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第二部2章 策略忘却 欲望渦巻く炎の王室の章

2.誰が炎を消したのか?②

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「ご足労頂き申し訳ありません。クレイドル皇太子殿下」

離宮、側妃様の部屋。侍従に連れられ入室すると、部屋は甘ったるい花のような、ちょっとキツい香水のような匂いがしていた。
臭い…まではいかないけど、あまり長時間嗅いでいたくない匂いだな。
それに……

目の前の女性、側妃様に視線を向ける。白に近い金髪を高く結い上げ、ガバリと胸元が開けたドレスは、これでもかと乳を強調、ジャラジャラと宝石を身につけた様は、豪奢と下品紙一重だ。
部屋もそうだが、側妃様自身も香水キツい…
化粧も派手派手しく、さすがに女性が好きな俺でもゲンナリだ。

「サラタータの事情とか?そういう事なら、致し方ないかと……」

バルドの言葉に、一瞬側妃様が視線を、傍の俺たちを案内してきた侍従に向ける。
侍従がビクッと小さく反応し、深く俯いた。
どうやら、王妃様との確執を知られたのが気に障ったらしい。

「おほほほ……そう言って頂けたら助かりますわ。ですのに、行けない場所があるなど可笑しな話ではありますけれどね」

うわ……
王妃様がいないのをいい事に、盛大に当て擦ってる…

のご案内でサラタータへいらしたとか?何かなさりたい事でもおありに?」

第二皇子様……ね。
あくまでも、自分の子が先に生まれた事を強調したいんだな。
王妃様もだけど、どうやらサラタータの王族女性は顕示欲が物凄く強いようだ。

「用件はあくまで私用にて。まぁ、幸い、第二皇子様にご助力いただける事になりましたが」
「ほ、ほほ……左様にございますか」

顔を若干引きつらせつつ、側妃様が取り繕う。

「お茶でもお召し上がりくださいませ。珍しい茶葉を取り寄せましたの、ぜひ、ご賞味いただきたいわ。これ!何をグズグズしているの?皇太子殿下と、光の魔導様にお淹れして!!」
「は、はい!側妃様!!」

今指示出したのに、さも侍女がグズついたかのように叱りとばす。

「この者が光の魔導だと、よくお気づきになられましたね?私は一言もそのように言っておりませんが」
「あら!おほほほ!クレイドル皇太子殿下のお側には、光の魔導様がいらっしゃる。情勢を把握している者は存じている事実ですわ」

王妃様と側妃様。側妃様にわずか情勢が傾いてるって、言ってたが、この抜け目なさがその差なんだろう。

「それにいたしましても、稀有けうなる女神の光の魔導様に会えるなど、またとない機会ですわ。御名をお伺いしてもよろしくて?」
「アヤです。アヤ=アルシディアと申します」
「アヤ様……耳慣れない響きですけど、お可愛らしいですわ」
「はぁ……あの、ありがとうございます…」

うぅっ…何だろう?何だか値踏みされてるみたいで落ち着かない。見た目だけなら、王妃様より若くて美人と言って差し支えないのに、どことなく野心的っていうか、なんていうか……とにかく、受け入れがたい印象ばかり感じる。

ねっとりとした、女を最大限に押し出した側妃様の視線を、バルドは真正面から受けて平然としている。
俺はバルドみたいに泰然となんてできない。今も、顔が引きつりそうなのを必死で我慢してるから、顔の筋肉痛いし、おそらく変な顔になる一歩手前だろう。
俺の状態を把握したのかしてないのか、バルドが苦笑し、側妃様に向き直る。

「あまり長居をするのも申し訳ない。そろそろ部屋へ戻ります」
「あら、もうですの?残念ですわ……まぁ、あまりお引き留めしてもですし……ただ、皇太子殿下。無礼を承知でお願いがございますの」
「何か?」
「私の子……第一皇子にお会いになって下さいませ」
「第一皇子殿下に、ですか?」

バルドの問いに、側妃様が優雅に頷く。

「えぇ、ぜひ!」

態度とは裏腹に、声音はどこか必死だ。王妃様の子、エドゥアルト皇子が、俺たちに先に会った為、側妃様的に思うところがありまくるのだろう。
うぅっ…側妃様の子か………
側妃様みたいなのだったらやだなぁ。
できれば断ってほしいけど……たぶん……

「……分かりました。お会いします」

だよね~~?
はぁ……憂鬱だ。
ひとまず礼をし、部屋を辞すバルドに続き、俺はこっそり影で溜息をついた。





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