事に及んでいるくせに、何をグチグチ言ってんだか……こんな性格でもないくせに。
カイザーだって呆れてる。
そう思ったら、怖くてカイザーを見れない。
ギュッと固く唇を噛み締めたら、指で唇を開かされた。
「傷になるから噛むなって言っただろ?」
やんわりと言われ、ちらっと視線を向ける俺の体が抱き起こされた。
ラグに胡座をかくカイザーの膝に、座り込む形で対面した。
「俺はマヒロを女だと思っていないが?女扱いするつもりもない」
「分かって、る…」
カイザーに女の子扱いされた事はない。(姫を装った時は別!)ただ、俺が1人疑心暗鬼になってるだけだ。
乱暴にされたら怒るくせに、優しくされたら困ると文句を言う。
どんな我が儘女でも、俺よりは面倒くないだろう。
ハァッと、溜め息が聞こえ、ビクッと体が震える。
俯く俺の顎に指がかかり、上向かされる。
目の前のカイザーは、想像と違い、苦笑を浮かべていた。
「随分、しおらしいな?初めて、鎮寂の森で会った時の不遜さが嘘のようだぞ?」
「なっ!!」
言われた言葉に、思わずカッとなる。
俺だって、悩まないわけじゃない。自分を少しでも良く見せようと装ったりもする。
好きな相手の為なら尚更で…………………………あれ??
「ぁ……、、」
「俺を好きなら、ありのままのお前を見せて欲しいんだがな?」
「そ、、!で、もッ、、こぇ……」
「好きな相手なら声は出るだろう?女だからとか、男なのにとか関係なく。むしろ、俺はお前に夢中になってるのに、声を出してくれんとかなれば激しく落ち込むぞ?」
「う、、ぁ、、そ、、、は、、!」
反則すぎる!!
そんな熱のこもった、蕩けるように甘い顔……
見、見れない!顔があげらんない!!
今まで以上に、顔が一気に茹で上がった。
イケメンの本気の口説き、威力が半端ねェ……!!
うだうだ悩んでたのに、全身全霊で口説かれ、もうこれ以上何も言えなくなった。
背中に回された腕に体が引き寄せられ、肌と肌が密着した。よくよく考えたら、今、俺裸でカイザーと向き合ってる。
冷静に考えたら、すごい絵面だ。
さっきは考えれなかったけど、我に帰れば当然気づく。
意識しないよう、冷静さを保とうとしたが、俺の腹とカイザーのが触れてしまい無駄に終わる。
「ッ」
思わずやってしまった視線の先。密着した下半身に目をやってしまい息を呑む。
羞恥と若干の恐怖に顔がひきつった。
言葉をなくす俺に、カイザーが視線の先に気付き苦笑する。
耳に小さく口付けられ、擽ったさに肩を竦めた。
「ンぅ…ッッ!」
「心配するな。今日はしない……初めての奴に無理を強いるほど、人でなしじゃないぞ?」
吹き込まれる吐息と声音の甘さに酔いそうになりながらも、若干、引っかかりを覚えた。
「カイザー、、、は?」
「うん?」
「カイザーは……俺以外の奴と?」
問う俺に、カイザーがあ~と少し言いにくそうにしたあと、ふぅっと息を吐く。
「お前に会う前の事だ……」
「……………………」
分かってはいたが、やはりそれでも聞いたら何やら複雑だ。カイザーにはカイザーの軌跡がある。責めるつもりもないし、責めるのは筋違いだ。
でも………
「妬いてるのか?」
「ぅ………………っさい!!」
クスクス耳元で笑われた。恥ずかしいやら悔しいやらで睨みつけるが、益々、嬉しそうに笑われる。
「笑うな!!ムカつく!」
「笑うだろう?嬉しいんだからな」
「何、、あっッ⁉︎」
抱き込まれ、下半身が隙間なく触れ合う。
足の間にある俺のとカイザーのが擦れ合い、思わず声が出た。
自分のとは違う熱と質量に狼狽し、視線を泳がせる俺に、カイザーが不敵に笑いながら耳に舌を這わせてきた。
「やっッッ!」
ピクンと小さく跳ねる体を宥めるように、カイザーの手が優しく肌を撫でていく。
耳殻と耳たぶを食まれ体を震わせると、耳に殊更甘い声が吹き込まれた。
「さっきも言ったが今日はせん。ただ、触れるだけだ。怖がるな」
言葉の内容も声も甘くて酔いそうだが、念押しされるように言われて逆にムカッ腹が立つ。
あまりに「しないしない」言われて、本当は俺など抱きたくないのかと沸々と怒りが湧いてきた。
「マヒロ?どうし……ッッッ⁉︎」
油断しきったその体を、胸に手をつき思いっきり押してラグに押し倒す。
驚愕に、呆気にとられたように目を見開くカイザーに少しばかり溜飲を下げる。
「……………し、ろよ」
「何?」
激しく脈打つ心臓を宥めながら、カイザーの体に馬乗りにのしかかりながら見下ろして口を開いた。
「……………………最後まで、しろ!」
0
お気に入りに追加
3,889
あなたにおすすめの小説
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
男しかいない世界に転生したぼくの話
夏笆(なつは)
BL
舞台は、魔法大国マグレイン王国。
男しかいないこの世界には、子供を孕ませる側のシードと、子供を孕む側のフィールドが存在する。
クラプトン伯爵家の第四子として生を享けたジェイミーは、初めて母を呼んだことをきっかけに、自分が転生者であると自覚する。
時折ぽろぽろと思い出す記憶に戸惑いながらも、ジェイミーは優しい家族に囲まれ、すくすくと成長していく。
そのなかで『誰も食べたことのないアイスを作る』という前世の夢を思い出したジェイミーは、アイスの無い世界で、夢のアイス屋さんを作るべく奮闘するのだが。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!
鏑木 うりこ
BL
空前絶後の社畜マンが死んだ。
「すみませんが、断罪返しされて療養に出される元王太子の中に入ってください、お願いします!」
同じ社畜臭を感じて頷いたのに、なぜか帝国の側妃として売り渡されてしまった!
話が違うし約束も違う!男の側妃を溺愛してくるだと?!
ゆるーい設定でR18BLになります。
本編完結致しました( ´ ▽ ` )緩い番外編も完結しました。
番外編、お品書き。
〇セイリオス&クロードがイチャイチャする話
〇騎士団に謎のオブジェがある話
○可愛いけれどムカつくあの子!
○ビリビリ腕輪の活用法
○進撃の双子
○おじさん達が温泉へ行く話
○孫が可愛いだけだなんて誰が言った?(孫に嫉妬するラムの話)
○なんかウチの村で美人が田んぼ作ってんだが?(田んぼを耕すディエスの話)
○ブラックラム(危なく闇落ちするラム)
○あの二人に子供がいたならば
やっと完結表記に致しました。長い間&たくさんのご声援を頂き誠にありがとうございました~!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません
八神紫音
BL
やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。
そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる