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第二部2章 策略忘却 欲望渦巻く炎の王室の章

2.誰が炎を消したのか?③

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一旦部屋に戻り、第一皇子の部屋に伺ってもいいか聞きに侍従を行かせた。

「バルド。俺も行かなきゃ駄目?」
「俺は構わないが…あとで、お前が目通りしてないと、あの側妃に知られたら面倒くさいぞ?あの手の女は、どんな手を講じても自分の思い通りに運ぶ。おそらく、しつこく誘われる事になるだろう。何度も顔を合わせたいなら好きにすればいいが?」
「げっ……やだなぁ~…」
「なら、一緒に来い。嫌な事も一度なら。ましてや、二人なら耐えられる」

まぁ、そうだけどね…

「王室には関わらないんじゃなかった?」
「あぁ……そのつもりだったがな。炎の魔導が消えた原因を知っておこうかと思ってな」
「原因?原因って確か………」
「あぁ…一応、表向きは国の内乱に巻き込まれたとなっている。が、あまりに情報が少なすぎる」
「エ、ドゥアルト皇子に頼んで、元神官長に会うんだろ?その時に聞けるんじゃねぇの?」
「だといいが……こちらでも、独自に情報を集めておいても害にはならん」

確かに……その神官長様がどこまで知ってるか分からないし。こちらはこちらで調べとくべきか……

「女神の炎の魔導が行方知れずって割には、誰も気にも止めてないんだな?」
「言っただろ?王室内は派閥争いの内乱続き。我が身を守り、自分に不利な他者を排除し、虐げる事しかアタマに無い連中の集まりだ。他人にとやかくかまってる暇はないんだよ」
「魔導って……そんな軽々しいものなのか?」
「連中にとってはな。気にするな。アヤ、間違えるな?俺たちの目的は、サラタータの内乱に関わる事じゃねぇ。目的は……」
「分かってる。あくまでも、目的は女神の炎の魔導を探し出す事。神の台座を止める事だ」

忘れてはいない。台座の鍵はこちらにある。闇側に奪われたら、その時点で俺たちの負けだ。
鍵を奪われ、台座を発動させられる前に六魔導全ての光を集め、台座を破壊する。
闇を………ギルをとめる。俺が…とめてやる。

「アヤ……」
「え?」

考え事に耽っていたら、いつの間にか側に来ていたバルドにやんわり抱き込まれた。

「たまによくそうしているな?」
「え…っ、と……何の事?」
「今みたいに、お前の心が別の誰かに向いている事がある」
「や…えっ、と、違………」
「責めてるわけじゃねぇ。お前の心はお前のものだ。もちろん、一部だけでいい。俺に向いていてくれたら、俺はそれだけでいい……心、全て何もかも俺のものにできるなんざ思ってないし、そんな事思えば、それはただの傲慢だ。だが……………」

やんわりと優しく柔らかく抱きしめていたバルドの腕が、徐々に強くなる。まるで逃すまいとするかのように掻き抱かれる。
強いし、痛い……けどどうしてか、そう言って離れようと思わない。

「そう思う反面で、お前が傷ついても壊れても、構わず全て手に入れてしまいたいと思う自分もいる……傷付けたくないのに、壊したい……矛盾している」

肩口に顔を埋め、吹き込むように囁くバルドの声。
涙を流しているわけではない。でも………

泣いてる。

そう感じた。

「バルド……ごめん。全部やるって言えたらいいけど、俺はそこまで強くない。だから、今は言えない。でも………俺は……そ、の…す、好き、だからさ。そういう意味で、あれ…なのは、バルドだけだから…だから」

一生懸命言い募る。
うぅっ…恥ずかしい。
不安にさせたの俺だけどさ……がんばって口に出してはみたけど……やっぱり、恥ずかしいよぉ~!
多分、俺、今顔真っ赤だ。
俯いてたら顎に手をかけられ上向かされた。そのまま、唇に小さく口付けられる。

「今は……か。お前はほんとに…まぁ、いい。赤くなって恥ずかしそうに、可愛く好きだって言ってくれたからいいにしよう」

おでこに一回、目尻に一回口付けて、バルドがゆっくり顔を近づけてくる。

「バルド………」
「しっ……黙れよ?」

小さく囁くバルドに、俺は静かに目を閉じ……

「あ~~~……コホン!殿下、申し訳ありません。侍従が参っています」
「「………………………」」

侍従を従えたイアンが困ったように立っている。
何だろうなぁ~……俺は別にいいけど、目の前の皇太子様に怒りの青スジが……
ハァッとため息を小さくつき、バルドがゆっくり振り返った。

「分かった……」
「も、申し訳ありません!!皇太子殿下!先程に続き再度ご無礼を!!」
「いや、構わん。こちら側の気が利かん、阿呆な側近がむしろ悪い」
「ええぇぇぇえッッ?!俺ですか?何でですか~~?!」

バルド……ひどい。
セレストん時はそんな事言わなかったクセに……

「うるさい!もういいからさがってろ」

ひでぇ、贔屓だ、横暴だとブツブツ言いながらさがるイアンを、バルドはガン無視。イアンって………

「アヤ、行くぞ?」

苦笑いしながらそれを見ていた俺に、バルドが声をかけてきた。
しょうがない。あとで、セレストに言ってイアン宥めてもらおう。
バルドに促され、俺は侍従の後ろについていった。






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