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第二部1章 黒き鎖の呪痕 奪われつつある光の章

7.狼vs狼=姫の勝ち??

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「バルド!何、考えて!ディオンの時とは桁が違う!」
「そうだな。だが、あの時と違うのは、石が持つ効果だ」
「効果?」
「この石は、ある程度の力の魔を退ける。お前の守りにするには十分だ」

魔を退ける?もしかして、闇の者たちの事か?いや、でも、それにしたって……

「ラトナ。バカ高い宝石は下品だって言わなかったか?」
「原石を渡すのが下品だとは言った。加工の手間を考えろ。完璧な状態で渡してこそだろう?」
「…………………」

こ、こいつら!二人とも、揃いも揃って……

「とにかく!俺、そんな高価な物要らない!受け取れない!今回の事がそれに見合った事とは思えないって!!」
「ロシュの馬鹿が何か言ったようだが、「白きもの」は犬狼にとって特別な存在だ。彼らがいなくては、我らは子孫を増やす事もできん。その者たちを守ってくれた。対価としては十分だろう」

価値観が違いすぎる……俺の守りになるからって、あっさり受け取る過保護大魔神バルドも大概だが………

「俺には、バルドから貰ったアメジストこれがあるんだけど………」

もう耳に馴染んだし、それなりに愛着あるから外したくない。

「なら、それも一緒に付けられるよう加工してやろう。数時間で終わる。耳のそれを貸せ、アヤ」
「…………………」

受け取らないって選択肢は、こいつらの中にはないわけね…?
もう言うだけ無駄だな……
あぁぁぁ!数時間後には、が俺の耳に?考えただけで恐ろしい!

渋々、アメジストを外し渡す。

「もう一つ、箱があるようだが?」

重みがなくなった耳を無意識に触っていると、バルドに促され、テーブルに目をやる。
確かに……箱がもう一つ。

「もう、宝石はやだよ?」
「そういったものではない……族長である、我らの父から渡すよう言われた」
「中身は?」
「知らん……」

バルドの問いに、ラトナが渋面で返す。
チラリとバルドを見ると、小さく頷かれたので、恐る恐る箱を開けた。
中に入っていたのは、飴玉くらいの乳白色の丸い……

「また、石?宝石はやだって……」
「宝石ではない。我らもよく分からんのだ。代々守ってきたものではあるが、これがなんなのか分からん。今回、お前の事を父に話したら、これを渡すよう言われた」

犬狼の守ってきたものを俺に?それはそれで凄そうだけど………これ、なんなんだろう?

「ラトナ、族長さんは?話、したいんだけど?」
「すまんが……ここ最近臥せっていてな。これを渡すよう言ったあとも、 今は具合が悪くて寝ている。話は悪いができん。また、具合が良さそうな時に、俺から聞いておこう。分かればその旨を伝える。それでいいか?」
「分かった、頼む」

具合悪いなら仕方ない。無理は言えないし。実はまたバカ高い宝石でしたなんてオチだったら、即刻、送り返せばいいし。

「ラァムの実を運ばせる。三つで間違いないな?」
「あぁ、頼む」

とりあえず交渉、話は終わったか。そういえば……

「三月後に犬狼は発情期なんだよな?アスラは大丈夫なのか?」

ユフィカはまだ発情期こないって言ってたし、どうするんだろ?

「発情期を抑える薬湯がある。俺にはユフィカだけだ。無論、堪えるさ」
「アスラ……」

え、っと……聞くだけ野暮でした。

「ラトナは?」
「俺は、番候補がいるからその中からだ。もっとも……」

ん?何でそんな色っぽい流し目を??

「俺は人族は好かん。だが、お前が相手というなら話は別のようだ、アヤ」

え~っ、と……隣見るのが怖いんですけど…

「いい度胸だな?ラトナ。人のものを勝手に口説くんじゃねぇ!」
「魅力的だから口説く。それの何が悪い?」
「獣は獣同士よろしくやれ。興味本位で異種族に手、出すな」
「心の狭い男だな?自分の伴侶は魅力があって自慢できる、くらいの度量を見せるくらいの余裕はないのか?」
「お前こそ、番候補はいるんだろ?それともなにか?言うほどたいした候補はいねぇのか?」
「「貴様、やんのか?」」

剣に手をかけるな!つか、本気でり合うつもりか?こいつらは⁉︎
せっかく交渉うまくいったのに、ものの数分で反故にする気か?

「アヤ、凄い…僕、兄さんが自分から誰か口説いてるとこ初めて見た……」

ユフィカ、やめて…バルドを煽らないでくれ!
あぁぁぁ!青筋たってるし、とばっちりの被害に遭うの俺なんだぞ!?
もうッッッ!!

「やめっ!!バルド、ラトナ!剣しまえ!俺とバルド残して皆んな出て行け!早く!!」

一触即発の二人の間に立ち、仲裁。抜き身の剣は怖いが構ってらんない!
黙って静観していたセレストが立ち上がり、皆を促す。

猛獣殿下の事はアヤに任せて、皆外へ」

何だろ……?変な変換されたような…イラっとしたんだが?
まぁ、いいや。とりあえず、今はこっちが先。
イライラしているラトナはユフィカが宥めすかし、外に連れ出してくれた。
あとは……怒れる皇子様のみ。
そっと溜め息つきつつ、俺は不貞腐れる皇太子様を宥めるべく歩み寄っていった。





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