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第二部3章 皇女降嫁?白き生花で紡がれし花冠の章
9.潜入開始!狼さんにはご用心?!③
しおりを挟むタータの待つ部屋へと帰ると、不安だったらしく、タータが駆け寄ってくる。
「アヤ、キサ…良かった。無事ね?何事もなかったようね」
「ただいま。一応、大丈夫……」
「?」
言葉を濁す俺に、タータが首を傾げてキサを見る。キサは顔を軽くしかめて溜め息だ。
「どうかして?」
問いかけるタータに、俺は苦笑いだ。
あった事を話さなきゃならない。ひとまず、一息つこうと、タータをソファの方へと促した。
*
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*
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*
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*
「まぁ!そんな事が?大丈夫?何もされてなくて?」
結局、洗いざらい話さざるを得ず、正直に話したが…
タータ……食いつくのはナンパの話じゃなくて、アッディーンかもしれない奴を見たってとこと、エンドルフ城に怪しい領域があるってとこだよ~~~?
「タータ~~~……」
「大丈夫、分かっていてよ。見たのが、アッディーンだったのだとしたら、変ね。エンドルフ側が、兄上様たちの存在を隠す理由が分からないわ。それに、見かけたのが、不可侵だと言われる区域……駄目ね…これだけじゃ情報が少なすぎて分からないわ」
そうなんだよなぁ……
結局、これといった決め手となる何かがなくて、結論としては、何も分かっていないと言わざるを得ない。
「タータ。婚約者の皇子殿下は?」
「二人がいない時に侍従が来たわ。今日はゆっくり休んで、明日、双方余裕をもって会いましょうですって」
皇子の方から先に切り出されちゃったか。顔合わせできたら、何とか上手く聞き出せないかと思ったが……こうなると、こちらからおしかけるわけにもいかない。
う~~……ん、、、どうしたもんか?
「姫。もう一度、最初から説明してもらってよいだろうか?」
「キサ?」
しばらく黙って思案していたキサが切り出す。
説明って……今回の??
「どこからでよいのかしら?」
「できれば、事の発端から。なるべく詳しく細かくお願いしたい」
「分かったわ。まず、事の発端は、長年ラシルフの属国だったエンドルフが、独立を申し立てたのがそれよ。二人も見て分かったように、エンドルフは優秀な騎竜排出国。ラシルフは当然反対したわ。何とか、このままにしようとしたけど、エンドルフは聞き入れなくて……」
まぁ、そりゃそうだ。人の下につく事をそうそう簡単に受け入れられる者はそうはいない。人然り、国然りだ。
「ラシルフの…私たちの国の宰相がやむなく提案したのが、属国の解消。ただし、両国は婚姻により協定を結ぶ事を約束させた。それが、私とバラジュ様の婚姻よ」
「双方の重臣が取り決めたのですか?」
「えぇ……」
「妙…ですね」
「どういう事だ?キサ」
「重臣のみで決めたというのがどうも……」
「そうなの…バラジュ様や、エンドルフ王の意向も何もなし。考えが分からないと…兄上が怒り心頭に乗り込んでしまったのが顛末よ。兄上がエンドルフにいらしたのは事実。だけど、帰国した。あとは知らないの一点張り。ここまでは話したわね?でも、エンドルフで行方が分からなくなったのだから、捜索協力を願っても重臣方は聞いて下さらなくて……」
それも聞いたとおりだが…やっぱり、何回聞いてもおかしいよな。カーティスは上の位の国の皇太子で、次期国王。なら、自分の国で行方が分からなくなったとなれば、少しくらい焦らないかな?普通。
「考えられるとしたら……」
「したら?」
「ラシルフに対して反旗を翻すつもりか、本当に何も知らないか……或いは」
「知ってて、何か隠してるか…か?」
それは俺も何となく思ってた。
キサの後を繋ぐと頷かれる。一番濃厚なのは、やっぱり最後の線だ。
最初のは独立を申し立てた時に強行すればいい。こんな騒ぎになってからやるにしてはまどろっこしい。
二番目は、不自然すぎる。国の尊厳に関わるかもしれない大事を、重臣が知らないのは不可解すぎる。
「知ってて隠してるとしたら……理由は?タータの話だけ聞いても、それでも重臣は知らない感じだけど?」
「知ってるのが、極一部だとしたら理屈はつくぞ?」
「知ってる奴と知らない奴がいるって事?」
俺の問いにキサが頷く。
「何か余計分かんなくなりそ…ここまでするにしても目的が分かんないって!………えっ、とさ……あの、すっっっっっごくヤダけど……」
「駄目だ」
「……………………まだ何も言ってないですけど?」
「言わんでも分かる。どうせ、碌なことじゃねぇ」
……………………………………………………
話くらい聞けや!
言おうとしてる提案、俺だってホントに死ぬ程嫌だ!でも、困ってる悲しんでるタータの為だし……
俺がちょっと我慢すればいい話だし……
人がせっかく勇気出して絞り出そうとした話を、聞きもしないなんて……
何か……………………腹立ってきた!!
ジトりとムスッくれた顔で睨むが、キサは歯牙にも掛けてくれない。
マジ、ムカつく!
もう、いい!キサがその気なら!!
「今日はここまでにしましょう?キサが最初に言ったように、着いた早々これ以上探るのはあちらにも怪しまれるし。警戒心を強められたら、エンドルフに来た意味がなくなるわ。大丈夫よ、アヤ。まだ、あと二日あるわ。明日にはバラジュ様にもお会いするし……何か分かるはずよ」
ね?と、努めて明るく笑うタータに、俺は余計いたたまれなさが募る。
おのれ~~~~!エンドルフめ!可愛いタータにこんな気持ちを抱かせ悲しますとは!許さんッ!!
「二人とも、今日はありがとう。あとは、後日にして休んで下さい。お部屋は私の部屋の隣よ」
憂いを隠し微笑むタータに、俺はある決意を固め、が、それを必死にひた隠し、キサと共に用意された部屋へと下がった。
絶対。
絶対に、成功させてみせる。だって……………………
今の俺……完璧な侍女で可愛いみたいだし?
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