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第二部4章 表裏一体 抱く光は闇 抱く闇は光の章

3.魔導制約突破!交わる三つ巴の力①

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「う…………ッ!」

物凄い胸の痛みと、急に肺に入った息で噎せる。

「起きられましたか?」
「ッッ!!!!!」

聞こえたその声に、薄ぼんやりとしていた意識が覚醒し、目が一瞬でカッと見開いた。
魔導が瞬時に凍化し、瞳がそれに変わるのが分かると同時に言い放つ。

『凍り付け!!』

俺を囲む透明な球状の結界に向け、全破棄を放った。

「そう来ますよね……?ですが……」

溜め息を吐きつつディオンが言うと、結界に触れると同時に魔導が霧散する。

「なっ!?」
「無駄です。今の貴方では、その結界は壊せません」

静かに話すディオンを睨みつけてから、俺は深く息を一つ吐き座り直す。

「意外です。抵抗、やめるんですね?」
「無駄な事はせん。いざという時、魔導切れなんざ、阿保のする事だ」
「失礼しました……」
「勘違いすんなよ?ディオン。てめぇの事は許した訳じゃねぇ。女神の魔導が理由なくアヤを害す事はない。事情がある事は分かった。それだけの事だ」
「さすがは鋼の皇太子。察しが早くて助かります」
「はっ!!おもねりなんざいらん!とっととクソな理由を話せ!!」

ギリッと睨みつけてやると、ディオンが苦笑し、自分もその場に座り込んだ。

「神化をお解き下さい。先も言いましたが、その結界内では今は何をしても無駄となります。消耗するだけにて」
「………………」

睨み据えたまま、言葉通りに神化を消す。

「…………あまり、貴方の事を知っている訳ではありませんが、その……」
「何だ?」
「……いえ、…何と言うか、思ったより理性的でいらっしゃるのですね?」
「…………お前の中で俺はどんな想像なのかは聞かん事にする…腹立ちが増すだけのようだからな」
「貴方が理性を失くすのは、姫が関わった時ですか?」
「…………無駄口はいい。早く、話をしろ」

クスと笑うディオンを、射殺さんばかりに睨めつけると、軽く首を竦めて、それ以上の無駄話を引っ込めた。
居住まいを正し、ディオンが臣下の礼を俺に対した。

「まずは……許される事とは思っておりませんが、此度の無礼をお詫び申し上げます」
「納得できる話を期待しようか?謝罪を受けるか否かは、まずは聞いてからだ」
「……さようですね。隠し立てはいたしません。聞いた上で、どうなさるかは貴方のご自由に。それで、結構です」

フンと吐き捨ててやる。
権利はこちらが上。多少、横柄だろうが構うか!

「先んじて、から聞かせろ」
「そうですね…簡単に言うと、輪廻を断ち切るために必要な処置となります」
「輪廻を断ち切る?」
「はい」
「意味が分からん」
「でしょうね。これだけだと、さすがに貴方でも分からないと思いますよ」

苦笑するディオン。さすがに、急いたか。話が簡単すぎて、訳分からん。

「事の発端は、女神戦争にあります。女神戦争の事は、以前話しましたよね?」
「あぁ。神の台座、鍵、女神……この三つの利権が絡んだ争いだ。先代の光が消える理由になった争いでもある」
「えぇ、そうです。深く、細かく話しましょう……」

パチンとディオンが指を鳴らす。目の前にお茶のカップが現れた。
気遣いか?
飽きれるが、死にかけてか喉も渇いてる。とりあえず、突っぱねる事はやめ、ありがたく飲む。

「女神戦争時、光の初代と、水の初代。それから、闇の初代…この三人が三つ巴になっていました。光を愛する者が二人。水の愛が静ならば、闇の愛は動。静寂の愛と、激情の愛。最初は良かったんです。しばらくして、光は苦痛に耐えられなくなる」
「……動と激情の愛にか?」
「はい……あ!でも、嫌いで苦痛になった訳ではありません。むしろ、逆!愛するが故、同じだけ返せない事に苦しむ羽目に」
「初代には悪いが、阿保だな。愛情に大きい小さいは関係ない。お互いが好きで愛している、それだけありゃいい。同じだけ返す…は、まぁ、気持ちだけなら分からなくもねぇが、思うだけに留めとけ。言葉にすれば、それはただの手前勝手な独り善がりだ」

言っちゃ悪いが、くだらん!確かに、俺も、アヤに激情をぶつけた事はある。
が、俺と同じくらいの気持ちを、アヤに持てとも返せとも言った事はない。
そんな事してたら今頃………

「まぁ、いい。で?続きを話せ」
「………闇を愛するが故に受け止めきれなくなった光と、女神たち、神の側の利害が一致しました」
「どういう意味だ?」
「闇と光は繋がってはならないのです」
「……表裏一体か?」
「ご存知でしたか?」
「……あぁ、まぁな」

光があるから闇ができ、闇があるからこそ光が際立つ。この二つは、常に力が拮抗してなければならない。どちらかが強くても弱くてもならない。バランスを崩せば、どちらかが呑まれる。
故に……背中合わせに相反する存在でなければ……

「女神が、光を飛ばしたんだな?」
「……はい。光の初代、アルシディアもそれを了承しました。闇と光が繋がれば、アルシディアは完全に台座の鍵となります。そうなれば、闇は……ギルゼルトは、アルシディアの贄となり消える。アルシディアはそれを良しとしなかった。だから、この世界から消える事を望みました。ギルゼルトを守りたかったアルシディアの気持ちと、世界を台座で壊したくない女神の利害が……一致したんです」

また、だ。
女神の采配。どこまでいっても、神という者たちは身勝手に過ぎる。

「……ギルゼルトは、アルシディアを失いたくなかった。だから、水の初代、エルネイレスにも引き留めるよう促しました。が……」
「……初代は引き留めようとしなかった。だろ?ギルゼルトは、初代にアルシディアを託す事で留まらせようとしたが、アルシディアが拒んだ。どちらも選べず、どちらも選びたくなかったから」
「はい……光が消え、ギルゼルトの心からも光が消え、絶望したギルゼルトは、姿を消した。女神と、世界と……アルシディアを憎悪する心を残して」

いろいろ、それぞれで思惑と、感情の行き違い、誤解や曲解が生まれてるな……
背景は分かったが…今回、俺が理由と、どう繋がる?

「ディオン。結局、俺を殺した理由は何なんだ?」
「……そ、れは、ーーーーーー」

言い淀む、ディオンの言葉を遮り、リィンという澄んだ鈴の音のような音が鳴り、音のした方に目をやった。








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