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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章

4.忘れ得ぬ記憶と愛しき者と⑧

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「いきます!!衝撃に備え構えて下さい!!」

ディオンが言い、方陣の光に包まれる。
体が引っ張られるような感覚のあと、いきなり投げ出された。
床と思わしき場所に着地。

「殿下?!」

視界が鮮明になると、聞き慣れた声が聞こえた。

「セレスト!説明してる暇がない!黙って付いて来い!!」
「………御意に!!」

沈黙は一瞬。セレストは特に何も言わず、そばにつく。

「これ、特別手当付きます?」
「まとまった休みをやる。ついでに、セレストにもな」
「やった!!絶対ですよ?殿下!」

どことなくのんびりしたイアンに返してやる。

「アクアネスト・スライサー!」
「ぎゃっ!!」

後ろから襲いかかろうとした闇魔導士を、水の刃が襲う。

「いきなりなんだものね~、やんなっちゃうわ!」
「俺の要請だ。文句、言うんじゃねぇよ?ルース」
「しょうがないわねぇ~、殿下ったら、人使い荒いんだからぁ」

笑いながら次々襲い来る闇の者を倒していくルース。
こちらは問題なしだな。
少し離れた場所で、白金の髪をなびかせ、風をまとわせた剣で、無雑作に敵を切り捨てているのは、ラシルフの傲岸不遜な男だ。
傍らのアッディーンもまた、憮然としたまま敵をなぎ倒している。
こちらへチラリと視線を寄越し、カーティスが口許に楽しげな笑みを浮かべる。

「他国の皇族を拉致か?あとで知れたら問題だな」
「アヤの為、と言ったら?」
「なれば愚問だな。シーファの為なら別だ」
「どうする?」

同じく、はかりごとを愉しむような不遜な笑みを浮かべる俺に、カーティスは魔導の風を纏わせ俺と声を揃えた。

「「問題なしだ!!」」

ニヤッとお互い黒い笑みを交わした。
アッディーンがこめかみを指で押さえ首を振るが、主君に逆らうつもりはないらしく、深く溜め息のみつき、黙り込んだ。

「退け!皇太子ッ!!」

鋭く、無礼極まりない言葉が届く。その場から素早く飛び退ると、床が酸を撒いたかのようにシュウシュウ煙を上げて溶ける。

「ざ~んね~ん!ほ~んと、つくづく邪魔な奴だよなぁ?キ~サ!!」

間延びした言葉が聞こえ、視線を向ける。魔物の目を爛々と光らせ、イヴァンがニタニタと笑いながらゆっくりとこちらへ向かって歩いてきていた。
対峙するキサは冷静に、且つ、冷めた目でそれを見ている。

「行けよ、皇太子」
「…やれるのか?」
「こいつを相手するべきは俺だ…」

腕に出現させた炎を纏わせ、キサがイヴァンを睨めつけたまま言う。
イヴァンもまた、キサだけを見据えている。

「ここは任せよ。格好よいところを見せて、お前からこちらに振り向かせたいところだが…残念ながら、シーファが求めてるのはお前だ。グレインバルド」

風と剣で応戦しながら、カーティスもまた言い放つ。

「行って下さい、皇太子殿下。姫は、泣いてますよ?」

遅れて現れたディオンもまた、錫杖を構えなおし、後押ししてきた。
簡単にやられる奴らじゃねぇ。

「……任せる!!」

それだけ言い置き、駆け出す。
ついてくるのは、セレストとイアン。
後ろから膨れ上がった魔導の波動には振り向かず、俺はアヤの元に行くべく走る速度を上げていった。







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