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第二部3章 皇女降嫁?白き生花で紡がれし花冠の章

4.守る為に①

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結界の中で感じたのは熱と、緋と金色に輝く光。

圧倒的なまでの力の本流が徐々に引いていく。

間違いなく……全破棄魔導だ。
バルド以外で使う者を初めて見た。

光と熱が鎮まり、結界の前に立つ者。

「キサ……」

俺の呼びかけに、キサは目もくれず前方を険しく見据える。

さすがに、あんなの食らったらどうしようも………

「え?な、んだよ……あれ」

キサが見据える先に見えたのは、黒い、真っ黒なガラス板のような一枚の壁。
目の前で、ビキッバキッと亀裂が入り、大きく斜めに裂け目ができると同時に、バリン、ガラガラとあっという間に崩れ去る。

「やれやれ……紙一重、というところですかな?」
「オルガ……」

黒い壁の向こうから現れたのは、闇魔導士、オルガ。イヴァンを庇う形で前に立ち塞がっている。

「覚えておいていただき光栄ですな、尊き光よ」

キヒヒと笑う声に、眉根が寄る。毎回思うが、こいつの笑う声は不快だ。
オルガが手を振ると、壁だった残骸が消えていく。

「引け、イヴァン」
「オルガ様?!何故です?ここまできて……」
「これ以上は分が悪いでな…水に続き、炎ときた。が相手では、いかなお前とて無理が過ぎる。お前はまだまだ私の大切な手駒なれば、失うわけにはゆかぬて…なれば引け」

オルガの言葉に、俺は目を瞠る。

女神の魔導二人?

一人はバルドだ。女神の魔導というなら、俺もそうだが、生憎、俺は戦ってない。
と、いうことは………

「ここは引かせていただく…サラタータ公子ラキティス様」
「すんなり逃すとでも?」
「で、ございましょうなぁ…なれど、引かせてもらいまする」

オルガが手のひらに黒い球を出すと、グニグニ形を変え、まるで泡のように球が分かれ、俺たちの間を裂くように地面に等間隔に並んだ。

【シャドウ・ブラッディス】

オルガの言葉に、球から黒い柱が上がり、まるで電気のように枝分かれした黒い衝撃波がビリビリと走る。
見た目は有刺鉄線の壁。
これでは迂闊に近づけない。

「また、相見えましょうぞ?先に引く。お前もさっさと戻れ、イヴァン」

言うだけ言って、オルガが空間に出した黒いホールに消える。
それを、手のひらをギュッと握りしめたまま見つめていたイヴァンが、フゥッと息を吐いて、こちらに向き直る。
金色の瞳はギラギラと、怒りと悔しさに揺らめいている。

「オルガ様の前で恥かかせてくれて……ほ~んと、どこまでも腹立つ奴だよ、キサお前…しかも、女神の炎の魔導?何でお前ばっかり何もかも手に入れるわけ?……いいや…決めた。アヤ、次に僕の腕の中に捕らえた時は覚悟してね?オルガ様や、には怒られるだろうけど構うもんか!犯しに犯し抜いて、穢し尽くしてあげるから!!」
「なっ……!」
「その方がいい。その方が、皇太子もキサお前も、自分が傷つくよりもっとずっと苦しめられる!お前らを死ぬより辛い目にあわせたいなら、アヤを傷つければいい……そうだろう~?キサ~」
「イヴァン……貴様」
「やっと顔色変わったね~……今はそれが見れただけでよしとするよ。次はその顔が苦痛と悔しさに歪むところを拝ませてね?」

クスクス笑い、イヴァンもまた出した黒いホールに消える。それと同時に、有刺鉄線の黒い球も綺麗に消え失せた。

緊張の糸が切れ、体がグラと傾いた。
倒れかけた体は、キサに支えられる。

「大丈夫か?」
「うん……ちょっと…いや、かなり、かな?今回は、ほんとに駄目かと思ったからさ……それより、キサの事……」

聞きたい事が山ほどだ。
口を開きかけたが、肩をポンポン軽く叩かれ宥められる。

「後でな……今は、リコもお前もゆっくり休むのが先だ。人を呼んでくる。もう、大丈夫だろうが、一応結界を三重にしていく。待っていられるな?」
「……うん………分かった、待ってる」

言うと、結界が張られるのが感じられた。小さく笑いゆっくり離れていくキサ。

確かに、ちょっと疲れた。
拉致られ、キサに助けられ、驚愕の話を聞き……バルドにも話さなきゃ……

「………バルド」

怒って……るよな?
バルドの制止も振り切って、勝手な事して拉致られて……
帰ったら、いつもの如く…だろう。でも………

「会いたい、な……」

ごめんって言わなきゃ…ひたすら謝って……最後は根負けしたバルドが、「お前はぁ~……」って、呆れたように溜め息ついて……
静かに抱きしめてくれる……
クスと小さく笑みがこぼれる。

ああ~………疲れたなぁ…体が、重い。

ゆっくり、瞼が下がっていき、そのまま意識が暗く沈んでいった………ーーーーーーーーーーーーーーーー






*次は再会&謎解き。キサの真相や如何に?アヤはお仕置き?それとも仲直りの………??
しばし、お待ちくださいませ( ̄▽ ̄)ゞ
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