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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章
3.魔導制約突破!交わる三つ巴の力②
しおりを挟む音のした方、パタパタと羽を動かし飛んでいる。
半分は黒、半分は白の体に、玉虫色の紋様。長い尾の先に小さな鈴をつけた蝶。
ディオンの周りを飛び、肩に止まる。
ひとしきり羽をパタパタと動かし、スッと消える。
「今のは?」
「僕の使い魔です。姫に付けていて、戻ってきたのです」
「……アヤをどうした?」
話の前に聞くべきだったが、先にも言ったように、女神の魔導は、特に光をだが、理由なく害する事はない。だから、敢えて聞かなかったのだが……
「……姫は…闇の。ギルゼルトの元にいます」
「………………」
俺の中で、魔導が揺らぐ。湧き上がりかけた波動を抑え、目を閉じた。
ゆっくり息を吐き、再び目を開ける。
「冷静でいらっしゃいますね?」
「……そう見えるだけだ。内心、はらわた煮えくり返っている。理由を聞こうか?」
「ギルゼルトの輪廻を断ち切る為……」
「……………クソな理由だと思っていたが、想像以上のクソだな」
ディオンの言わんとする事が、今の言葉で分かった。
尻拭い。一言で言えばそれだ。
初代たちの時、世界は一度滅んでいたはずで…それをさせまいと、アルシディアと女神が動いた。
神は人の理には不可侵。が、魔導は我が子も同然。女神がそれに背く事で、理が捻じ曲がる。
無理矢理に捻じ曲げた理のせいで、ギルゼルトは輪廻から外れた。
「アヤを使って、捻じ曲げた輪廻を戻す。そういう事だろう」
「……………姫には、過酷な責を負わせる事になりますが、概ね、そういう事です」
「輪廻を戻せれば良し……戻せなくて、世界が滅びても仕方なし…か?」
「女神の、意向です」
「俺を殺したのは、アヤから俺を引き離す為か?心に負荷をかければ、あいつがどうなるか分からねぇんだぞ?!」
「殿下…」
「ッざっけんなッっ!!アヤは道具じゃねぇ!俺がさせん。ディオン、こっから出せ!!」
あまりの怒りに、感情と魔導が荒れ狂う。
「無理です。特殊な結界です。条件を満たさなければ………」
「はっ!気付いてねぇとでも思ったか?!重複魔導の結界だろう」
「ッ!!……たとえ、気付いたとしても、如何な貴方でも、これは……」
「みくびんなよ、ディオン!俺を何だと思ってる?」
「殿下、無理です!貴方の魔導は水のみでしょう?氷の魔導とて、異能なだけで属性は水。単体魔導では、結界は……!」
「舐めるなッッ!!!」
ディオンの言葉を遮るように吐き捨て、神化で魔導を増幅させる。
水に氷の魔導を織り交ぜる。
「殿下!おやめ下さい!!その規模の魔導を内側で発動すれば、消しきれずに跳ね返ります!」
「跳ね返る?だったら、そうできないようにするまでだ!!」
「なッッ!?」
『ダークネス・ブレイク!』
練り上げた水と氷の魔導に、三つ目の魔導を織り交ぜた。
白青色に黒の粒子を纏って、魔導が結界を舐めるように這う。ガラスにヒビが入るように亀裂が生じ、けたたましい音を立てて弾け飛び霧散した。
「闇…魔導?何故、貴方が?」
「女神は元々、全魔導の母で生みの親。子である魔導が、自分の魔導以外を使えないわけがねぇ。もっとも……俺も、ファンガスから教えを請うまでは知らなかったがな」
「闇と光は、魔導の中でも扱いが難しい。特に闇は…力に呑まれたらどうするんですか……」
「呑まれるようなヘマはせん」
「貴方は……参りました。さすがは、クレイドルの皇太子殿下です」
苦笑し、跪くディオン。
「どうあっても、光を取り戻しますか?」
「愚問だ」
「左様にございますか…仕方ありませんね。まぁ、貴方も……と、いうか、貴方の前ですね。エルネイレスも無関係ではない。殿下。姫と……アヤと共に、ギルゼルトを解き放っていただけますか?」
「俺にはアヤだけが一番だが……因縁を断ち切るために、不本意だがするしかねぇだろ」
「………ありがとうございます」
「空間を解け、ディオン。まずは、戻る」
「分かりました」
ディオンが指を鳴らし、周りが再び白んでいった。
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